前回は「チューリッヒ工科大学入学果たしたアインシュタイン〜バイオリンと美術が得意・「国籍捨てた」ドイツ語への不思議な姿勢〜」の話でした。

念願のチューリッヒ工科大学で大失望したアインシュタイン

上は、高校生だったアインシュタインのアーラウ州立学校の卒業成績表です。
代数・幾何学・画法幾何学・物理学・歴史で最高得点の6を確保し、かなりの優等生でした。

アインシュタインなんだから、
超優等生だったのは、当然だよね・・・



フランス語が3で、
地理とか4だから・・・



暗記分野は
苦手だったみたいだね・・・


そして、「二度目の受験」で世界最高峰ランクのチューリッヒ工科大学入学を果たしました。
1896年、アインシュタインが17歳の時でした。
当時の欧州の教育課程は不明点がありますが、おそらく「飛び級気味」で大学進学したと思われます。



ついに、念願の
チューリッヒ工科大学に入学だ!



高校までと違って、
大学だから、暗記の勉強はしなくて良いはず!
高度な専門課程であった大学は、現代と違って、当時は限られた人物が学ぶ機関でした。



州立大学での語学などの
暗記科目は苦痛だったけど・・・



このチューリッヒ工科大学では、
大好きな数学や物理ばかり学べる!
母国であったドイツのギムナジウムの「超スパルタ強制暗記教育」から脱出したアインシュタイン。
そして、イタリアに脱走して、ついでスイスで高校生活を過ごした彼にとって、



チューリッヒ工科大学で
学べることは、本当に嬉しい!
世界最高峰の大学で、数学や物理を学べることは悲願でありました。
ところが、大学に入学して間もなく、アインシュタイン青年は失望してしまいました。



なんだ、教授たちの
授業って、つまらなすぎる・・・



古い物理ばかりで、
こんなこと、僕は知っている・・・
すでに、数学と物理にかけては「大学ランク」の学びをしていたアインシュタインにとって、



こんな、くだらない学問を
するために、大学に入学したんじゃないのに・・・
チューリッヒ工科大学の授業は「低レベルでつまらない」ものでした。



つまなら過ぎるから、
授業には出ない・・・



はぁ〜・・・・・
つまらないな・・・
「夢を見ていた」アインシュタインは、一気に絶望してしまいました。
聡明なミレヴァ・マリッチとの運命の出会い:絶望の中の希望の華


失意のアインシュタイン青年は、運命的な出会いを果たしました。
アインシュタインと同じコースで「ただ一人の女子生徒」だったミレヴァ・マリッチです。



初めまして・・・
ミレヴァです。
可愛らしく、極めて聡明な女性だったミレヴァに対して、



なんて可愛らしくて、
聡明で、魅力的な女性なんだろう・・・
小さな頃から聡明で成績優秀だったミレヴァは、数学や物理が大得意でした。



こんなに数学や物理が
出来る女性に初めて会った・・・
アインシュタインにとって、「趣味に近い」存在だった数学と物理の話でミレヴァと盛り上がりました。
そして、ミレヴァと恋に落ちたアインシュタイン青年。
のちに、ミレヴァはアインシュタインの「最初の妻」となります。
アインシュタインとミレヴァが選択したコースは「数学の教員課程」で、6名しかいませんでした。
つまり、「6名のコース」のうち、「ただ一人の女性」だったのがミレヴァでした。
世界ランキング | 大学名 | 国名 | 女性の割合(%) |
1 | オックスフォード大 | 英国 | 49 |
2 | スタンフォード大 | 米国 | 47 |
3 | マサチューセッツ工科大 | 米国 | 41 |
4 | ハーバード大 | 米国 | 51 |
5 | ケンブリッジ大 | 英国 | 48 |
6 | プリンストン大 | 米国 | 47 |
10 | イエール大 | 米国 | 51 |
11 | チューリッヒ工科大 | スイス | 33 |
13 | シカゴ大 | 米国 | 47 |
15 | ジョンズ・ホプキンス大 | 米国 | 56 |
19 | シンガポール大 | シンガポール | 49 |
21 | トロント大 | カナダ | 56 |
29 | 東大 | 日本 | 20 |
30 | ミュンヘン大 | ドイツ | 37 |
35 | 香港大 | 香港(中国) | 55 |
37 | メルボルン大 | オーストラリア | 58 |
40 | パリ大 | フランス | 51 |
現代のチューリッヒ工科大学において、「理系に女性が多い」欧州でも33%しか女子生徒はいません。
同様に、トップ校であるマサチューセッツ工科大学も「女性は41%」です。
当時は、現代よりも「女性の進学が限定されていた」時代であったこともあります。
また、現代においても、理工系において、数学や物理コースの女性は「極めて少ない」傾向があります。
そのこともあり、「6名中、唯一の花(華)」だった、ミレヴァがいたことは、



ミレヴァが
同級生で良かった!
アインシュタインに限らず、他の4名の男子生徒にとっても「幸福なこと」だったでしょう。
科類 | 2024年女性の割合(%) | 2023年女性の割合(%) |
文科I類 | 28.4 | 30.5 |
文科II類 | 17.7 | 20.4 |
文科III類 | 38.2 | 40.6 |
理科I類 | 8.4 | 8.3 |
理科II類 | 20.1 | 27.1 |
理科III類 | 21.4 | 24.7 |
全体 | 20.2 | 22.3 |
東京大学の理工系である理科I類の女子の割合は、近年8%程度です。
「8%」と割合ではピンとこないかもしれませんが、「同級生50名中、女子は4名のみ」です。
東京大学の「理系の女子が異常に少ない」話を、上記リンクでご紹介しています。
アインシュタインの数学コースは、ミレヴァのみの「1/6=約17%」であり、理Iはその半分です。



ねえ、ミレヴァ、
物理のここ、どう思う?



そうねえ・・・
私は〜と思うけど・・・
「つまらな過ぎる」授業に対して、絶望の中にあったアインシュタインにとって、



本当に授業は、
つまらないけど・・・



教授の人たちは、
実に低レベルな授業ばかりだけど・・・



ミレヴァと話せるなら、
大学に行く気になる!
ミレヴァの存在は、「希望の華」でした。
もし、アインシュタインが選択した「数学コース」に「ミレヴァがいなかったら」としたら。
この場合、「同級生は全員男子」となり、



なぜ、全員男子で
女子がいないんだろう・・・



授業はつまらないし、
男子ばかりだし・・・
ひょっとしたら、アインシュタインはギムナジウム同様、



もういいや!
もう一回受験して、別の大学に行こう!
チューリッヒ工科大学から、「同じように脱走していた」かもしれません。
この点で「アインシュタインが卒業生」となった、チューリッヒ工科大学にとっても幸運でした。



時間の無駄だから、
授業には出ない・・・
授業には、ほとんど出なくなったアインシュタインは、本を読んで独学しました。



授業は出ないけど、
ミレヴァがいるから、大学には行く!
そして、「物理への未来」と「希望の華」を両手にアインシュタインは学び続けました。