前回は「点数と偏差値を上げる考え方〜点数と偏差値で評価されること・自分が出題者・採点者だったら・出題者・採点者が考えていること・減点主義と加点主義・校風とカラーを理解・イメージ・自分の個性を出す〜」の話でした。
出題傾向と学校のカラー・教育理念
それぞれの学校が、入試の際に受験生・志望者に対して考えることがあります。
学校によっては、
学力が高い方に
入学して欲しい・・・
あるいは、大学進学実績を主体に考えている教育方針であれば、
レベル(偏差値)の高い
大学に入学できるような学力を持った生徒が欲しい・・・
と考えている学校もあるでしょう。
これらの「考え方」自体は、それぞれの学校の校風・カラー次第で「良い・悪い」はないと考えます。
例えば、すべての問題が「答えのみ」である中学校の考え方は、上記のような内容であると考えます。
中学受験の問題を解けるかどうかは関係なく、大人になれば、
この学校の先生方は、
こういう思考性だろうな・・・
数年分の出題傾向を見れば、学校の雰囲気は大体想像できます。
なぜ、問題だけで
それが分かるの?
小学生・中学生・高校生には不思議かも知れませんが、大体40歳くらいになると社会が分かってきます。
ここでいう「社会」とは、科目の社会ではなく「人間社会」の「社会」です。
例えば、社会に出て20代、30代前半くらいまではなかなか気付きませんが、30代半ばくらいから、
ああ、A社の社員って、
何か共通点があるな・・・
人それぞれに個性がありますが、それでも「会社」という共同体にいると「似てくる」のです。
A社の雰囲気は、社長も含めて、
一生懸命で、誠意がある雰囲気だ・・・
ある会社が「社長含めて全員がおおむね似た傾向」があります。
それは「良い面も悪い面も似てくる」部分があるのが、不思議なことです。
逆に、
B社の社員は、いつもこういう
感じで、口先ばかりだな・・・
と感じると、不思議とその会社の方は概ねそういう感じ見えるのです。
これは「法則」ではなく、あくまで「全体的な傾向」ですが「社風」によって人は影響されるのでしょう。
「社風」と同様に「校風」は、先生方・教員方に強い影響を与えるので、「似た思考性」を帯びてきます。
そして、「入学試験を任される」のは若手の場合もあるかも知れませんが、おおむね中堅以降でしょう。
それは、機密保持の観点もあり、また「学校をよく知っている人物」であることが望ましいからでしょう。
学校側が考えている「入学して欲しい生徒」
とにかく「答えのみ」で「早い問題解決能力」を求める学校も多数あります。
それは「一つの考え方」でありますが、「答えのみ」ではない出題をする学校には、
我が校に入学して欲しい
生徒はこういう生徒だ!
という明確な像があります。
僕が卒業した武蔵中学はこの傾向が特に強いですが、開成・麻布などの学校も同様の傾向があります。
例えば、麻布中の問題であれば、問題内容が「麻布」を体現しているとも言えます。
女子御三家と言われる桜蔭・女子学院・雙葉も出題傾向が全く異なり、それぞれの「女性像」が垣間見えます。
特に、何らかの記述問題を課す学校は、記述の解答によって、
受験生の真の学力を
みたい!
こう考えている面もありますが、もう一つ大事なのは、
受験生の思考性が
当校の校風・カラーに合うかどうかを知りたい!
このような意図があるでしょう。
この「校風・カラーと適合する人物を求める」姿勢は、当然のことです。
大人になって考えてみれば、「能力」も大事ですが「人となり」や「合うかどうか」は極めて大事です。
友人として付き合うのではなく、何か業務を依頼する場合、
あの会社は全然合わないけど、
能力が高いから依頼しよう・・・
と考えることは非常に少ないです。
もちろん、能力が低すぎたら依頼しませんが、何かを依頼する際には、
あの会社は一生懸命だし、気が合うから
今回も依頼しよう!
と考えるのが、大人の社会です。
教員が記述などの採点をしているとき、
点数がやや足りないが、
当校に入りたい熱意を感じる。
我が校の校風に、
非常に適合する人材と思う。
何らかの特殊な才能が
認められそうだ。
このような子どもに対して、
ぜひ当校に
入学して欲しい!
と考えるでしょう。
また、「そう考えることが当然」なのです。
模試の成績と受験の合否:稲盛和夫の考え方
模試ではこのような発想はなく、「単純合算」でしか成績及び順位を決めるしかありません。
そもそも、模試の採点者は「受験生の生徒の指向性」は考えもしないでしょう。
ある学校の校風・雰囲気を考えるとき、模試の採点者と学校の教員は大きく異なります。
そのため、模試と実際の受験の採点方針は「比較できない」のが現実です。
それは、模試と入試の役割の「大きな違い」から起因します。
模試は「試験本番のトレーニング」という側面もあります。
受験する生徒の「学力を測り、受験者の中の現在の立ち位置を明らかにする」です。
対して、入試は「学校が望む学力を持ち、将来大きく成長する可能性の高い生徒を合格とする」です。
一方で、本番の受験においては「その学校ならでは」の点数のつけ方があるかも知れません。
小学生〜高校生には想像しにくいかも知れませんが、読者が入社試験の面接・人事担当者だとします。
K大学のA,Bくんが面接に来ました。
Aくん:成績優秀で真面目そう。当社をあまり詳しく知らず、熱意はまあまあ。
Bさん:Aさんより成績が劣るものの、当社をとてもよく調べていて、大いなる熱意あり。
採用人数に余裕があれば、両者採用かもしれません。
ところが、AかBどちらかを選ぶとしたら、どう考えても、
これは
B君を採用だ!
となるでしょう。
能力は高い方が良いのですが、長期的な視点で成果を出すのは熱意がある人であることが多いです。
京セラ創業者であり、日本航空の再生などにも関わった稲盛和夫は、
「人生の結果=考え方x熱意x能力」
なのだ!
と言っています。
ここで、最も大事な「考え方」は大人にならないと分からない面がありますが、熱意は非常に大事です。
中学入試において「能力を測る」といっても、小学生は小学生です。
その子が将来どのように成長するのかは、「テストでは分からない」のが実情でもあります。
その時、「熱意がある」「一生懸命さがある」子どもは「テストができる」とは別にどの学校も欲しいはずです。
学校によっては、入試において、
学校の校風・カラーに適合する考え方を
持つ生徒・人材を合格とし、入学して欲しい!
このような考え方になるでしょう。
志望する学校のことをよく知って、心から、
その学校へ
行きたい!
のでしたら、その気持ちを強く持って、学力を充実させましょう。
その「合格したい気持ち」は試験当日に強く・強く持って臨みましょう。
そして、「合格・入学への強い気持ち」を答案用紙にぶつけて、思い切って表現してみましょう。
そして、一歩でも合格に近づいてみましょう。
次回は上記リンクです。