前回は「身近な塩を理解する「たばこと塩の博物館」〜生物にとって大事な塩・湖塩や岩塩の塊に触れる体験・塩も少ない資源小国日本〜」の話でした。
身近な塩の歴史が分かる「たばこと塩の博物館」:塩の天日干し
世界の様々な国で算出される、湖塩や岩塩。
「塩の塊」が算出されれば、あとはこの塊を粉々にすれば「美味しい塩」がえられます。
周囲を「完全に海に囲まれている」島国日本では、「塩に恵まれている」ように感じます。
ところが、日本では湖塩や岩塩が一切算出されず「塩に恵まれない」国です。
そこで、「海の中にある塩」を一生懸命取るしか方法がなく、歴史上懸命に取り組んできました。
海水に3%ほど含まれている塩を得るには、「海水の水分を蒸発させれば良い」ことになります。
さらに、海水は「いくらでもある」ので、「海水を運んで蒸発させて、塩を得る」のが最善です。
これは誰でも考えつくことで、水は「沸騰させれば蒸発する」ので簡単そうに見えます。
ところが、「たくさんの海水を一気に蒸発させる」のは、意外と大変なことです。
そこで、大きな釜を用意して海水を釜に入れて、一生懸命「水を蒸発させる」方法がとられました。
この方法で「ある程度の量の塩」を得ることが出来ますが、
とにかく、どんどん海水を
蒸発させよう!
「大量の塩」を算出するには、「ひたすら海水を蒸発」させる必要があります。
今ならば、ガスや電気で大きな熱源を得ることが出来ますが、昔は「火力は薪から」でした。
どんどん、薪を入れて
強い火力を得るのだ!
ああ・・・
とにかく暑いな・・・
猛烈な火力がある釜が多数ある「塩を算出する現場」は、猛烈な暑さでした。
もうちょっと
効率化できないか?
少しでも、自然の力で
水分が減らせれば良いんだけどな・・・
そこで、「太陽の力」で水分を蒸発させる方法が日本のみならず、世界中で採用されました。
海岸などで、「日の力で海水を蒸発させる」塩田が作られて、塩が作られました。
ここに、海水を貯めておいて、
天日干しすれば、塩が作れるな!
天気が良ければ、
かなり大掛かりに塩が作れるから、良いな!
この塩田によって、効率的に塩が算出されることになりました。
十州塩田と現代の塩の大生産地:塩田を作るのに適した地
塩田のメリットは、「天日干し」という「自然の力で塩を作る」方法なので、比較的容易であることです。
さらに、「自然の力のみ」なので「エコである」点も重要です。
こうして、塩を算出する方法として、下記の二通りの方法が主流となりました。
天日採塩法(てんぴさいえんほう):天日干し・太陽熱で海水から水を蒸発
煎熬採塩法(せんごうさいえんほう):濃縮した海水を、釜など火力で水を蒸発
この二つの方法の「どちらか」でも良いですが、「両方出来る」と大きな算出が見込めます。
そこで、「塩田を作るのに適した地域」に「塩の一大産出地」が登場してきました。
「塩田を作るのに適した地域」とは、どういうところか考えてみましょう。
まず、「海水が比較的容易に得られる」必要があります。
内陸部だと「海水を運ぶだけで大変」なので、「海の近く」が必須です。
他に、もう一つ大事な特徴があり、これは日本に限らず世界の塩田も同様です。
海の近くで、
海水を蒸発させるんだよね・・・
天日干しってことは、
太陽熱で水を蒸発させるから・・・
曇ったり、雨だったら、
天日干しにならないね。
塩田を作る地域は「曇りや雨が多い地域」は、全く適さないことになります。
そこで、日本では古来から「海に近く、比較的天日干しに適した」瀬戸内海で塩が作られました。
瀬戸内海付近の十の国々で、塩作りが盛んに行われ「十州塩田」と呼ばれました。
十州:播磨、備前、備中、備後、安芸、周防、長門、阿波、讃岐、伊予
瀬戸内海沿岸部の十州の国々で、大掛かりな塩田が作られた塩の大生産地エリア
この「十州」は、現在の都道府県ではなく、旧国名によります。
この中で「備前、備中、備後」と「前、中、後」で綺麗に東から西へ並んでいるエリアがあります。
他にも「前、中、後」がつく旧国名がありますが、これは「京中心の考え方」です。
上記リンクでは「前、中、後がつく旧国名」について、ご紹介しています。
江戸時代から明治にかけて、この「十州塩田」付近の「塩の大生産地」が西日本に集中しました。
そして、「十州塩田」の名残は今でも残っており、塩の生産額は「一位が愛媛県、二位が兵庫県」です。
塩の話は、理科と社会を横断する話で、とても興味深いです。
上記のような模型を見ることは、「本で知る」ことよりも遥か分かりやすいです。
そして、こういう模型や実物大の復元を見ることは、大いにイメージを喚起します。
「たばこと塩の博物館」(上記リンク)は、スカイツリーの押上近くにある、おすすめの博物館です。
夏休みの時期は、子どもが楽しめる「夏休み塩の学習室」が開催されています。
親子で楽しめる博物館なので、ぜひ訪問してみてください。
次回は上記リンクです。