前回は「歴史の知識・記述対策〜徳川幕府から新政府へ 3(廃藩置県の実態)〜」の話でした。
日露戦争と日露関係:ウクライナ戦争と日露戦争
今回は日露戦争の話です。
ウクライナ戦争が勃発してから、1年3ヶ月余りの時間が流れました。
2年前、このような大規模な戦争が勃発することは、ほとんどの人が想定していなかったでしょう。
近年、ロシア・中国の動きが活発化していました。
日本人にとって、どこか縁遠い存在のロシア(ソ連)。
実は、江戸時代末期からロシアは日本に接触を続けており、北海道周辺を狙い続けてきました。
「北方領土問題」以外には、ロシアという国は、あまり馴染みがないように感じる方が多いでしょう。
ところが、日本にとっては非常に馴染みがあり、海を隔てた隣国であるロシア。
中学受験等で、「日露関係を振り返る」問題として、日露戦争が出題される可能性があります。
文章題などで出題の可能性はあるので、流れをしっかり理解しておきましょう。
当時1904年〜1905年にかけて、主に朝鮮半島〜中国・日本海で日露で戦いが起きました。
この戦いは、それまでの戦争の概念を大きく変える戦いであり、「第0次世界大戦」とも考えられています。
第0次世界大戦?
第1次世界大戦の前ってこと?
つまり、19世紀までの戦争とは、根本的に異なり、被害が極めて大きかった戦争だったのでした。
日露戦争に関しては、日本側の見方・ロシア側の見方で180度異なるでしょう。
「見方は異なる」でしょうが、基本的に仕掛けてきたのはロシアでした。
南方進出目論むロシア
20世紀初頭のロシアは中国や日本などの南方・極東地域への進出を目論みます。
そして、1891年にシベリア鉄道を着工します。
我がロシア軍が
極東地域を占領して・・・
我がロシアの不凍港・ウラジオストックから、
周辺に領土を広げてゆくのだ!
当時も、現代も膨大な領土を有するロシア(帝国)。
バルト海などに展開するロシア海軍には、悩みがありました。
冬の間は、
港の海水が凍ってしまう・・・
これでは、我が海軍の
動きがままならぬ・・・
そこで、極東地域の都市を清国(中国)から、強奪するように奪取しました。
そして、名付けた名前が「ウラジオストック=東方を征服せよ(ロシア語)」でした。
うわっはっは〜!
我がロシアが、ウラジオストックから東方・極東を攻める!
三国干渉:ロシアのメッセージ
そして、日露戦争勃発の10年前の日清戦争では、日本に苦い思い出があります。
1894年に朝鮮半島をめぐり日本と清国(中国)が衝突しました。
当時欧米から「眠れる獅子」と言われた清国に日本は快勝します。
下関条約を締結し、遼東半島を中国から日本へ割譲することが決まります
しかし、この地域への進出する意思を露骨に出していたロシア。
ロシア主導で、フランス・ドイツと一緒になって三国干渉を日本に行い、遼東半島割譲撤回を日本に求めます。
条約は日清間の事柄で、ロシア・フランス・ドイツはいずれも「関係ない」のです。
しかし、列強の圧力に屈した日本は三国干渉を受け入れ、遼東半島を返還します。
あべこべにロシアは、旅順等に進出します。
三国干渉は、古来からの大国ロシアから、日本へのメッセージでもありました。
中国東北部へ進出するのは
我がRussiaだ!
新興国のJapanは
引っ込んでろ!
というメッセージであり、これは「おかしい事」ではあります。
ところが、世界中で帝国主義が蔓延していた当時は、「それほどおかしなことではなかった」のでした。
こんなこと理不尽なことを言われて、
分かりました・・・
引っ込みます・・・
とは、独立国としての対面上、絶対に言えるわけがありません。
条約で日本側全権であった伊藤博文内閣総理大臣(当時)、陸奥宗光外務大臣たち。
ロシアが
出てきたか・・・
関係ないのに、
いきなり出てきてなんなんだ!
せっかく、清国との話し合いを
上手くまとめたのに・・・
悔しいが、我が日本は
ロシアと事を構える力はない・・・・・
こんな馬鹿げた主張を聞くわけには
いかぬが・・・
聞かなければ、ロシアが攻め込んで
来るかも知れぬ・・・
その事態が起きたら、
我が大日本帝国は終わる・・・
そして、元老であった伊藤博文は、「ロシア宥和策」を推進しました。
激突必死の日露関係:国力の違い
譲歩して、遼東半島を返還した大日本帝国。
それに気を良くしたロシア。
やはり、Japanは
大したことはない・・・
もっと主張すれば、
どんどん領土を取れるぞ!
反論してきたら、
我がロシア軍が叩き潰してやる!
まあ、反論など
出来るはずがないがな・・・
その後、朝鮮半島・中国をめぐり、日本とロシアは衝突必至となります。
ところが、ロシアと日本では「格が違う」ほど国力が違いました。
ロシアは日本に対して、兵力・軍備は5倍〜10倍で資金力も豊富です。
項目 | 大日本帝国 | ロシア帝国 | ロシア/大日本帝国 |
人口(万人) | 4,600 | 12,000 | 2.6 |
現役兵力(万人) | 100 | 200 | 2.0 |
歳入(億円) | 2.5 | 20 | 8.0 |
火砲(門) | 636 | 2,260 | 3.6 |
艦船(トン) | 25 | 80 | 3.2 |
石油産出量(万バレル) | 200 | 44,500 | 222 |
ロシアに
勝てるはずがないだろう!
衝突必死ですが、ロシアとの戦争に反対の急先鋒は、政界最重鎮の伊藤博文。
だから、不満ながらも、
三国干渉を受け入れたのだ
ある意味、伊藤の意見は「正論」でした。
これに対して、児玉源太郎は反論します。
これから益々シベリア鉄道が複線化・強化される。
そして、極東地域にロシア軍がどんどん来るようになる。
そうなる前に戦うべき。
今なら勝てる可能性が、ほんの僅かでもある。
このタイミングを逃すと、
ロシアには絶対に勝てなくなる。
反対派の伊藤らに強硬に主張します。
だが、ロシアに
勝てるわけがないだろう・・・
と考える幹部・閣僚が多数いた日本政府。
ロシア側はロシア側で、日本側の「不穏な空気」を読んで牽制してきました。
この時期、東京に来ていたロシア政府の高官は、
我がRussiaとJapanが
戦うことになったら・・・
瞬く間に、我がRussia軍は、
Tokyoへ攻め込んでしまうだろう・・・
と言い放ったのです。
つまり、
弱小国のJapanの分際で、我が大国Russiaと
本気で戦うの?
Japanは、
滅亡してしまうかもよ。
と平然と恫喝してきたのでした。
こんなこと言われて、黙っていられるはずがありません。
「黙ってはいられない」ですが、
ロシアと
戦って勝てるのか?
だが、確かに、ロシアは
シベリア鉄道が複線化したら・・・
もっともっと
極東地域に軍隊を送ってくるだろう・・・
話し合いで
なんとかならぬか?
ロシアは、
「話し合い」が出来る相手ではない・・・
下手に戦争初めて負けるくらいなら、
ロシアの言うこと聞いた方が良いのでは・・・
侃侃諤諤、意見はまとまりません。
紆余曲折を経て、日本政府はついに、
ロシアとの
開戦やむなし!
と決断するに至ります。
その直後、伊藤博文は明治天皇に呼び出されます。
次回は上記リンクです。