即座に次善の策に切り替えた山口多聞〜長い戦場で養われた独特の勘・爆弾から魚雷へ、そしてまた魚雷から爆弾へ・「元に戻す」最悪の判断・大混乱の赤城司令部・完全に読み違えた草鹿龍之介〜|山口多聞36・ミッドウェー・能力

前回は「闘志を燃やす山口多聞〜想定外の事態勃発・届かぬ山口多聞の悲痛な意見具申・原理原則と柔軟性・大混乱の飛行整備場・重労働の兵装転換作業〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

即座に次善の策に切り替えた山口多聞:長い戦場で養われた独特の勘

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

草鹿参謀長が「全く想定していなかった」米空母の出撃。

草鹿龍之介

なっ、
なんと!!!!!

草鹿龍之介

まっ、
まさか!!!!!!!

完全に読み違えた草鹿参謀長。

こちらが「米空母を発見した」ということは、極めて重大です。

米空母 ホーネット(Wikipedia)

すでにこちらの位置を、米軍が把握している可能性があります。

米空母 エンタープライズ(Wikipedia)

「いない」と思っていたのに、二隻も米空母が乗り込んできました。(実際はヨークタウン含め三隻)

山口多聞

やはりっ!

山口多聞

やはり
出てきたか!

山口多聞

まもなく、敵の航空隊が
攻撃してくる!

豊富な戦闘経験を持った闘将・山口司令官を決断しました。

山口多聞

こうなったら、
仕方ない!

山口多聞

次善の
策でゆく!

山口司令官は即座に頭を切り替えます。

山口多聞

魚雷から爆弾へ兵装転換した
爆撃機を敵空母へ向かわせる!

山口多聞

そして、敵空母に打撃を
与えるのが第一だ!

山口多聞

その上で、後程、雷撃機の
魚雷でとどめを刺す!

対米戦が始まって半年ほどの間。

その間、山口司令官率いる第二航空戦隊は太平洋・インド洋で暴れ回りました。

さらに、対米戦以前に日中戦争で中国本土で陸上攻撃隊を指揮し続けていた山口司令官。

新教育紀行
第一連合航空隊司令官時代の山口多聞(左から二人目):中央は嶋田繁太郎(海軍大臣、海兵32期)右から二人目は大西瀧治郎(山口と海兵同期、40期)(Wikipedia)

豊富な戦場経験を持ち、「独特の勘」を持っていました。

こうした「戦場での独特の勘」は、机の上では学べない種類の能力です。

山口多聞

これは、
先制攻撃すべきなのだ!

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
52源田 実第一航空参謀
52淵田 美津雄第一航空艦隊飛行長
59友永 丈一新任・第一航空艦隊飛行長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

対して、「航空のプロ」の草鹿龍之介は、

草鹿龍之介

私はずっと航空戦を
実践し、研究もしてきた!

山口多聞と比較して軍令部・海軍大学校に所属している期間が長かったのです。

草鹿龍之介

戦術理論には
絶対な自信がある!

いわば、研究に関しては草鹿が勝り、実戦経験に関しては山口が優っていた「航空隊の指揮」。

こうした緊急時には「戦術理論」よりも「戦場の勘」が優先されるべき事態でした。

大混乱の赤城司令部:完全に読み違えた草鹿龍之介

ミッドウェー島(Wikipedia)

完全に「想定外の事態」となった草鹿参謀長。

「出撃するはずがない」と考えていた米空母が、一気に乗り込んできました。

草鹿龍之介

これは・・・

草鹿龍之介

・・・・・

草鹿参謀長の周りの参謀スタッフは、

赤城幕僚A

このまま、敵空母へ
爆撃隊を向かわせるべきです。

草鹿龍之介

陸用爆弾では、
空母は叩き潰せん!

赤城幕僚A

甲板に穴を
開けることはできます!

赤城幕僚A

さすれば、敵空母の戦闘能力は
喪失します。

この緊急時には、これが最善の戦略でした。

対して、草鹿参謀長は反論します。

草鹿龍之介

それでは、「空母を叩き潰す」
作戦が達成できん!

赤城幕僚A

こちらがやられるより、
遥かにマシです。

草鹿龍之介

だが、今の状況では、
戦闘機が上空にいる・・・

草鹿龍之介

攻撃隊に
護衛戦闘機がつけられん!

零戦(Wikipedia)
攻撃・迎撃する航空隊

爆撃機:爆弾による攻撃。主に基地攻撃。

雷撃機:魚雷による攻撃。主に艦船攻撃。

護衛機:爆撃機・雷撃機が攻撃する際に、敵攻撃から護衛。敵機の攻撃から艦船を護衛。日本の零戦。

Midway島の爆撃隊に、多くの護衛戦闘機が向かっています。

そして、空母上空にも護衛機を残す必要があり、出せる護衛戦闘機が少ない状況です。

源田実 第一航空参謀(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
源田実

確かに、このまま
爆撃隊を敵空母へ向かわせるのも手だが・・・

源田実

図演(図上演習)ならば、
そうするだろう・・・

源田実

しかし、護衛戦闘機が非常に少ない状況で、
長年の友に、敵空母へ向かわせることは・・・

源田実

仲間たちが
重大な危険にさらされる!

源田実

心情として、
そんなこと出来ん!

赤城幕僚A

しかし、ここで再度
兵装転換しては・・・

赤城幕僚A

こちらが甚大な被害を
受ける恐れがあります!

草鹿龍之介

護衛戦闘機がつけられない以上、
出撃させても敵に倒されてしまう!

赤城幕僚A

確かに、戦闘機なしで
突っ込むのは大変危険です・・・

赤城幕僚A

しかし、米軍も戦闘機なしで
爆撃機が突っ込んできており・・・

赤城幕僚A

味方の航空隊の力量は高く、
なんとか出来るのでは・・・

草鹿龍之介

そんな「なんとかなる」というのは
非論理的だ!

草鹿龍之介

攻撃隊の将兵の生命を
危険にさらすのか!

赤城幕僚A

しかし、この戦いの場では、
緊急時には「命の危険」はやむ得ません!

赤城司令部では押し問答が続きました。

爆弾から魚雷へ、そしてまた魚雷から爆弾へ:「元に戻す」最悪の判断

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)
山口多聞

ええい!
一体何を考えている!

山口多聞

すぐに発進させるよう、
赤城へ発光信号!

飛龍将兵A

ははっ!
直ちに!

そして、飛龍から赤城へ発光信号で「山口司令官から南雲司令部への緊急電」を伝えます。

飛龍

直ちに発進の要ありと
認む!

第一航空艦隊 旗艦 空母赤城(Wikipedia)
赤城

・・・

赤城からは返信ありません。

草鹿龍之介

万全を
期すべきだ!

草鹿龍之介

十分な護衛をつけ、
魚雷で米空母を叩く!

草鹿参謀長は再度決断します。

草鹿龍之介

各空母へ!

草鹿龍之介

攻撃隊は、ミッドウェー島ではなく
敵空母・機動部隊へ向かう!

草鹿龍之介

爆弾を中止、
魚雷へ戻せ!

「爆弾から魚雷へ」そしてまた「魚雷から爆弾へ」の無意味な命令。

赤城将兵A

また魚雷に
戻せだって!!!

赤城将兵B

ええっ!!
なんだって!?

赤城将兵A

もう
やるしかないな!!

再び飛行場は大荒れとなり、さらに大混乱となります。

山口多聞

「また戻せ」
だと!

山口多聞

そ、そんな馬鹿な命令が
あるか!!!

山口多聞

もたもたしている内に、
敵が攻撃してきたら、どうするんだ!!

混乱に次ぐ混乱で、名状に尽くし難い状況となりました。

山口多聞

一体
どうなっているんだ!!

山口多聞

なんと、
なんということ・・・

山口多聞

こんな・・・
こんなことが・・・

山口多聞

・・・・・

目の前が真っ暗になる山口多聞でした。

次回は上記リンクです。

新教育紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次