前回は「中学受験算数の記述のポイント〜「考える前提」は明確に・「問題の条件は全て使う」算数・「条件が不足」と感じた時〜」の話でした。
「図形と場合の数」複合問題の考え方とコツ:考える対象を絞る
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武蔵中学1987年の算数の「図形と場合の数」複合問題を考えてみましょう。
この問題は、答えだけならば「やや難問」で、「記述で満点を得る」姿勢ならば「難問」です。
考えられる
全てのABの長さを答えてください。
「全て答える」問題は、よく見かけますが、
それが全てである理由も
書いてください。
「答えが全てである」ことを、きちんと説明するには相応の学力が必要です。
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早速、考えてゆきましょう。
「方眼紙に描いている」ので、「全ての辺の長さは整数」が条件です。
まずは、条件を
しっかり描こう!
図形問題では、「与えられた長さ・角度」や「等しい長さ」などを、しっかり描くことが大事です。
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こういう算数の問題で「全て答えなさい」という場合は、大抵は「五種類くらいまで」が多いです。
面積が41cm2だから、
それほど、大きな長さにはならないはず・・・
「ある程度の長さまで」と予想して、ここで、上の正方形に着目すると、
ここに正方形があるから、
この部分の面積はすぐに計算できる・・・
もし、CD=7cmならば、赤い部分の正方形の面積が49cm2で、明らかに41cm2を超えます。
ここで、
ABは、最も
長くても6cmだな・・・
ABが6cmは
あり得るのかな・・・
ここで、CD=6cmの時を考えると、「全体が41cm2」なので微妙なところです。
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CD=6cmの時は、どうしても「面積は41cm2以上」なので、該当しません。
すると、ABは5cmが
最大だな・・・
これで、求める答えは、CD=1cm〜5cmの5通りが最大となりました。
このように、図形と場合の数の複合問題は、「考える対象を絞る」のが大事なポイントです。
図形の面積を「異なる視点」で考える:シンプルな図形へ
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ここから先は、実際に5通りで考えて計算してゆきましょう。
ABが1cmから5cmの
場合を順に考えよう・・・
少し歪な形状の図形なので、面積は長方形に分割して計算しましょう。
そして、BCとGHは「整数であること」以外は不明なので、未知数をおいて計算します。
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△と⬜︎として、「面積は41cm2」の条件を式にしました。
ちょっと複雑な
式になっちゃったけど・・・
ここからは、「△=1cmの時・・・」など考えて、△と⬜︎を求めることは可能です。
可能ですが、この計算をすると、場合分けが多くて計算が大変です。
「二つの掛け算を足して40」なので、少し複雑です。
ちょっと大変だけど、
頑張る!
このように「少し大変でも頑張る」姿勢も大事ですが、こういう時は「違う視点」を考えましょう。
「違う視点」って
どういうこと?
複雑な形状の面積を求めるので、ここでは「三つの長方形に分割」しました。
他の方法で
面積を計算できないかな・・・
ここで、面積を計算する他の方法を考えましょう。
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こういう時は、一度「原点に戻る」姿勢が大事です。
面積を「長方形に分割して計算」したことを「一度置いて、出直す」姿勢です。
ちょっと複雑な
形だから・・・
少し足して、形を
整えたら、どうかな・・・
右下に図形を足すと、綺麗な長方形ができます。
こっちの方が
考えやすそうじゃない?
ちょっと
計算してみようか・・・
足した部分は、正方形と長方形の二つの組み合わせで、比較的簡単に計算できそうです。
ここで、新たにできた右下は「Hの次」なので、Iと名付けましょう。
長方形ABIHの面積は、上のように計算できます。
そして、「長方形ABIHの面積=AB x AH」なので、ある程度絞れそうです。
こっちの方が、さっきよりも
シンプルになるね!
問題を解く際には、「出来るだけシンプルに」を心がけましょう。
そして、「出来るだけシンプルに」するためには、「図形はシンプルな方が良い」です。
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ここからは、「CD=1cmの時」から順に計算してゆきましょう。
「CD=1cmの時は、長方形ABIHの面積が52cm2」なので、辺の長さが絞れます。
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図形を見ながら、
長方形の横の長さは、
ある程度の長さだ・・・
このように「長さは、ある数値以上」と考えると一通りに絞れます。
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ここからは、順次「CD=2cm、3cm」と考えて、計算してゆきましょう。
この場合も、掛け算だから
辺の長さが絞れるね!
長方形ABIHの面積が52cm2や65cm2の場合は、辺の長さが限られました。
ところが、「辺の長さを掛けて80」は、いろいろ考えられますが、
ここでも、図形を
見ながら、辺の長さを絞ればいいね!
こういう時も「式ばかり見ないで、図形を見ながら考える」ようにしましょう。
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「CD=4cm」の場合は、「97という約数が1と97しかない(素数)」なので、答えはなしです。
いよいよ、考えられる最大の「CD=5cm」を考えてみましょう。
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ここで、「上限を考える」場合には、「元の図形に戻る」方が良いです。
元の図形で、長方形に分割して計算すると、
「CD=5cm」の場合も、
面積41cm2を超えるね!
これで、「CD=5cmは答えに該当しない」ことが分かりました。
ここから、「これ以上はない」ことを
ちゃんと書く必要があるね。
「CD=5cm」が該当しないから、
もっと大きくなったら・・・
面積はどんどん大きくなるから、
「条件に合わないのは明らか」だよね・・・
それじゃ、「5cmで条件の面積を超えて、
6cm以上になると、更に面積が大きくなるから、これだけ」かな?
直感的には、「5cm以上だと、面積が41cm2より大きくなるから、4cm以下」です。
このことを、「これだけの理由」として書いても、中学受験ならば概ねOKでしょう。
中学・高校数学では、もう少しきちんと述べる必要があります。
算数ならば、「面積は更に増えてゆくから、5cm以上はない」でも良いと考えます。
ここでは、もう少しきちんと「これだけの理由」を書くことを考えましょう。
「これ以上はない」理由=「最大や最小」を考える
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「CD=5cm以上が、ありえない」ならば、「CD=5cm以上の時」に条件に合わないことを示しましょう。
その為には、「CD=5cm以上で最小のCD=5cm」を考えます。
そして、他の「考えうる辺の長さ」は、全て1cmとしましょう。
全て「最小の時」だから、
これで考えて合わなければ良いね!
この「CD=5cm以上の時」で「最も図形が小さい時」でも、面積は41cm2を超えます。
そして、これは「明らか」ですが、「CD=5cm以上の時」は面積は必ず大きくなることを明記しましょう。
これで、「CD=5cm以上の時」は「全て適合しない」ことを、しっかり述べることが出来ました。
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これらのことをまとめて、答えは「CD=4cm、5cm、8cm」の三種類のみです。
上の解答例では、「CD=5cm以上の時はありえない」ことを細かく記載しました。
実際に、記述問題等で、
それが全てである理由も
書いてください。
このような問題であるときは、もう少し簡潔に書いても良いでしょう。
このように「面積と場合の数の複合問題」は、対象を絞り、シンプルに考える姿勢が大事です。
・ある程度、大きな・小さな状況を考えて、対象を絞る
・「異なる視点」で面積を考えて、図形の形や式をできるだけシンプルに
次回は上記リンクです。