闘志を燃やす山口多聞〜想定外の事態勃発・届かぬ山口多聞の悲痛な意見具申・原理原則と柔軟性・大混乱の飛行整備場・重労働の兵装転換作業〜|山口多聞35・ミッドウェー・能力

前回は「唇を噛む山口多聞〜禁じ手の「兵装転換」へ・米航空隊の反撃:零戦の大活躍・逡巡する赤城司令部・事実上No.1だった草鹿参謀長の甘い思考〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

届かぬ山口多聞の悲痛な意見具申:原理原則と柔軟性

ミッドウェー島(Wikipedia)

小さな島で、島というより環礁に近い大きさのミッドウェー島を空襲した連合艦隊。

猛烈な勢いでミッドウェー島を爆撃していたのは、友永隊長率いる航空隊でした。

友永丈一 第二航空戦隊飛龍飛行長(Wikipedia)
友永丈一

ミッドウェー島の
防御体制が万全すぎるが・・・

友永丈一

我らの任務は
ミッドウェー島を完膚なきまで叩くこと!

友永丈一

みんな、
やるぞ!

飛龍攻撃隊A

はいっ!

新教育紀行
九七式艦上攻撃機(Wikipedia)

猛烈な対空砲火をくぐり抜けながら、懸命にミッドウェー島を空襲し続けていた友永隊。

新教育紀行
攻撃され、炎上するミッドウェー島石油タンク(Wikipedia)
ミッドウェー島守備隊P

ちっ!
Japanの連中は強い・・・

ミッドウェー島守備隊Q

かなり万全なはずだが、
石油タンクが爆撃されてしまった・・・

こうした中、

草鹿龍之介

各空母へ!

草鹿龍之介

雷撃隊は、
(陸用)爆弾へ兵装転換せよ!

「戦闘中の兵装転換」という禁じ手を発令した赤城司令部の草鹿参謀長。

山口多聞

ちょ、ちょっと
待てっ!

山口多聞

戦っている
最中だぞ!

山口多聞

根本的な作戦変更して
どうする!

猛烈に抗議する山口司令官。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
草鹿龍之介

作戦は
臨機応変が大事だ!

山口多聞

原理原則を無視して、
臨機応変も何もあるか!

山口多聞

何事も
基本が大事だ!

山口多聞

兵装転換は
厳禁のはずだ!

実際この直前の戦いで、機動部隊は兵装転換をして、非常に危うい状況に陥りました。

その時は、敵の失策で日本の損失は軽微であり「結果的に杞憂に終わった」のです。

そのこともあり、事前に「兵装転換は厳禁」と約束していたはずでした。

山口多聞

とにかく
再考してくれ!

それでもなお、赤城司令部は山口司令官の意見を却下します。

山口司令官の悲痛なまでの意見具申は、赤城司令部には届きませんでした。

司令部の命令は絶対です。

山口多聞

・・・・・

山口多聞

絶対に
敵空母はいる!

大混乱の飛行整備場:重労働の兵装転換作業

95式魚雷(Wikipedia)

司令部の「兵装転換」の命令に従って、急遽作戦を変える必要が出ました。

待機している雷撃機の魚雷を外し、爆弾に付け替える作業が進みます。

一言に「付け替える」と言っても、大変な作業です。

魚雷は数百キロあり、陸用爆弾は800キロあります。

この重たい爆弾・魚雷を台車に乗せて移動させて、数人がかりで付け替える作業を進めます。

飛龍将兵A

急げ!

飛龍将兵B

うかうかしていると、
敵が来るぞ!

飛龍将兵A

はやく魚雷を
つけよう!

飛龍将兵B

外した爆弾は、
その辺りにおいて・・・

飛龍将兵A

よし!
装着完了!

飛龍将兵B

次の
飛行機だな!

各空母の飛行整備場は、戦場のような騒ぎとなりました。

飛龍将兵A

おいっ!
早くしろ!

飛龍将兵B

はいっ!
魚雷を急ぎ持って参ります!

大混乱となった飛行整備場ですが、作業員たちは懸命に作業を進めました。

闘志を燃やす山口多聞:想定外の事態勃発

第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

「兵装転換」の指令から30分ほど経過ののち、

赤城幕僚A

10隻程の敵艦隊、
発見!

「敵艦隊発見」一報が入ります。

しかしながら、「どのような艦船か?」の大事な報告がありません。

山口多聞

思っていた
通りだ!

草鹿龍之介

誤報かも
しれん・・・

山口多聞

誤報
ではない!

草鹿龍之介

艦船の種類を
報告せよ!

山口多聞

敵艦隊がいるということは、
必ず米空母は出てきている!

様々な思いが錯綜する中、電信が入ります。

赤城幕僚A

先に
発見せる敵は・・・

赤城幕僚A

後方に
空母二隻を伴う!

米空母 ホーネット(Wikipedia)
米空母 エンタープライズ(Wikipedia)

米空母発見の連絡です。

しかも二隻。(実際は三隻)

草鹿龍之介

!!!!!!!!!!!!!

草鹿龍之介

ば、
馬鹿な!!!!!!!!

事態を「完全に読み違えた」草鹿参謀長。

草鹿龍之介

ど、
どうするのだ!!!!!!!

「心臓がとまる思い」とは、こういう時のことをいうのでしょう。

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)
山口多聞

やはり!

山口多聞

米空母は
出てきたか!

山口多聞

体制を
立て直すぞ!

山口多聞

我が二航戦(第二航空戦隊)が、
米空母を倒して見せよう!

愕然とする草鹿参謀長に対して、闘志を燃やす山口多聞でした。

草鹿龍之介

これは一体・・・
どうするべきかっ!

草鹿龍之介

このまま
兵装転換を進めるか・・・

草鹿龍之介

あるいは、
兵装転換を中止するか・・・

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
52源田 実第一航空参謀
52淵田 美津雄前任・第一航空艦隊飛行長
59友永 丈一新任・第一航空艦隊飛行長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

山口司令官の後輩であり「後任」であるはずだった草鹿参謀長。

海兵を14位で卒業した優等生の草鹿ですが、山口は2位で卒業しており山口の方が優秀です。

学生時代の成績が、必ずしも仕事現場の成績に直結するとは限りません。

山口多聞

ここは、すぐに
頭を切り替えるべきなのだ!

とにかく「成績重視」であり、それが軍令承行令として名文化されていた組織が大日本帝国海軍でした。

年上で「成績抜群の山口司令官」の意見を、「成績が山口より劣る後輩の草鹿参謀長」が却下した事態。

山口多聞

草鹿よ!
早く決断するのだ!

年功序列と海兵の成績重視だった「軍令承行令」の矛盾が、思わぬ時に表面化した瞬間でした。

次回は上記リンクです。

新教育紀行

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