山川捨松が切り開いた女性の学びの道〜学問のために米国へ・学士号を取得した初の日本人女性・捨松の名前の由来・女性の学びに対する日本社会の厳しい視線〜｜山川捨松1・人物像・業績

前回は「日本で2人目の女性宇宙飛行士・山崎直子〜道を切り拓いた理系女子の鑑・「女の子だから」の遠慮はナシ・異常に女性が少ない東大理I・大切なチームワーク・自衛隊の父から学んだ協調性〜」の話でした。

山川捨松が切り開いた女性の学びの道：学問のために米国へ

威人紀行6人目の方は、山川（大山）捨松です。

幕末の1860年に会津藩に生まれた山川捨松。

この年には、桜田門外の変が起きており、日本中が揺らいでいました。

幼名は咲子でした。

急速に諸外国との接触が増えていた当時の日本。

時は徳川幕府から明治新政府へと変わる時期で、時代の躍動期でした。

文明において、欧米と比較して大きく出遅れていた日本。

明治新政府は「海外に学ばねば」と、優れた人物を留学生として送り出します。

1871年（明治四年）、女子の米国留学生5名の一人に選ばれたのが、山川咲子でした。

この5人の女性の一人には、のちに津田塾大学を設立する津田梅子も最年少の9歳で参加します。

山川咲子が、まだ12歳の時（数え年）で現代の11歳で小学校5年生でした。

当時の日本では、

このような「女性は男性と別」という認識が、強かったのが現実でした。

明治新政府の急速な欧化主義の一つの象徴として、若い女子留学生の派遣がありました。

勇んで米国へ向かった山川咲子。

学士号を取得した初の日本人女性：日本人女性の新たなモデルへ

後藤新平は、同時期の1857年に生まれています。（上記リンク）

会津藩には、各藩と同様に日新館という藩校がありましたが、学ぶのは男子であることが前提でした。

「女子が勉強する」という概念自体が、当時の日本にはなかったのです。

幕府が設立した昌平黌、各藩の藩校がありましたが、明治新政府は「学びの拠点」設立を決断します。

そして、1877年に東京開成学校と東京医学校を合併して、東京大学を設立します。

東京大学で初めて卒業生に学士号が授与されたのは1879年。

東大設立6年前に、米国へ渡った山川咲子は猛勉強します。

そして、ハイスクールから大学まで非常に優秀な成績を修めました。

非常に聡明そうな表情の山川咲子。

1882年にヴァッサー大学卒業の際は、学年3位の成績で卒業し”magna cum laude”を受賞して卒業します。

捨松の名前の由来：女性の学びに対する日本社会の厳しい視線

生まれた時に「咲子」という名前のあった捨松。

当時、15歳〜18歳くらいで結婚することが多かった日本人女性。

江戸時代の藩校や私塾は、多くは「男性が学ぶ場」でありました。

「12歳から22歳まで米国で学ぶ」のは、当時「婚期を逃す」と考えられたのです。

そのため、鳴り物入りで大募集した「女性留学生」でしたが、

「当初は応募がなかった」ほど人気がなかったのです。

ここで、山川咲子の15歳も年上の兄が登場します。

そして、兄の勧めで思い切って応募します。

そして、

首尾良く合格した、山川咲子でした。

大変な名誉でしたが、母のえんは落胆します。

この母の気持ちから、「咲子」から「捨松」に改名します。

母親にここまで言われたら、普通の神経の方ならば、

こう言うでしょう。

こう言わずに、

そして、勇んで米国に向かった山川捨松でした。

この時の山川捨松の気持ちは、非常に複雑だったでしょう。

かつて、子どもがなかなか生まれて成長しなかった天下人・太閤豊臣秀吉。

後の豊臣秀頼が誕生した際、秀吉は狂喜しました。

「拾う」という漢字が名前に入るなら、縁起良さそうです。

一方で、「捨てる」という漢字を入れるのは、一般的には嬉しいことではありません。

山川捨松と名前を改名した山川咲子は、

そんな気持ちだったでしょう。

そして、現代と異なり、米国本土には「ほとんど日本人が存在しない」状況でした。

その中、猛勉強をして立派な成績で米国大学を卒業した実績。

この実績は「日本人女性の道を切り開いた」と言えるでしょう。

次回は上記リンクです。