前回は「失敗を楽しんで考える姿勢〜失敗が大発見につながること・中学3年から高校1年での学問の大きな変化・イメージすることを楽しむ物理と化学実験〜」の話でした。
郷中教育:青少年が切磋琢磨
西郷隆盛はじめとする、薩摩藩出身の維新の元勲たちの原動力となった郷中教育。
上の四名だけでも、強烈なパワーがあります。
しかも、上の四名は同じ下加治屋町という「同一町内」出身者です。
明治維新の最大の推進者であった西郷・大久保。
さらに、日露戦争での陸軍総司令官:大山巌、海軍総司令官:東郷平八郎が「同一町内出身」です。
「日清・日露戦争」と一括りにされることが多いですが、日清戦争と日露戦争では、全く異なります。
当時の日本(大日本帝国)における意味合いが、対清(中国)と対ロシアでは、次元が違いました。
「日本・日本人の運命が、かかった戦い」であった日露戦争。
明治維新から日露戦争まで、
この町出身者が主導したと言っても過言ではない・・・
少し極端な表現ですが、司馬遼太郎がこのように概括する気持ちも分かります。
この郷中教育が、「理想の教育像の一つ」であると思います。
郷中教育には、様々な良い面がありますが、特に以下の二つが大きな特徴です。
・6~14歳頃までの稚児と14~20歳頃までの二才が、一緒に切磋琢磨
・青少年たちが自治の体制で、学ぶ体制
なんと、6~20歳くらいまでの間の青少年が「一緒になって」過ごす環境だったのです。
郷中教育と現代教育:大きなお兄さんや小さな弟と触れる機会
これは、薩摩人にとっては「当然のこと」だったでしょうが、現代人には「考えられない」環境です。
当時と、現代では「年齢に対する概念」が異なるので、一概には比較できません。
平均寿命の違いも大きく、江戸時代と現代では、江戸時代の方が「年齢の進行が早い」でしょう。
同じ年齢で比較すると、「小学校一年生〜大学二年生までが一緒に学ぶ」環境です。
江戸時代の方が「年齢の進行が早い」ことを考慮すると、もう少し広がるかもしれません。
薩摩藩の風土の影響が大きいですが、薩摩藩出身者は「ドッシリ構えた」大将肌の人物が多いです。
対して、長州藩は、書生的人物が多く、「大将肌の人物」は高杉晋作等限られます。
木戸孝允も、西郷・大久保と比較すると、少し迫力不足であります。
これは、小さな頃から「大きな兄」と付き合い、「小さな弟」の面倒を見た経験が大きいでしょう。
対して、義務教育として小学校6年間・中学校3年間があります。
そして、それから高校3年間・・・と、分割されている現代の教育。
郷中教育のように、様々な学年の生徒が「触れ合う」機会は、学校という組織で可能です。
一方で、現実として「郷中教育のような教育」は不可能です。
小学校において、小学校4年生くらいから部活動で、お兄さん・お姉さんと触れる機会があります。
お互い気にしてしまい、あまり接しません。
更に、中学受験をする生徒にとっては、「小学校で他の学年の方との接点」は無理でしょう。
「そんな余裕がない」のが現実です。
そこで、中高一貫校です。
中学・高校での6年間の間に、「様々な学年の生徒と触れ合う機会」を持つのが最良です。
そして、その機会は「部活動」となります。
部活に入るメリットとデメリット:塾や勉強時間と人生経験
高校の後に、「様々な学年の方と触れ合う機会」は、大学のサークル・部活動があります。
大学になると、思春期で個性が固まってしまった後になります。
「上の学年の方から影響を受ける」度合いは小さくなります。
サークル・部活動以外には、特に理科系の研究室があります。
この研究室の上下関係も閉塞的な面もあり、良し悪しが分かれる面があります。
大学以降に「上の学年の方に私淑する」ことが起こり得ます。
一方で、それは「専門領域の考え方」などがメインで、個性に与える影響は限定的でしょう。
そして、大学以降は「個性等において、多大な影響を受ける環境にはない」と言えます。
最近の部活動は、「少し下向き傾向にある」と聞くことがあります。
それは、
大学受験を考えると、
部活動に入るより塾に行っていた方が良い。
と考える方もいらっしゃるようです。
中学・高校の先生方にとっても、授業においては学習指導要領等があります。
そして、「ある程度は定められたルール」の枠組があるでしょう。
対して、「部活動」こそは、「かなりの裁量権がある」と考えられます。
郷中教育のような「自治教育」とまで行かなくても、ある程度「生徒同士の自主活動」に委ねられます。
そのような機会のある、部活動には、是非とも入って欲しい。
すでに入部している方は、上のお兄さん・お姉さん、下の弟・妹との触れ合いをより楽しみましょう。
そして、今後の人生に活かして欲しい。
入部していない方は、僕が中高生の頃、中高では「帰宅部」と呼ばれていました。
その呼び方の是非はともかく、ぜひ、短い間でも入って欲しいと思います。
思春期の一年は、その後の数年に匹敵する可能性もあるからです。
次回は下記リンクです。