なぜ?を考えて記述力アップ〜「アジアの守護神」から「アジア侵略」へ・「感激」が「失望」に変わったネルー・増長し過ぎた大日本帝国〜|武蔵中1990年社会9・過去問・中学受験

前回は「広い視点で記述問題を考えるコツ〜「感激」の様々な解釈・日本の勝利に感激したネルー・大英帝国の植民地だったインド〜」の話でした。

目次

「感激」が「失望」に変わったネルー:増長し過ぎた大日本帝国

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日本人と日本という国家を「極めて高く」というよりも「異常に高く」評価したネルー。

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ジャワハルラール・ネルー インド首相(Wikipedia)
ネルー

Japan(日本)が勝利したことは、
本当に、本当に感激したんだ!

ネルー

Japan(日本)は全てのAsiaの国々に
大きな影響を与えた!

ネルー

Japan(日本)はなんという
素晴らしい国なんだ!

私たち日本人が「嬉しい」を超えて、「ちょっと照れてしまう」ほど日本人をベタ褒めしたネルー。

実の娘に対して、

ネルー

私は少年時代、どんなにそれに感激したかを
お前によく話したものだ・・・

ネルーは「少年時代の大感激」であった日本の躍進を、羨望の眼差しで見ていたでしょう。

問題文はここで終了ですが、

出題者

ところが、日露戦争後の
日本の動きにネルーは失望しました。

「感激」が一転して「失望」に至ったことが、問9で明らかにされています。

出題者

ネルーが失望に至った
理由はなんでしょうか?

問8までは歴史の知識も大事ですが、問題文から「大体の歴史的背景」が読み取れます。

一方で、問9は「問題文の文章が終わったあと」であり、歴史の知識がなければ答えようがありません。

まずは、「失望」の理由を考えてみましょう。

「感激していた」だけに、「失望」という一気に評価が強烈に落ちたネルーの日本への視点。

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日の丸:日本の国旗(Wikipedia)

現代の日本とネルーの頃の大日本帝国は、「同じ日本」ですが「違う国家」と表現しても良いほど違います。

そもそも「国家の根幹」である憲法が全く違う時点で、「完全に異なる国家」という表現にもなり得ます。

日本国憲法と大日本帝国憲法に関する話を、上記リンクでご紹介しています。

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旭日旗(Wikipedia)

大日本帝国の国旗は、上の旭日旗の方がイメージが合います。

大日本帝国の「正式な国旗」に関しては諸説あり、現在と同じ「日の丸」という説もあります。

旭日旗は、自衛隊や特殊な場において、現代でも使われます。

一方で、この旭日旗からは「大日本帝国の香り」がするのもまた現実です。

大国ロシアを打ち破った日本は増長し、軍国主義を一目散に突き進んでゆきました。

大日本帝国

ロシアを倒して、
一流国入りしたんだぞ!

大日本帝国

我が大日本帝国は、
アジアで最強国家なのだ!

大日本帝国

そして、我が大日本帝国が
欧米の帝国主義に抵抗して、アジアに帝国を築く!

当時、米国はフィリピンなどに進出し、英国・フランス・ドイツなどは中国に進出していました。

大英帝国

China(中国)にどんどん侵略して、
支配するのだ!

フランス

我が国もChinaを南から
侵略するのだ!

ネルー

欧米の帝国主義によって、
Asiaが侵略されてしまう・・・

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欧米列強のアジアへの進出(大日本帝国の興亡3 学研)
大日本帝国

ならば、我が国もどんどん
アジアに進出するのだ!

この大日本帝国の増長っぷりに、

ネルー

なぜ・・・
なぜJapan(日本)も・・・

ネルー少年は、心底ガッカリしたのでしょう。

なぜ?を考えて記述力アップ:「アジアの守護神」から「アジア侵略」へ

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大日本帝国の領土:1918年頃(Wikipedia)

そして、日露戦争で勝利した5年後の1910年には、大日本帝国は思い切った決断をしました。

大日本帝国

韓国を併合して、
我が大日本帝国の領土にします!

一気に韓国を併合した大日本帝国。

「韓国併合」と言われる出来事で、世界中に衝撃を与えました。

大英帝国

Japan(日本)が、Korea(韓国)を
支配下に納めただと・・・

明治維新以降、拡大を続けていた大日本帝国。

領土を拡大するきっかけは、多くは「戦争による勝利」などでした。

いわば、「戦争の代償」として領土を受け取っていた姿勢を変えて、一気に「植民地化」へ走りました。

1889年生まれのネルーにとって、1904年の15歳中学三年生の頃に勃発した日露戦争。

ネルー

Japanが、あのRussiaに
勝利した!

ネルー

我々、Asiaの黄色人種が
Europeの白色人種に勝てるのだ!

大いに希望をもらったネルー少年。

ところが、韓国(朝鮮)を併合、中国を侵略し始めた大日本帝国に対して、

ネルー

えっ!
これはちょっと違うのでは・・・

ネルーにとって「英雄的国家」であった大日本帝国は、どんどん軍国主義化してゆきました。

おそらく、ネルー少年は、

ネルー

Japanは、Asiaの盟主となって、
我々Asiaを守ってくれる英雄だ!

「自分達を守ってくれる」と思っていたのに、「矛先をアジアに向けた」のが大日本帝国でした。

ネルー

Japanは、Europeや白色人種たちと
戦うのではなかったのか・・・

ネルー

なぜ?なぜ、Japanは
仲間であるAsiaを侵略するのだ?

少年から青年になる頃のネルーにとって、大日本帝国は「英雄でもなんでもない存在」に堕ちました。

ネルー

私が大いなる希望を持つ
キッカケを与えてくれた偉大な国家Japan・・・

ネルー

だが、今の(当時の)Japanは
私が思っていた国家とは全然違う・・・

ネルー

これではJapanは欧米同様の
侵略者ではないか・・・

ネルーは「かつて感激した日本」に大いに失望したのでした。

男子小学生

当時、英国の植民地だった
インドの国民のネルーの視点だね・・・

女子小学生

日露戦争後に大日本帝国が
軍国主義になったことかな・・・

このネルーの「感激から失望への落差」を、歴史的背景と共に書くと良いでしょう。

問9の答え(解答例)

A.ネルーが「アジアの救世主」と思っていた日本が軍国主義の方針を強化し、インドを植民地としていた大英帝国(イギリス)など欧米列強と同様に植民地化を進めた。「アジアを守る」と思った日本が、逆に韓国(朝鮮)併合し中国を侵略することに対し、欧米同様に「侵略者」となったことに大きな失望を感じたから。(最も良い例:日本の軍国主義化とネルーの「アジアの救世主」から「侵略者」という視点が表現)

B.ネルーに感激を与え、「目指すべき国家像」であった日本が軍国主義を進め、世界を植民地化した欧米列強と同様の国家に変質したように感じた。「アジアの守護神」と思っていた日本が、韓国(朝鮮)併合、中国侵略を進める行動に出たことに対し、裏切られた気持ちになったから。(最も良い例:ネルーの思っていた日本とアジア侵略の日本が違う視点を表現)

C.アジアなどに多くの植民地を有した白色人種至上主義の欧米諸国に対して、「アジアや黄色人種の救世主」だったはずの日本が一転して、韓国(朝鮮)併合や中国侵略など「仲間であるはずのアジア」を支配下に置く姿勢に対し強い失望感を抱いたから。(良い例:「アジアや黄色人種の救世主」から「一転」が表現)

D.日露戦争で勝利した日本が軍国主義を進め、韓国(朝鮮)併合や中国進出を進めてゆき、領土を拡大する姿勢に対して、失望感を抱いたから。(やや悪い例:ネルーの感激の理由からの落差の説明が欲しい)

E.日本が韓国(朝鮮)併合や中国への侵略などアジアに占領地を広げてゆくのをみて、「アジアの同胞」への攻撃に対しする裏切りと感じたから。(悪い例:欧米列強の植民地化との比較が欲しい)

良い例を、もう少し簡潔に書いてみましょう。

問9の答え(簡潔な解答例)

A.「アジアの救世主」の日本が軍国主義を強化し、インドを植民地としていたイギリスなど欧米と同様に植民地化を進めた。「アジアを守る」と思った日本が逆に韓国併合、中国侵略し「侵略者」となったことに強い失望を感じたから。(最も良い例:日本の軍国主義化とネルーの「アジアの救世主」から「侵略者」という視点が表現)

B.ネルーに感激を与た日本が軍国主義を進めアジアを植民地化し、欧米列強と同様の国家に変質し、韓国併合、中国侵略を進めたことに対し、裏切られた気持ちになったから。(最も良い例:ネルーの思っていた日本とアジア侵略の日本が違う視点を表現)

C.植民地化を続けた欧米諸国に対して、「アジアの救世主」だったはずの日本が一転して韓国併合や中国侵略などアジアを支配下に置く姿勢に対し強い失望感を抱いたから。(良い例:「アジアの救世主」から一転が表現)

当時、朝鮮半島は「朝鮮」と呼ばれていましたが、1910年の併合は「韓国併合」と習います。

そこで、この併合に関しては「韓国併合」でも「朝鮮併合」でも良いでしょう。

「なぜ?」を考えることは、社会生活を生きてゆく中、そして学ぶ中で根幹的なことです。

この問のように、歴史的背景をもとに「なぜ、そう感じたか?」などを考えることは、とても良いでしょう。

また、この問のように、ポイントをもとに自分なりに解釈することを楽しむ姿勢が良いでしょう。

「アジアの救世主」「アジアの守護神」という表現が適切かどうかは、採点者の判断次第です。

採点者

「アジアの救世主」か・・・
まあ、表現としては面白いな・・・

採点者がこう考えれば、相応に良い点を与えるでしょう。

このように、ポイントをもとに色々と考えて、書いてみると記述力がアップするでしょう。

次回は上記リンクです。

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