対極的だった日米の視点〜補給線・兵站線と戦争・日米の根本的な違い・全てが明確だった米軍・全てが曖昧だった日本海軍〜|山口多聞27・ミッドウェー・能力

前回は「大いに奮起する山口多聞〜最悪の判断をした山本長官・攻撃隊を分ける日本・最もやってはいけない「戦力分散」・爆撃と雷撃の大きな違い・爆弾と魚雷の役割〜」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

全てが曖昧だった日本海軍

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

南雲司令長官を補佐する「航空部隊のプロ」の草鹿参謀長。

前線では「草鹿参謀長が作戦判断、南雲長官が承認(追認)する」形が見込まれます。

真珠湾奇襲攻撃の際も、第一航空艦隊参謀長として航空戦を指揮した草鹿。

「真珠湾」では空母六隻で乗り込みましたが、今回は二隻も減って、空母四隻での作戦となりました。

草鹿龍之介

なぜ、乾坤一擲の戦いなのに、
空母が四隻しかないのか・・・

当時、空母四隻を集中運用できたのは、大日本帝国海軍のみでした。

そのため、「空母四隻」でも超強力な空母打撃群・機動部隊ですが、

草鹿龍之介

ミッドウェー島と
複数の敵空母を同時に撃滅する作戦か・・・

草鹿龍之介

空母四隻では打撃力が
全然足らん・・・

草鹿龍之介

せめて、目標がミッドウェーか
敵空母か、のどちらであれば良いのだが・・・

「打撃力不足」と判断した草鹿参謀長は、山本長官に「空母が足りないこと」を直訴しました。

草鹿龍之介

ミッドウェー攻撃には、
空母六隻ほど欲しいですが・・・

草鹿龍之介

我が空母は
四隻・・・

草鹿龍之介

さらに目標が二つとなると、
前線は大変です。

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

うむ・・・
そうか・・・

山本五十六

大変だが、今なら
強大な米軍を叩けるだろう・・・

頭では「戦力分散の不利」をしっかり理解している山本長官。

ところが、長く戦いの現場に立っていなかった山本長官。

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
39伊藤 整一軍令部次長
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
連合艦隊と軍令部幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

ミッドウェー作戦当時、58歳だった山本五十六長官。

戦艦三笠と東郷平八郎長官(Wikipedia)
山本五十六

前回の戦場は
37年前の日本海海戦か・・・

山本五十六

あの時、
私は22歳だった・・・

山本五十六

若かった
なぁ・・・

その後ずっと、海軍本部の軍政側で航空本部長・海軍次官をつとめていた山本長官。

「軍神」山本長官は、戦争の経験は少なかったのでした。

そのため、「戦場の状況」は前線任せでした。

山本五十六

確かに、ミッドウェーと空母を
どうじにやる(攻撃する)となると・・・

山本五十六

機動部隊も
負担かもしれないが・・・

山本五十六

作戦式は、
前線で判断せよ!

草鹿龍之介

・・・・・

草鹿龍之介

承知致しました・・・
ならば・・・

草鹿龍之介

敵空母が出てこぬ時は、
全機ミッドウェーに向かって良いですか?

山本五十六

うむ・・・
まあ・・・

草鹿龍之介

前線に任せる、
ということでよろしいですか?

山本五十六

まあ、
そうだが・・・

山本五十六

空母には
気をつけろ!

なんとなく全てが曖昧な日本海軍でした。

山口多聞

これは
非常にまずい!

山口多聞

私の出来る範囲で、
奮闘してみせる!

第一航空艦隊 旗艦 空母赤城(Wikipedia)

草鹿参謀長は山本長官に、ある「お願い」をしました。

草鹿龍之介

一つ
お願いですが・・・

草鹿龍之介

我ら空母部隊の電信班は、
マストが低く、傍受機能が弱いです。

草鹿龍之介

戦艦大和には、最新設備と
精鋭の電信班がいます。

草鹿龍之介

米軍の電信傍受の際、
全てを必ず我らにお知らせください。

山本五十六

うむ・・・
分かった!

草鹿参謀長の「お願い」を快諾した山本長官でした。

日米の根本的な違い:全てが明確だった米軍

チェスター・ニミッツ米太平洋艦隊司令長官(Wikipedia)
米軍将兵P

Nimitz長官。
今回の作戦の主目標はなんでしょう?

ニミッツ

向かってくるJapanの空母を、
出来るだけ撃沈せよ!

米軍将兵P

JapanはMidway島の基地を
攻撃します。

米軍将兵P

Midway防衛も
大事では?

ニミッツ

もちろん、Midway基地防衛は
大事だ。

ニミッツ

しかし、それはJapanの空母撃沈より、
優先度が下だ。

ニミッツ

とにかく、
Japanの空母を一隻でも多く沈めて・・・

ニミッツ

我がUSが有利になるようにするのが、
目的だ。

米軍将兵P

ならば、Japanの攻撃が猛烈で、
Midway防衛が難しい時は・・・

ニミッツ

構わん!

ニミッツ

Midwayから
撤退せよ!

ニミッツ

Japanの攻撃力が強い時は、
Midwayを放棄、退却せよ。

米軍将兵P

ははっ!
分かりました!

非常に明確な作戦目標を持つ米海軍でした。

この日米の「目標の明確さ」に対する根本的違いが浮き彫りになりつつありました。

対極的だった日米の視点:補給線・兵站線と戦争

ミッドウェー作戦地図(歴史人 2021年8月号 ABCアーク)

戦うには、武器弾薬・食料などの補給は非常に大事です。

大砲を持っていても、砲弾がなければ撃てません。

食料がなければ闘う兵士は飢えてしまい、戦力が大きく落ちて時には亡くなります。

旧日本軍は、この「補給線・兵站線確保」を非常に軽視していました。

大和幕僚A

武器弾薬は
大事だが・・・

大和幕僚A

精神力で命中率を
上げれば、少ない武器弾薬でも戦える!

大和幕僚A

大和魂で
乗り切るのだ!

この「大和魂で戦力増強」という発想の日本軍。

米軍幕僚P

武器弾薬が
少なければ、戦うことは不可能だ!

米軍幕僚P

まずは補給する兵站線・補給戦の
確保が最重要だ!

米軍幕僚P

戦争は
そこから始まる!

とにかく「兵站と補給が最重要」という発想の米軍。

戦争に対する視点は「日米で対極的」とも言えるほど、根本的に異なっていました。

「補給線・兵站線確保」を最重視する米軍。

ニミッツ

大体、Japanの奴らは、
何考えているんだ?

ニミッツ

Midwayを奪取したとして、
補給が続くと思っているのか?

ニミッツ

JapanからMidwayは、
非常に遠い・・・

ニミッツ

対して、HawaiiからMidwayは、
すぐそこだ・・・

ニミッツ

もし、Midway島がJapanの
攻撃で陥落しても・・・

ニミッツ

すぐにでも、
取り返してみせるわ!

米国人らしい合理的思考のニミッツ長官でした。

「作戦計画が曖昧な」日本と、「作戦計画が明確・合理的な」米国。

この状況のまま、ミッドウェー海戦が始まろうとしていました。

次回は上記リンクです。

新教育紀行

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