記述問題を考えるポイント〜絵・写真などを「理科実験のように」観察・「切り口」を習得・大体の方向性を大事に・模範解答例は一例・鹿鳴館の実態〜|衣類と社会2・麻布中・過去問・中学受験・社会

前回は「記述問題の攻略法〜文章を楽しく読む姿勢・「一石三鳥」の学び方・歴史的背景を考える・「自分の考え」を文章で自由に表現〜」の話でした。

目次

絵・写真などを「理科実験のように」観察:「切り口」を習得

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麻布中学校の2020年社会の問題です。

衣類をテーマに日本の歴史や文化の話が壮大に、そして簡潔に展開されています。

記述問題攻略法

・出題された文章を「こういう視点もあるんだ」と楽しく読む

・自分の歴史・地理などの勉強の「一つのまとめ」として学ぶ

当時の写真も掲載されていて、「衣類」を切り口に歴史を考える姿勢が興味深いです。

歴史は基本的に、

歴史の教員A

〜年に〜が
起こって・・・

あるいは、

歴史の教員A

〜年に徳川家康が、
〜して・・・

このように「出来事が並ぶ」のが「普通の・一般的な歴史」です。

だいたいの場合が「統治者側・歴史の主人公から見た視点」です。

歴史に対して「一つの切り口」で横断的に考えることは、非常に興味深い姿勢です。

記述問題のポイント

・文章から「一つの切り口」を学ぶ

・その「一つの切り口」を習得して、自分の中でまとめに役立てる

こういう「一つの切り口」の文章は「ただ解く」だけでなく、ぜひ習得してまとめに役立てましょう。

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上の問5を考えてみましょう。

歴史の問題で風刺画は、よく取り上げられます。

風刺画は文字通り「社会風刺」なので、問題を作りやすいのがポイントです。

外務卿 井上馨(Wikipedia)

明治維新政府の外務卿をつとめた井上馨。

英国・米国などと結んでいる不平等条約改正のために、日本が諸外国と伍するように考えました。

そのために単純な発想として、

井上馨

西洋と
伍するためには・・・

井上馨

西洋と
同じになれば良い!

こう考えて、明治新政府は急速な欧化政策をとりました。

そして、鹿鳴館を建築して連日のように外国人を招き、舞踏会を開いたのでした。

鹿鳴館(Wikipedia)

この風刺画はフランス人画家ビゴーが描いた絵です。

洋服を着飾った男性・女性が描かれていますが「風刺」である以上、なにか皮肉っているのです。

問題文の「風刺したものです」という言葉には注意しましょう。

このように「絵や図がある」問題は、問題文をさっと読んで絵や図に向かってしまうことが多いです。

問題文にはヒントがあるので、必ずじっくり読みましょう。

記述問題の問題文

・問題のヒントが隠されている

・「風刺した」など特徴的な言葉は「◯で囲む」や「下線を引く」で強く意識

こういう絵を見るときは、じっと観察してみましょう。

男子小学生

じっと、
見れば良いの・・・

社会の問題ですが、理科の問題を解いている気持ちになってみるのも良いかもしれません。

女子小学生

観察って、
理科の実験みたいな感じ?

「理科実験みたい」に、じっと観察してみましょう。

記述問題の絵や図に関する問題

・理科実験のように、じっと観察

・「何らかの特徴」や「何かが変」に気づくように眺める

よく観察すると、左の絵の鏡に猿が描かれています。

男性と女性が鏡を見て、写っているのが猿です。

鏡は「本来の姿を映し出す」という考え方もあります。

つまり、「猿真似だ」と言いたいのです。

ビゴー

Japanse(日本人)が洋服着ようと
踊ろうと、猿真似だわ!

このように、ビゴーは言っているのです。

これが最も大事なポイントです。

大体の方向性を大事に:模範解答例は一例

風刺のポイント

・外面ばかり西洋化しても、内面は猿のような人物であること

・外面と内面が乖離していること

ここからは、いくつかの解答例が思い浮かびます。

これらをもとに、自分なりに書いてみましょう。

ポイントが合っていれば、自分なりの文章で良いので、あまり模範解答例に合わせなくても良いです。

記述式問題の参考書や過去問の模範解答は「あくまで一例」です。

大体の方向性が合っていれば、

採点者

ちょっと文章が拙いけど、
言いたいことは分かるから○!

採点者は理解してくれて、○になるでしょう。

麻布は解答欄に罫線がひかれているので、「簡潔に書くこと」が求められています。

ですから、上記の「鏡に映った猿」は書かなくても良いでしょう。

武蔵中を受験する方は、このような「観察した結果わかること」は必ず書きましょう。

後半の「内面と外面が乖離」が書いてなくても、「鏡に映った猿」が書いてあるだけでも、

採点者

よく観察していて、
大事なことはわかっているね!

ある程度の点が入ります。

他の学校でも、このように「何か観察したこと」に対して点数が入るでしょう。

「内面と外面が乖離」という最も大事なポイントが書いてあり、「鏡に映った猿」が書かれていない場合、

採点者

この大事な
ポイントに気づいて欲しい・・・

武蔵中は観察力が重視される傾向があり、減点となる可能性があります。

そもそも、明治維新の時の日本人の「急速な欧化」は、

英国人B

おいおい、Japanese(日本人)は
どうしちゃったの?

周りの外国人が驚くほど「過去の日本の風土を捨て去る」姿勢が強かったのです。

この頃の「急速な欧化=単なる猿真似」であることは、歴史の事実として有名です。

そのため、「欧米が馬鹿にしている」のは知識として知っている方が多いのです。

この問題では「鏡の中の猿」は非常に大事なポイントで、こういうことに気づくようにしましょう。

志望校によりますが、ポイントを自分なりに整理したら、自分なりの考えをはっきり書きましょう。

仮に、上記のようなポイントに気づかなかったとします。

試験当日、限られた時間内で

男子小学生

これは
分からない・・・

「分からない」でも記述式であれば、自分なりに書いてみることが大事です。

「自国の文化・衣類(和服)をいとも簡単に捨て去る軽薄なこと」という視点も良いでしょう。

これらの解答に対して、どのような点をつけるかは学校によります。

学校の方向性を把握しながら、自分なりに・堂々と記述は書いてみましょう。

下記の例が、模範解答となります。

模範解答例(一例)

・外面ばかり西洋化しても、内面は猿のようで猿真似に過ぎないこと

・洋服を着飾っていようと、外面と内面が乖離していて猿のように見苦しいこと

・自国の文化の大事な和服を、いとも簡単に捨て去るのは軽薄で猿同然ということ

・鏡に猿が映っているように、日本人の「表面的で急速な欧化」を猿同然と考えていること

鹿鳴館の実態:汚職まみれの井上馨

松下村塾卒業生:左上から時計回りに高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、前原一誠(国立国会図書館、Wikipedia)

幕末から爆発し続けていたため、優れた人物が幕末〜維新初期に次々亡くなった長州藩。

松下村塾の双璧であった久坂玄瑞・高杉晋作は維新を見ることなく、亡くなってしまいました。

明治新政府 参議 木戸孝允(国立国会図書館)
木戸孝允

久坂も高杉も
早くに死んでしまった・・・

木戸孝允・前原一誠など優れた人物も残りましたが、人が亡くなり過ぎて「人材不足」だった長州藩。

伊藤博文とも仲良しの井上馨(志道聞多、しじもんた)は頭が良い人物でしたが、大問題がありました。

鹿鳴館を推進した外務卿 井上馨は当時「汚職まみれ」で有名でした。

木戸孝允

井上は調子に乗りすぎだが、
大事な「長州軍団」の一人・・・

当時、三井財閥と手を結んで、政府のお金を横流ししてやりたい放題やりました。

幕末維新の嵐の中、長州藩内部の闘争で襲撃されて、「本当に死にかけた」井上。

井上馨

俺は、瀕死の重傷を
負って死にかけたんだ・・・

井上馨

命をかけて維新を成し遂げたんだから、
ちょっとぐらい良いだろう!

井上にとって「ちょっとぐらい」は、全然「ちょっと」ではありませんでした。

木戸孝允

これほどの汚職か・・・
あのバカ(井上)は、やりすぎだろう・・・

木戸孝允

これでは
井上は終わりだ・・・

木戸孝允

だが、
この私が井上を守ろう・・・

長州軍団総帥の木戸が動き、井上は失脚を免れました。

木戸孝允

我が長州人が
新政府で活躍せねば・・・

木戸孝允

私はあの世で
久坂や高杉と合わせる顔がない・・・

現代なら「一発でアウト」なのですが、長州閥の力で乗り切りました。

井上馨

なんとか、
乗り切ったぜ!

参議 西郷隆盛(Wikipedia)
西郷隆盛

やあ、
「三井の番頭」さん・・・

「番頭」は組織の大幹部で、会社でいえば副社長・専務級の存在です。

つまり、「外務卿の井上は、民間会社の三井財閥の大幹部同然」ということです。

井上馨

なに?

西郷隆盛

井上さんは、
三井財閥の便宜ばかり図っていますが・・・

西郷隆盛

あなたは、
政府の人間ではなかったごわすか?

井上馨

おのれ・・・・・
この野郎!

井上馨

いくら西郷さんと言えども、
この侮辱は許せん!

西郷隆盛から公衆の面前で嫌味を言われた人物、それが井上馨でした。

二度も島流しになり、何度も死にかけた西郷の話を、上記リンクでご紹介しています。

西郷のような大人物から見れば、

西郷隆盛

お前のような小僧が、偉そうな顔をして
やりたい放題しているのは笑止千万!

井上は「小者の分際で、何様のつもりか」だったでしょう。

この西郷の言動から、井上が推進した鹿鳴館の当時の評判がイメージできるます。

次回は下記リンクです。

新教育紀行

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