前回は「記述問題の増加傾向と対策・ポイント〜世界の教育と日本の教育・世界の流れと日本の中学受験・記述問題に対して準備する姿勢〜」の話でした。
エッセーや記述が「当たり前」の欧米の受験制度
昔から、米国の大学受験では「エッセーを提出する」ことが多くの場合で必須でした。
「自分がこれまでに何をしてきたか」などを文章にまとめて、大学側に提出します。
受験という審査にかかる以上、「エッセー対策」など「ノウハウ」もあります。
対策は必要ですが、エッセーは「自分で書く」ことに意義があります。
対して、AO入試などが増えてきたとはいえ、ずっと「ペーパー試験」中心の日本の受験制度。
ペーパー試験で測られる「学力」も、学びの上では大事なことであるのは事実です。
この中で、
「ただ問題が解ける」ことに、
どこまでの意味があるのか・・・
「ペーパー試験の学力」に関する議論が長年されてきました。
「決められた時間内に問題が解ける」ことは、単なる「問題解決能力」に過ぎないかもしれないのです。
エッセーや記述が長年「当たり前」の欧米の受験制度と、日本の受験制度は大きく異なります。
このことは、戦後しばらくして、高度成長期になった頃から認識はされていたと考えます。
戦後しばらく、日本は荒廃していて、
とにかく、
国家が復興しなければ!
官民一丸となって全力投球しました。
敗戦国となり、一時はGHQ(米国)に占領された日本。
事実上、国家が解体される事態となり、日本の「国家の勢い」は急速に落ちました。
戦後の日本の「急速過ぎる」ほど復興と成長に関して、上記リンクでご紹介しています。
その結果、急速な復興を遂げた日本に対しては、
なぜ、
Japanの経済力は、あんなに勢いがあるんだ?
さあな・・・
分からんな・・・
“Japan as No.1″つまり、「No.1のジャパン」という本まで出版されて、日本は空前の活況となりました。
昭和末期のバブル景気で、「爆走し続けていた」日本の話を上記リンクでご紹介しています。
そして、科学技術力と共に経済力が急増してゆき、バブル経済を迎えて、1990年崩壊しました。
2000年ごろまでは、その「バブル崩壊の余波」で混乱した日本。
バブル期は、
JapanのKaizen((改善)が
素晴らしい!
Japanの全員一斉型の
詰め込み教育も良いところがあるのでは?
「日本を大絶賛」する声も出てきたりして、日本の教育・受験界は変化せずに進んできました。
そして、21世紀に入って、日本が復活するどころか「落ちる一方」となり、
やはり
教育・受験制度の変革が必要だ・・・
日本の教育制度を見直す方向になった経緯があります。
ある意味「日本らしい光景」ですが、日本ほど戦後変化した国は非常に少ないのが実情です。
一握りの方が全ての権限を握っている国は即座に変化しますが、民主主義国家は難しい面があります。
そのため、日本の戦後の歴史が「日本の教育・受験界に悪影響を与えた」点もあるでしょう。
私立中学のカラーとボーダーラインの合否判断
今後増えると考えられる「記述式試験」は、積極的に考えて得意になると良いでしょう。
かつて、麻布中の試験では移民問題が出ました。
少しセンシティブな面もある「移民問題」への「自分なりの考え」が問われました。
解答としては、色々と考えられる問題で、「ただ一つの答え」は「ない」のが大きな特徴です。
この問題自体は「たくさんある問題の一つ」です。
「この問題を白紙で出しても、他で点が取れていて合計点が合格最低点を上回る」なら合格でしょう。
ただし、ボーダーライン前後の場合、どうなるでしょうか。
こういう記述問題に「きちんと回答している子ども」を優先して合格にするのではないでしょうか。
出題する教員の立場からすると、下記生徒のどちらに「入学して欲しい」か考えてみましょう。
総合点は、合格最低点を少し上回っている。
単なる暗記問題でドンドン点数をとっていて、「麻布中学として聞きたい」問題は白紙提出。
総合点は、合格最低点より、やや足りない。
一方、「麻布中学として聞きたい」問題にハッキリ答えている。
これは、中学校・教員側からしたら、
これは、
B君に我が校に入ってほしい!
こう考える可能性が高いでしょう。
「入試の総合点が5〜10点多い」ことと「能力の優劣」は、ほとんど関係がありません。
この視点を考えると、
「学校のカラーを出した問題に、懸命に答えている」方に
ぜひ入学していただきたい!
採点者が「答えてほしい問題」に真摯に答えている姿勢は大事です。
点数・偏差値に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
各中学校が、どのように合否裁定をしているかは全く不明です。
これらのことは、筆者の推測に過ぎません。
こういう「学校ごとの判断」はされているかも知れず、むしろ「されているべき」でしょう。
国立・公立の学校ならば、難しい面があるでしょう。
むしろ、私立の学校は「私立らしいカラーがある」からこそ存在意義があるのです。
ならば、私立中学の入学試験においては、上のような「独自判断」はあるのが本来の姿と考えます。
記述問題に「楽しく取り組む」ポイント
このように、日本の戦後の歴史と、世界の流れを鑑みるとき、「記述が増えるのは必然」とも言えます。
むしろ、日本の旧態依然とした「とにかく答え・選択肢」の試験を続けている学校は、世界から見れば、
そんなに知識ばかり
問うことに何か意味があるのか?
「知識最優先」に対しては、疑義を感じる欧米の方が多いでしょう。
この中、「エッセーに似た性質」を持つ記述問題は、良い面が多く、これから増加するでしょう。
そのため、「記述問題が出題されたことがない」学校でも準備はしておくべきです。
記述試験に対して、
そうは言っても、
今までやったことないし・・・
とにかく、答えに至る
勉強をしてきたから・・・
こう考える方がいたら、「自由に書くこと」をまずは楽しんでもらうようにしましょう。
記述問題の文章は、その出題校・先生が作成した「ただ一つの文章」です。
様々な学校の記述などの文章を読むと、大変面白いです。
・出題された文章を「こういう視点もあるんだ」と楽しく読む
・自分の歴史・地理などの勉強の「一つのまとめ」として学ぶ
社会などでは、歴史や地理などを複合化した「独自視点」のまとめで、それを読むだけで勉強になります。
記述問題が出たときには、「合っているか、間違っているか分からない暗記問題」に対して、
これは、(ア)かな
いや、(ウ)かな・・・
こう悩むよりも「記述式問題をしっかり答える」姿勢が、「合格を勝ち取る」には良いでしょう。
僕が武蔵中学に在学していた頃の社会の先生の話を、上記リンクでご紹介しました。
武蔵の場合は、記述式で思い切って書いてみると、
なるほど、
こういう見方もあるのか・・・
こうくるとは思わなかったが、
面白いね!
パッと良い点が付く可能性が高いです。
「正しいか」か「正しくない」かは別で、「自分の意見を持つこと」を非常に重視する姿勢です。
武蔵中の問題は「少し特殊すぎる」傾向がありますが、記述には前向きに取り組みましょう。
記述式をたくさん出題する学校を志望の方は、
記述は
楽しい!
このくらいの気持ちになると良いでしょう。
そうした「前向きな姿勢」は、勉強を続けてゆく上でとても大事です。
現実には、試験のプレッシャーがある中「楽しい」気持ちになるのは大変困難です。
その困難な中でも、
試験は
嫌だ・・・
こう考えるよりも、記述問題の過去問や練習問題の文章を読んで、
こういう見方もあるのは、
面白いかも・・・
こういう気持ちを持ってみると、良いでしょう。
そして、
この問題には
こういう答え方はどうかな?
「考える姿勢」は学力向上につながり、好奇心を持つことも大事なことです。
ぜひ、記述には積極的に、そして出来れば、「楽しい気持ち」で取り組んでみましょう。
次回は上記リンクです。