前回は「偏差値と小学校低学年の教育〜低年齢化する中学受験の通塾開始学年・過熱化する中学受験界と小学生たち・小学校低学年の学びと本質的な学力・幅広い興味と好奇心〜」の話でした。
自分の「立ち位置」を数値化する「偏差値」
日本の中学受験から大学受験、及び受験業界に欠かせない存在となっているのが偏差値です。
例えば、中学受験において、ある中学校の情報を集めようと検索すると、
A中学の偏差値は
〜によると58です。
このように「偏差値のデータ」が真っ先に上がってくることが多いです。
とにかく、偏差値ばかりが話題になる傾向が強いのが、受験の世界です。
この偏差値のデータは、塾や調査機関によって多少異なります。
例えば、A中学とB中学の偏差値を調べると、ある塾では、
A中学の偏差値は63、
B中学の偏差値は60です。
このような評価であり、他の塾では、
A中学の偏差値は61、
B中学の偏差値は59です。
このような結果であることがあり、少し異なります。
この「偏差値が異なる」理由は、上記リンクでご紹介した通り「偏差値は調査母体による」からです。
また、調査機関によって、偏差値に対する考え方も多少異なることがあるでしょう。
このように「調査機関で数値が多少異なる」偏差値は、不思議なことに「上下関係は大体同じ」です。
ある塾・調査機関で、
A中学の偏差値は
B中学の偏差値より上です。
ならば、ほとんどの場合、他の機関でも、
A中学の偏差値は
B中学の偏差値より上です。
このように「偏差値の上下は一致する」ことが多いです。
・試験の難易度等によらず、ある集団(志望校等)における自分の立ち位置
・試験時点での、志望校に対する自分のレベル・合格可能性の出来るだけ客観的指標
偏差値の本来の意味は、「ある集団における自分の立ち位置を知る」ことです。
偏差値 | 上からの割合・立ち位置 |
65 | 6〜7% |
60 | 15〜16% |
55 | 30〜31% |
50 | 50% |
45 | 69〜70% |
厳密な数式で規定される偏差値において、偏差値に対して「自分の立ち位置」は厳密に決まります。
上の表では、「およその上からの割合・立ち位置」を示しました。
偏差値50は、上から「ちょうど、ピッタリ50%」となります。
倍率にもよりますが、ある志望校の受験集団において、偏差値60あれば「まず合格」となります。
今、僕の志望校集団における
偏差値は55だから、もう少し頑張らなければ・・・
「倍率3倍」程度であれば、試験当日偏差値「55+α」あれば合格です。
今、私の志望校における偏差値は60だから、
合格しそうだけどもっと頑張ろう・・・
このように、勉強の上で「自分がどのような位置にいるのか」は大事な情報になります。
その情報が「分かりやすい数値=偏差値」である時、それは「非常に強力な存在」になるかもしれません。
学校の序列化と受験生の偏差値
この「ある母体・集団における立ち位置」が拡張して、「受験界全体が母体」となると、
A中学の偏差値は61、
B中学の偏差値は59です。
このように「中学校全体が序列化」されます。
模試を受けると、受験生たちは偏差値によって序列化されます。
今回は頑張って
偏差値63だった!
さらに、偏差値によって「合格判定」が下されます。
あなたの偏差値は
63です。
あなたの第一志望校の偏差値は
65です。
よって、あなたの合格可能性は
60〜80%ほどです。
このように「合格可能性」や「合格判定」を頻繁に受けることになるのが受験生です。
そして、中学受験〜大学受験全てにおいて「偏差値抜きには語れない状況」となっています。
小学校低学年〜中学年の子どもには、この数字は「参考程度」にするのが良いと考えます。
偏差値が絶大な影響力を持つ中、
「偏差値を上げること」が
受験を制する鉄則!
このように「偏差値が大事」と語られることが多いです。
ところが、偏差値は「一つの指標」に過ぎない数字です。
場合によっては、「中学受験と高校受験の偏差値を比較」している記事も見受けます。
これは、「行きすぎた偏差値中心主義」であり、「誤った偏差値の解釈」と考えます。
中学受験しない小学生の中に、学校の勉強をしっかりやっている優秀な子どもがいます。
そういう子は、各学校に一人か二人はいると思います。
そういう子は高校受験〜大学受験の時に頑張って、成果を出すのでしょう。
「中学受験するかどうか」は、親や家庭の考え方に過ぎないと考えます。
「中学受験する」ことも「中学受験生」も特別視する必要はないと考えます。
中学受験が加熱化していることもあり、
中学受験のレベルは、
高校受験のレベルより高い。
このように「中学受験と高校受験を比較する」声もあります。
中には、
中学受験のある塾の模試の偏差値55は、
高校受験で評価すると偏差値+10で65くらいだ。
という声も聞きます。
こういう「中学受験と高校受験を比較する」声を聞くと、
高校受験生を
低く評価しすぎでは・・・
筆者は、このように思いました。
そもそも、小学生(中学受験生)と中学生(高校受験生)は「全く違う存在」です。
全然違う存在である小学生と中学生を「比較する」こと自体、根本的に無理があります。
そのため、筆者は「中学受験と高校受験を比較」は無意味と考えます。
合格を目指す姿勢:上げるのは偏差値ではなく学力
偏差値は、同一目標の「ある母集団」によって大きく変わるものです。
学習内容や学年が異なる場合で、比較することに「意味がない」のです。
受験生が塾の模試などを受けて、偏差値が出ている場合、良いならそれはそれで良いでしょう。
あっ、僕の今回の偏差値は、
第一志望校の偏差値を超えた!
良かった!
続けて頑張ろう!
ここで、「結果=偏差値が良くない時」が問題です。
私の第一志望校の偏差値は、
66なんだけど・・・
私の偏差値は
64だった・・・
あと2・・・
あと2増やさないと・・・
実際「偏差値=厳格な数値」を前に、受験生たちは大変です。
良くなければ、あまり気にしすぎない方がよいでしょう。
気にしなくて
いいの?
偏差値は母体によるので、「偏差値2〜3」の違いは気にする必要はありません。
それでも、「数字はどうしても気になる」でしょう。
それよりも、その試験・模試の復習に集中しましょう。
そして、一生懸命「出来なかった問題」をしっかりと理解して、
次、似た問題が出たら、
絶対できる!
このように「次は出来るようになる」気持ちが大事です。
合格判定やコメント等は、「参考程度にする」のが良いでしょう。
また、勉強して高い点数を目指す姿勢は大事ですが、「偏差値を上げること」が目的ではありません。
最終目的は「学力を上げて、志望校に合格すること」であることを念頭において頂きたいです。
学力をあげれば、偏差値も一緒に上がってくれます。
・学力を上げて、志望校に合格すること
・「偏差値を上げること」は特段考えない
・学力をあげれば、偏差値も自然と上昇してゆく
子どもが小学校4年生以下の親は、「偏差値という数字」に惑わされ過ぎない方が良いでしょう。
そして、幅広い興味を持ってもらうようにしましょう。
そうでないと、「偏差値という数字」ばかり追い求めるようになってしまう傾向が出てきます。
小学校5年からは「少し気にする」気持ちが良いでしょう。
そして、小学校6年からは「志望校合格への参考値」と考えて、
志望校の受験集団で、
偏差値58くらいを超えるようにしよう!
このように、偏差値・合格判定とは「うまく付き合う」のが良いでしょう。
まだ小学生の中学受験生。
中学受験生は「とにかく偏差値」ではなく、もう少し素直に勉強に向き合うと良いでしょう。
最近、理科が
結構好き・・・
あるいは、
なんだか、
歴史が楽しくなってきた!
このようになると、勉強が楽しくなり成績も上がり、好循環になってとても良いでしょう。
好きな科目ができることは、子ども・受験生本人の長期的な成長につながるでしょう。
そして中学受験・高校受験・大学受験においても、志望校に合格しやすいでしょう。
次回は下記リンクです。