前回は「歴史・地理の記述問題の考え方 4〜武蔵中学の選択問題と記述・学校制度・学校と軍隊・自衛隊のイメージ・模範解答と記述〜」の話でした。
現代教育の問題点と郷中教育
西郷隆盛・大久保利通らが、小さな頃から経験してきた郷中教育。
非常に思考力を深める教育でした。
現代日本の「知識・暗記中心の教育」とは「対局的」とも言える郷中教育。(上記リンク)
教育に対しては、様々な考え方がありますが、「思考力を養う」ことが大事であることは明白です。
知識も大事ですが、知識ばかり溜め込むことは、「新たな発見などにつながる」姿勢にはならないでしょう。
この意味では、薩摩藩の郷中教育は「残すべきモノ」だったのかもしれません。
とは言っても、現代日本の学校制度とは全く適合しない制度である郷中教育。
「小学生が大学生と一緒に学ぶ」という状況は、考えようもない状況です。
制度は全く適合しなくても、郷中教育の手法・考え方は多い参考になる部分があるでしょう。
明治維新政府の行きすぎた「欧米の知識最優先・知識偏重主義」が、戦後日本の教育にも影響を与え続けています。
最近の小学校教育は変わったかもしれませんが、筆者が小学生だった時、
これ、
わかる人は?
は〜い!
は〜い!
このような感じで「分かることを問う」ことは沢山ありましたが、
これに関する、
意見は何かある?
このように「先生から意見を尋ねられた経験」は、ほとんど記憶にありません。
中学入試における思考力と記述力
こうした中、様々な中学校が受験において、様々な試みを行なっています。
「思考力を試験で測る」ことは、非常に難しいことだと思います。
「決められた時間内に、考える・表現する」ことは、「深い思考力」とは対極的でもあるからです。
一方で「試験を課す側の立場」から考えれば、
志願者たちの
「考える力」を測りたい・・・
今持っている学力も大事だが、
もっと大事なのは、将来伸びてゆくこと!
なんらかの志願者・受験生の「思考力の判断」はしたいでしょう。
中高一貫校の場合、子どもたちがその中高一貫校で過ごす時間は、中学高校の6年間です。
後になってみれば、「あっという間」かもしれませんが、実に長い6年という時間。
対して、小学校も6年間です。
小学校1年生から中学受験のために塾へ行っている方もいるでしょうし、小学校4年生からの方もいるでしょう。
小学校低学年・1〜3年生くらいの塾の雰囲気は、筆者は行ったことがないので分かりません。
テスト・テストで、子どもたちは大変かもしれませんが、概ね「本気で学ぶ」のは小学校4年生くらいからでしょう。
すると、中学受験当日まで「約1〜3年ほど本気で学んだ」結果を、1日(または2日)間の試験で測ることになります。
塾でも小学校でも、「小学生の間の学び」と「中高一貫6年間の学び」では、はるかに後者の比重が大きいです。
各学校の校風・カラー・教育理念によりますが、入学試験問題を作成・採点する教員は、
今、学力が高いことは
望ましいが・・・
もっともっと大事なことは、
当校で6年間、ミッチリ学んで、学力をつけること!
「中高六年間が大事」が「本音」なのではないでしょうか。
実際、中学受験の時に「非常に優秀」だった方が、中学で遊んでばかりで、全然学ばない方もいます。
また、中学受験の時に「抜群の成績」だった方が、高校くらいで失速する方もいます。
稀に中学受験の時に「抜群の成績」で、そのまま抜群をキープして「大学受験も抜群で突破」する方もいます。
そういう「ずっとサイヤ人」みたいな方もいますが、なかなか「そうはなれない」のが現実です。
この「抜群の成績」は、それはそれで「すごいこと」です。
一方で「抜群の能力」は、後になって考えれば「効率よく知識・解法を習得する能力」に過ぎないことも事実です。
自分の考えを書いてみる:記述対策と書く訓練
では、どのように志願者を選抜すれば良いのか。
これは、各学校の教員・教師たちが悩んでいることでしょう。
AIの急速な発展により、危惧を抱いた米国の大学。
カンニング対策もあり、米国で「口頭試問」をする大学が増えているようです。
この「口頭試問」は、面接の一つの形式であり、とても良いと思います。
一方で、「大変手間・時間がかかる」のが問題です。
どうやって、当校で
ミッチリ学ぶ姿勢を持つ子どもを選抜するか・・・
このように考える教員たちは、一つの選択肢として「紙上の口頭試問」である記述を選びます。
やはり、「答えだけ」ではなく、
記述で本人の能力・指向性を測りたい・・・
そして、今後は少しずつ記述が増えてゆくと考えます。
僕が受ける予定の学校は、
ほとんど記述はないよ・・・
でも、突然、記述問題でたら、
どうしよう・・・
記述問題に苦手意識を持つ方は、多いようです。
記述は
難しい・・・
「記述は難しい」と考える人には、いくつか理由があると思います。
その一つは「明確な答えがない」ことでしょう。
選択肢なら「ア」とか、答えを求める問題なら「寺子屋」と答えれば○です。
一方で、記述式は、模試や試験で採点を受けることがあっても、
なんで、この
点数なんだろう・・・
どうやって、模範解答みたいに
書けるようになるんだろう・・・
「よく分からない」から「苦手」に感じてしまうのです。
難しく考えずに、「自分が感じたこと、考えたこと」を書いてみましょう。
その結果、✖️とか低い点数でも、
こういう
ことを書けば良いんだ・・・
「どのようなことを書けば良いか」を学べば良いのです。
まずは、「自分で書いてみること」をすることが、最大の記述問題対策です。
社会の問題では、記述問題が作りやすいと考えます。
例えば、下記のような問題を考えてみましょう。
あなたの好きな歴史上の人物一人を選び、その人物の説明をして下さい。
そして、その人物に対する「あなたの意見」も含めて、書いて下さい。
人物の選定に対しては、点数の差はなく、説明・あなたの意見が評価の対象です。
こういう問題は、過去にもあったかもしれません。
大事なことは、「自分で選んで、意見を書くこと」です。
そして、「選んだ人物」は採点の対象でないことも、大事です。
織田信長・徳川家康・西郷隆盛・坂本龍馬のような超有名人物を選んでも、誰でも良いのです。
夏休み、こういう問題を考えてみるのは、思考力を養うでしょう。
字数制限はあってもなくても良く、僕は「字数制限は必要ない」と考えます。
一方で、「決められた字数で表現するのも、また学力」と考える方もいらっしゃるでしょう。
字数は、200〜400字程度で書くことを考えてみましょう。
こういうことを考えると、勉強への意欲も湧くでしょう。
次回は下記リンクです。