前回は「米空母出撃を確信していた山口多聞〜「日本の象徴」となった大和・異様に楽観的だった日本海軍・米軍の電信傍受と無線封鎖・日本の動きを完全に把握する米軍〜」の話でした。
日本の別名=大和を冠した戦艦大和の存在意義:楽観的な連合艦隊司令部
次々と米海軍の電信を補足する、戦艦大和の敵信傍受班。
内容の解読はできないものの、電波を補足すれば「発信元の位置」がほぼ計算できます。
すると、「どこで、何が行われるか」は多少なりとも想像可能です。
つまり、「電信を打つ=電波を発する」のは、敵味方双方にとってリスクが大きいのです。
そのため、敵に位置を知られないために戦艦大和は「無線封鎖」を優先していました。
電波を
発すると・・・
大和が攻撃される
恐れがあります・・・
当時、艦船の中では「世界最強の防御力」を有していた戦艦大和。
「攻撃されても大丈夫」なように、極めて分厚い鋼鉄で覆われていました。
空母などよりも「比較にならぬほど強力な防御力を持っていた」戦艦大和。
ところが、「日本の別名=大和」を冠した戦艦だけに、
大和を敵軍に無闇に攻撃させる
わけにはいかん・・・
「戦艦大和を守る」観念が強かったのでした。
そして、楽観的な雰囲気に押されてしまった山本長官は、
まあ、
大丈夫か・・・
空母でも、
この程度の電波は捕捉出来ているでしょう。
まあ、
そうだな・・・
ならば、赤城へは
知らせんでも良いか・・・
楽観論に押され、草鹿参謀長との約束を無視する山本長官でした。
実は事前に、草鹿参謀長は山本長官にある「お願い」をしていました。
一つ
お願いですが・・・
我ら空母部隊の電信班は、
マストが低く、傍受機能が弱いです・・・
戦艦大和には、最新設備と
精鋭の電信班がいます。
米軍の電信傍受の際、
全てを必ず我らにお知らせください。
草鹿参謀長の「お願い」に対して、
よしっ!
分かった!
快諾していたはずの山本長官。
非常に几帳面で誠実な性格であった山本五十六長官。
ところが、ここで易々と草鹿参謀長との約束を無視し、反故にしてしまいました。
まあ、
大丈夫だろう・・・
それでは、
赤城への転送はしなくて良いでしょうか?
まあ・・・
そうだな・・・
そして、戦艦大和傍受班は、前線機動部隊・旗艦の赤城へ「傍受通信」を知らせなかったのです。
暗中模索の前線の赤城司令部:草鹿参謀長の迷い
一方、最前線の空母機動部隊は、これらの米軍の電信を捕捉できていませんでした。
重大な米軍の電信を補足できない赤城の司令部では、
やはり米空母は、
出てこないのではないか?
最前線の機動部隊では、暗中模索の状況でした。
空母が出てくるなら、
必ず敵信(敵の電信)が発せられる・・・
米空母が出てくるなら、
ミッドウェー島周辺で、敵信が盛んになるはず!
目視で確認できる距離ならば、電波を発しない発光信号もあります。
ミッドウェー島周辺で米空母が出動するためには、米軍内の電信が不可欠です。
そして、その敵信は
大和なら、必ず傍受出来る!
山本長官とは
約束しているのだ・・・
「すべての敵信を赤城司令部へ連絡」
して頂くことを・・・
それが「ない」と
いうことは・・・
米軍は「盛んに動いていた」のですが、赤城司令部は「動きが少ない」と感じていたのです。
米海軍の動きが
「ない」ということだ・・・
ということは・・・
あるいは・・・
適切な情報が全く入ってこないまま、草鹿参謀長の判断は揺らぎ続けました。
猛将・山口多聞の届かぬ悲痛な思い:極めて少ない索敵計画
戦争において、「敵がどこにいるのか?」は最も大事な情報です。
その上で「敵がどのくらいの数か?どこを狙っているのか?将軍は?」などが大事な情報となります。
特に、広大な太平洋で作戦を展開する日米の海軍の艦隊。
太平洋は世界で最も大きい海で、面積はおよそ1.66億km2。
日本列島がおよそ440個入る、「非常に広大な面積」です。
当時、米国は英国と共に対独戦を大西洋で戦っていましたが、大西洋の面積は、およそ0.86億km2。
大西洋の面積は、太平洋面積の約半分なのです。
広い太平洋において、
米海軍は
今どこにいるか?
Japanの海軍は
今どこにいるか?
「どこに敵がいるか」は、日米双方にとって「最重要事項」でした。
まず敵を
見つけなければ!
敵を見つけるには、電波の傍受も大事ですが、具体的には索敵機という飛行部隊を飛ばして目視で発見します。
出来るだけ
索敵機を多く!
ところが、「米空母は出てこない」という先入観のある草鹿参謀長は、
索敵機を増やすと、攻撃隊が
少なくなる・・・
索敵機は少なめで、
攻撃に主眼を!
この考え方は、山口司令官の基本理念と正反対でした。
そんなことでは
ダメだ!
前線司令部では、思惑が大きくズレていました。
もっともっと
索敵機を多く発進させて欲しい!
大丈夫です!
大和から敵信の連絡がないから・・・・
米海軍は
大して動いていません!
それは単なる「思い込み」では
ないだろうか!
そして、百戦錬磨の猛将・山口多聞の悲痛な思いは、赤城司令部には届きませんでした。
次回は上記リンクです。