前回は「お由羅騒動の巨大な衝撃と西郷隆盛〜迫田奉行の届かぬ直訴・農民と西郷青年・島津久光との「生涯噛み合わない」関係・一心同体だった西郷と大久保・極貧の大久保家〜」の話でした。
島津斉彬の開かれぬ「藩主への道」:父斉興の妨害
藩主・島津斉興は、嫡男(長男)斉彬が、大嫌いでした。
斉彬は
大嫌いだ!
斉彬は斉興の祖父・重豪と同様に、西洋技術に非常に興味がありました。
祖父・重豪は非常に豪快な人物で、学びに対する意識が大きい藩主でした。
海外の様々なことに対して、大きな興味を持っていた島津重豪。
なになに、
海外では、このような文字を使うのか・・・
全然我が国の文字と
違うのう・・・
とても面白い!
ワシも学んでみようか!
海外、特に当時世界の中心だった欧州の科学技術や文化に極めて大きな興味を持ちます。
これは、「重豪が非常に優れて先進的人物だった」こともありますが、薩摩藩の特殊性が大きいでしょう。
徳川幕府・他の藩と比較して、圧倒的に「海に開かれていた」薩摩の国。
遣唐使の頃から、海に開かれていた地域でした。
重豪の元、薩摩藩は西洋技術振興を行い、
西洋の先進技術を
どんどん薩摩に取り入れよ!
この重豪の方針によって多額の支出が発生し、薩摩藩が大借金を背負ったのです。
斉彬が藩主になったら、
また大借金だ!
そんなことは、
ダメだ!
嫡男・斉彬を藩主にすると、借金を少しずつ減らしてきた努力が水の泡になります。
そして、
私は
側室のお由羅が好きなのだ・・・
側室・お由羅の子・久光を
次の藩主に・・・
「次は久光」と考えていた島津斉興。
だから、
斉彬には藩主の座を譲らない!
その矢先の、「お由羅騒動」でした。
代々、
嫡男が次ぐのが当然!
当時は「嫡男(長男)が後継」が普通の考えだった中、薩摩藩士の間にも深刻な動揺が広がります。
老中・阿部正弘の介入:斉興への無言の強力な圧力
島津斉彬は、40過ぎるまで藩主になれなかった斉彬。
もう40に
なってしまった・・・
現代では「40はまだ若手」ですが、当時は皆もっと早く「次期藩主」となっていたのでした。
それほど、私は父・斉興に
嫌われているのか・・・
開かれる気配すらない、斉彬の「藩主への道」。
暗澹とする気持ちの中、斉彬の友人が手を貸します。
老中・阿部正弘は島津斉彬と意見が合い、非常に親しかったのです。
斉彬殿は、
大変先進的で良いな・・・
今、いろいろな国々が
我が国に接してきており、時代は変動している・・・
斉彬殿、
我が徳川幕府に尽力してくだされよ。
ははっ!
当時、老中は現代の内閣総理大臣にあたります。
徳川幕府内部で内閣が組織されており、薩摩藩主といえども外様大名であり「幕府に従う」立場です。
ここで、思い切って、斉彬は老中・阿部正弘に相談します。
父・斉興が藩主の座を、
渡してくれなくて・・・
な、
なに?
斉彬殿が藩主にならないのは、
こういうことだったのか・・・
ここで、老中は斉彬に協力を約束しました。
よしっ、俺が、
一言言ってやろう!
そして、薩摩藩主である島津斉興を呼び出した老中・阿部正弘。
斉興よ、
元気にしておるか・・・
ははっ!
阿部様にもお変わりなく・・・
ところで、斉興よ。
これ(茶器)を与えよう・・・
!!!!!
老中・阿部正弘は、斉興に茶器を下賜します。
それは「引退せよ」の合図でした。
斉興よ!
早く斉彬に藩主を継がせよ!
老中からの「暗黙の圧力」でした。
まずい・・・
老中が出てきたか・・・
大老井伊直弼が登場する前は、老中・阿部正弘が最高権力者です。
ここで老中に反抗しては、「薩摩藩取りつぶし」はなくとも「減封」はあり得ます。
老中に逆らう
わけには行かん・・・
分かりました・・・
藩主は斉彬に譲ります・・・
それが
良いのう・・・
こうして、紆余曲折の果てにようやく薩摩藩主になれた島津斉彬。
やっと、
藩主になれた!
1851年のことでした。
島津斉彬との出会い:開く西郷の「運命の扉」
斉彬が藩主に就任した1851年の2年後の1853年には、米提督ペリーが浦賀にやってきます。
老中・阿部正弘の力により、1851年に正式に第十一代藩主になった島津斉彬。
よしっ!
富国強兵だ!
とにかく、
技術革新だ!
藩主に就任するなり、欧州の最先端技術を取り入れを強力に推進します。
反射炉・溶鉱炉の建設などを行う集成館事業を実行します。
そして、斉彬と西郷は運命的な出会いをします。
富国強兵の方針の元、
優れた人材は
いないか?
優れた人材は
一人でも多く欲しい!
優秀な人材を集め続ける斉彬の目に、西郷が止まります。
このように
農政改革したら良かです。
郷中教育と造士館で一生懸命勉強し、民衆を見つめてきた西郷。
そして、西郷は自分の思うところをしっかりと文章にして、意見書の形で提出していたのでした。
おいどんは、
こう考えもうす・・・
西郷の意見書を見た斉彬は、ピーんときました。
むむ!
こやつはスゴいぞ!
こやつ・・・
使える・・・
島津斉彬の瞳がキランと光りました。
西郷か・・・
下士だが、優れている・・・
身分など関係ない!
優れた人物こそ、時代を切り開くのだ!
人を見る目があった斉彬は、西郷を重用しようと考えます。
西郷よ。
庭方役を命じる!
ははっ!
有難き幸せ。
身分の低い庭方役ですが、藩主の近くで過ごします。
斉彬様のために
尽くすぞ!
自分の師を見つけ、燃える西郷でした。
そして、西郷隆盛の「運命の扉」が大きく開かれてゆきます。
次回は上記リンクです。