前回は「記述問題への姿勢〜解答例への姿勢と個性・記述問題で問われていること・「自ら答えを作る」姿勢・気づいたことを書く〜」の話でした。
記述問題を出題する社会の先生の考え方:教育理念と指向性
今回は、僕がいた頃の武蔵中の社会の先生の授業スタイルの話をご紹介します。
そこから、記述式問題を出す学校の教育理念の理解・記述式問題への考え方の話です。
麻布中学など、記述式の問題がある学校を志望する方にも、参考になるでしょう。
今回ご紹介するのは、僕が中学校3年生の時の社会科O先生の授業です。
現在、O先生は有名私立大学の教授として、歴史を研究・学生を指導しています。
今も武蔵中には、O先生のような方がいらっしゃると思います。
特殊な武蔵中学の授業の中でも、「際立って特殊」なO先生の授業内容。
この授業内容から、「記述問題を出題する社会の先生の考え方」をご紹介します。
そして、記述問題を出題する学校に共通する「教育理念と指向性」を考えてみましょう。
どうやったら、
もっと点数が上がるんだろう・・・
もう少し、
偏差値を上げたい・・・
「答えを求める」「良い点数を求める」姿勢に、どうしてもなってしまう受験生たち。
それは当然のことで試験を受けた結果、成績が「点数・偏差値」という「数字」に置き換わるからです。
記述問題も、試験である以上「点数が与えられる」ことになります。
記述問題の「点数の与え方」には、各学校の教育理念が大きく影響するでしょう。
歴史への独特な切り口:独自視点を大事にする姿勢
O先生の授業は、日本史でした。
小学生の頃から歴史好きな僕は、勿論とても好きだったです。
特殊なのは、その先生の「歴史への独特な切り口」でした。
歴史の授業は、大抵その先生が好きな時代が中心となります。
そして、基本的には
〜年に〜が
起こって・・・
時系列に出来事がまとめられて、
〜年に信長が、
〜して・・・
このように「いつ・誰が・何をした」と記述されるのが「普通の・一般的な歴史」です。
だいたいの場合が、「統治者側から見た視点」です。
O先生の授業の視点は、全然違いました。
O先生の視点は、「民衆から見た視点」だったのです。
つまり、「逆から見た歴史」とも言える視点でした。
室町時代頃から幕末頃までの歴史を、ずっと農民や商人など一般の人からの視点で考えた授業でした。
途中、織豊(しょくほう・織田・豊臣)時代もありますが、織田信長は出てきません。
織田家臣では、明智光秀も羽柴(豊臣)秀吉も登場しません。
民衆たちは結束して、
一揆を考えて・・・
豊臣政権樹立後に肥後に入国し、強烈な一揆に悩まされた佐々成政(少し専門的です)だけ出てきました。
筆者が、なぜ「佐々成政が登場した」のを覚えているのか、というと、
歴史が好きで結構詳しかった筆者は、中学生ながら授業を聞きながら、
あれっ、
信長とか秀吉は?
こう思って、「自分が知らない人・ことばかり」の歴史に驚きを持ちました。
肥後では、
検地に反対した地元の人々が一揆を起こし・・・
肥後国主として、肥後に入ったばかりの
佐々成政は、一揆の鎮圧に非常に苦戦した・・・
このような流れで「知っている人物」が登場したので、
あっ、佐々成政だ。
やっと知っている名前が出てきた・・・
こう思ったことを明確に覚えているからです。
「民衆の歴史」を、古文で書かれた昔の資料を読み解きながら、授業は進みました。
この時は、〜の民衆たちが
集まって、一揆が起きて・・・
普通の戦国期・織豊期の歴史は、
桶狭間の戦いが起こって、
姉川の戦いが・・・
このような、「桶狭間」も「姉川」も「本能寺」も登場しません。
独自視点を大事にする姿勢であり、「歴史に対する異質な視点」でした。
自分なりの独自の考え方:個性を出すチャンス
民衆やキリシタンの一揆の話で始まり、一揆の話で終わったO先生の歴史の授業。
僕はこの授業は、とても好きで、大きな影響を受けています。
もちろん、O先生のあだ名は「一揆」でした。
今度の「一揆」のテストって、
どこが出るかな?
〜のあたりが
出るかもね。
このような話に同級生とはなります。
O先生が授業の最後に言った言葉は、今でも覚えています。
僕が一年間、歴史をみんなに
教えてきて、みんなに知って欲しかったこと・・・
それは、「民衆にも歴史がある」という
ことなのだ!
この視点は、中学三年生の僕には、強烈に新鮮でした。
僕は歴史に関する話を、独自視点で「新歴史紀行」で書いています。
新歴史紀行(上記リンク)は「僕なりの視点」で歴史を描いており、O先生の大きな影響があります。
「様々な答えが考えられる」タイプの記述式試験。
思ったことを遠慮なく、
この問題に対して、僕は
こう思います!
こう明確に主張しましょう。
その「独自の考え方」を武蔵中学・麻布中学などの採点者は待っているのです。
「様々な答えが考えられる」記述試験は「紙の上の面接」です。
「ある程度答えが絞られる」問題に対して、「ある程度自由度がある」問題では、
この問題に対しては、
こう考えることが出来るかな・・・
合っているか分からないけど、
書いてみよう!
「自分の考え」をしっかりと答案に書きましょう。
多少でも自由度が高い記述問題は、志願者の方の「個性を出すチャンス」です。
その姿勢が合格に大きく近くでしょう。
次回は下記リンクです。