前回は「悩むニミッツ長官〜圧倒的優勢だった日本海軍・ヨークタウン修理に必要な時間・90日を3日へ・米軍の底力・莫大な溶接電力と計画停電〜」の話でした。
戦艦大和建造の目的:軍最高の機密「軍機」
「世界最大の戦艦」を目指して建造された戦艦大和。
大和の建造は、軍最高の機密「軍機」扱いでした。
当時、軍部での機密の取り扱いには、5段階ありました。
情報機密名称 | 重要度(5段階) |
軍機 | 5 |
軍極秘 | 4 |
極秘 | 3 |
秘 | 2 |
部外秘 | 1 |
海軍・日本政府の最高幹部クラス以外は知らないように秘匿されて、建造された戦艦大和。
米海軍は、太平洋と大西洋を移動する際に、パナマ運河を通行する必要があります。
そのため、「パナマ運河を通行できるサイズ」が、米海軍艦艇の最大サイズとなります。
このサイズを超える大きさが、戦艦大和のサイズでした。
戦艦大和より
大きな戦艦は、米国はつくれない。
世界最強の戦艦を
作るのだ!
世界最強の戦艦を
我が日本に!
そして、世界最強戦艦が誕生しました。
世界最強の戦艦の肖像:日本海海戦と大艦巨砲主義
海戦のモデルは、ロシアに対して完勝した日本海海戦でした。
そして、日本海軍は世界各国の海軍と比較して、さらに大きく「大艦巨砲主義」に傾倒しました。
海戦は、なんといっても
戦艦の砲撃力が中心だ!
空母は
援護射撃程度だな・・・
「巨大戦艦の巨砲」で「敵戦艦の砲弾が届かない位置から砲撃する」ことが目的でした。
敵の砲弾が届かない位置から、
一方的に砲撃するのだ!
アウトレンジ(範囲外)の
戦法だな!
さらに、
分厚い装甲で、
不沈戦艦にするのだ!
この理念のもと、究極的防御力目指して頑丈に造られました。
名前は様々な案が出ましたが、最終的に「日本」の別の名前である「大和」に決まります。
我が国の別名称である
「大和」を背負う世界最強戦艦!
いわば、我が国が
浮かんだ戦艦になったんだな!
「戦艦大和」の存在自体が「日本」の姿となりました。
大和は「日本の守護神」としての役割を期待されました。
「最大の攻撃力と最高の防御力を併せ持つ」日本海軍秘蔵の戦艦大和。
ついに初陣となります。
苛立つ山口多聞:戦艦大和の位置と「守られる」大和
米軍は総力を上げて、日本側の情報を集めました。
万全の準備を進める中、ミッドウェー作戦が発令されました。
私が大和に乗り込み、
主力部隊を率いる!
攻撃の主力は、山口司令官の所属する「機動部隊」です。
ところが、山本長官が率いるため、戦艦大和の部隊が「主力」となります。
この「主力部隊」の位置が、大きな問題でした。
なんと、攻撃の最前線の空母機動部隊の遥か後方、約300マイル=約500kmに位置していたのです。
艦船の時速は、種類によります。
戦艦大和は重い船体のため、最高時速27ノット(50km)でした。
つまり「最高時速で向かっても10時間かかる」位置に、戦艦大和はいたのでした。
戦いが始まってから、
大和は間に合うのか?
この「主力部隊が遥か後方にいる」理由は、諸説あります。
本来ならば、攻撃に弱い空母に対して、
戦艦大和が、
盾になってみせる!
このくらいの男気が欲しいものでした。
実際には、逆に大和が前線ではなく「守られる」立場でした。
これは、戦艦大和の
出番があるのだろうか・・・
大和建造への思いと、
ズレてないだろうか・・・
これは、
全然違うぞ!
何もかもがチグハグな状況に苛立つ山口司令官でした。
次回は上記リンクです。