前回は「連戦連勝の日本海軍〜芽生えてきた驕りの意識・かつての日本海軍の先生・英海軍を模倣した日本海軍・かつての世界一英海軍を凌駕した日本海軍・プリンスオブウェールズ撃沈〜」の話でした。
勝って兜の緒を締めた山口多聞:調子に乗りまくった日本海軍
「騙し討ち」だったにしても、空前の真珠湾奇襲攻撃という大作戦を成し遂げた日本海軍。
そして、その後半年ほど「世界で敵なし」と言えるほど、連戦連勝を続けました。
もう
米国にも勝てるな!
米海軍なんて、
大したことないわ!
さらに、明治維新以降「海軍の先生」だった英海軍と激闘を繰り広げた日本海軍。
・英国における王位の法定(推定)である王子に与えられる称号
いわば「英国にとっての大和」であり「戦艦皇太子」とも言える「プリンス・オブ・ウェールズ」。
その英国最新鋭戦艦を、「いとも簡単に撃沈してしまった」のが大日本帝国海軍でした。
”Prince of Wales”が
撃沈された、だと・・・
そんな・・・
そんな馬鹿な・・・
時のチャーチル英首相は「目の前が真っ暗」になりました。
こんなことが
起こりうるのか・・・
対して、数ある敵国の中でも最強である米海軍と英海軍に大打撃を与えた日本海軍。
我が日本海軍の敵は、
世界でも、いないぜ!
我が日本海軍の前では、
米国なんぞ、鎧袖一触よ!
もう戦争には勝ったも
同然だな!
あまりの連戦連勝っぷりに、日本海軍全体が調子に乗ってしまいました。
当時も「世界最強」であった米軍に対して、「鎧袖一触(がいしゅういっしょく)」は異常でした。
ちょっと待て!
まだ緒戦だ!
山口司令!
もう我らの勝利は確実ですよ!
「勝って兜の緒を締める」
の精神こそが大事だ!
熱血漢でありながら冷静さもあった山口司令官にとって、この「お祭り騒ぎ」は異常事態でした。
これは、
よくない兆候だ・・・
山本長官の狙い:短期決戦による早期和平
米国には
絶対勝てぬ!
「米国には勝てない」と主張していた山本五十六 連合艦隊司令長官。
大日本帝国海軍・連合艦隊の「意外なまでの強さ」に、
これならば、米海軍を
もう一押しできるだろう。
「もう一押しで有利な講和を」と考えました。
真珠湾奇襲攻撃を立案した際、
緒戦で米国に
大打撃を与える!
そして、米国民の戦意を落として、
講和に持ってゆく!
短期決戦による
早期和平!
日本のとるべき道は、
これしかない!
「打撃を与えて、早期和平」を考えていた山本長官。
おそらく、山口司令官もまた、山本長官の意見に対し、
米国民の戦意が簡単に下がるかは、
わからぬが・・・
「短期決戦による早期和平」は
大賛成!
「早期和平には賛成」だったでしょう。
山本長官の乾坤一擲の賭け:ミッドウェーへ
ここで、山本長官は、
米海軍を、
完膚なきまで叩き潰す!
意気揚々と「一気に米海軍に打撃を与えよう」と考えました。
米海軍の主力空母を、真珠湾では
撃ち漏らした・・・
その主力空母を誘き出して、
一気に雌雄を決する!
一気に勝負に出る賭けに出ました。
ミッドウェー島はハワイの近くで、
米海軍の超重要拠点・・・
ミッドウェー島を攻撃すれば、
米空母は出てくるだろう!
真珠湾奇襲攻撃と同様に、「極めて投機的な作戦計画」でした。
そして、南方資源地帯を攻めて「資源確保」を最優先する軍令部は猛反対します。
軍令部としては、南方の攻撃を最優先して
頂きたい!
こんな大博打みたいな
作戦は絶対に承認できない!
絶対に譲らぬ姿勢の軍令部。
山本長官!
南方資源の確保を!
海兵39期卒の伊藤次長は、40期卒の山口司令官の一つ上です。
・・・・・
山本長官は、
少し急ぎすぎではないか・・・
優等生肌の山口は、同じく優等生肌の「山本の思考を理解できる」つもりでした。
性急は
良くない・・・
「兵は
拙速を尊ぶ」だ!
確かに
そうなのだが・・・
準備もできてないのに、
拙速も何もないのではないか・・・
悩む山口司令官でした。
実際、この頃主力の第一航空艦隊の将兵は連日の戦いで疲れ果て、
ここのところ、
ずっと海の上で戦い続きだな・・・
ああ、少し陸で
急速を取りたいが・・・
ずっと「海の上での戦闘」を続けるのは、極めて困難であり、適切な休息が必要でした。
皆、疲れているのは
良くわかっている・・・
だが、米海軍も
同じ状況なのだ!
今!
今こそ、米海軍と雌雄を決する!
お祭り騒ぎの日本海軍全体に引きづられたのか、冷静な山本長官らしくない「拙速」でした。
次回は上記リンクです。