前回は「女性も理学・工学の専門家を目指そう〜「普通」の大学環境目指して・京都大学「特色入試」で「女性枠」誕生・非常に少ない理学部工学部の女性・世界のトップ大学と異なる環境〜」の話でした。
世界トップ校における女性の割合
2026年度から開始する京都大学の大学入試における「女性枠」新設。
両学部あわせて
98人の定員に対して・・・
39人の「女子枠」を
設置します!
「女性でなければ出願できない枠」であり、明確な「性の差別」となります。
学部 | 1学年の人数 | 女性の割合 | 女性の人数 |
理学部 | 約350名 | 8.6% | 約30名 |
工学部 | 約1040名 | 9.8% | 約100名 |
とにかく低い京都大学の理学部・工学部における女性の割合。
「性の差別」など
考慮している状況ではない!
京都大学は「かなり思い切った」手段に打って出ました。
これまでに京都大学の広報部は一生懸命、
ぜひ、理科の得意な女性は
京都大学の理学部・工学部へ!
と宣伝してきましたが、「女性の割合が大きく増加」することはありませんでした。
もちろん、東京大学も同様な状況です。
東京大学の「男女共同参画室」は、
ぜひ、理科の得意な女性は
東京大学の理科系へ、特に理科I類へ!
と盛んに宣伝して、女性の割合は少しずつ増加していました。
この調子で、少しずつでいいから
女性を増やしてゆくんだ!
科類 | 2024年女性の割合(%) | 2023年女性の割合(%) |
文科I類 | 28.4 | 30.5 |
文科II類 | 17.7 | 20.4 |
文科III類 | 38.2 | 40.6 |
理科I類 | 8.4 | 8.3 |
理科II類 | 20.1 | 27.1 |
理科III類 | 21.4 | 24.7 |
全体 | 20.2 | 22.3 |
ところが、微増を続けていた女性の割合は、2024年に一気に2%ほどダウンしてしまいました。
「2%」というと小さく感じますが、「女性の割合」で考えると「10%ダウン」となり激減です。
圧倒的に女性が少ない理科I類では変わらず、一方で他の全科類で軒並み女性が減ってしまったのです。
この結果に「ショックを受けた」であろう東大。
せっかく増加を続けていたのに、
こんなに女性が減ってしまった・・・
こういう割合が増減するのは、当然「ありうること」ですが、
これは困った・・・
せっかく増えていたのに・・・
どうしたら女性の割合が増えて、
「普通の大学」になるのだろう・・・
東京大学が悩むのは当然であり、この「歪すぎる環境」が続くのは決して好ましいことではありません。
「男女半々」が普通の社会であり、「男性が少し多い」くらいならまだ許せます。
この意味では、文科III類の「40%ほどが女性」くらいがせいぜい及第点であり、他の科類は「全て異常」です。
世界トップ校の「健全度」:世界の大学の女性の割合
国内屈指の大学である東京大学・京都大学は、世界大学ランキングでも当然100以内に入ります。
年や調査機関にもよりますが、東京大学はおおむね30位、京都大学は50位ほどです。
日本のランキングでは偏差値ばかり出てきますが、海外ランキングは引用論文数などでランク付けされます。
そして、多くの場合で「男女比」もデータとして記載されていることが多いです。
そこで、”World University Ranking”のデータをもとに、世界のトップ大学の女性の割合を見てみましょう。
世界ランキング | 大学名 | 国名 | 女性の割合(%) |
1 | オックスフォード大 | 英国 | 49 |
2 | スタンフォード大 | 米国 | 47 |
3 | マサチューセッツ工科大 | 米国 | 41 |
4 | ハーバード大 | 米国 | 51 |
5 | ケンブリッジ大 | 英国 | 48 |
6 | プリンストン大 | 米国 | 47 |
10 | イエール大 | 米国 | 51 |
11 | チューリッヒ工科大 | スイス | 33 |
13 | シカゴ大 | 米国 | 47 |
15 | ジョンズ・ホプキンス大 | 米国 | 56 |
19 | シンガポール大 | シンガポール | 49 |
21 | トロント大 | カナダ | 56 |
29 | 東大 | 日本 | 20 |
30 | ミュンヘン大 | ドイツ | 37 |
35 | 香港大 | 香港(中国) | 55 |
37 | メルボルン大 | オーストラリア | 58 |
40 | パリ大 | フランス | 51 |
米国、英国ばかりが目立つ世界大学ランキングですが、出来るだけ様々な国の大学を選びました。
中国の大学もいくつかランクインしていますが、女性の割合が不明(香港大以外)なので、除外しています。
パッと見て、女性の割合は東大の20%が圧倒的に低いことに気づきます。
今度は、この「女性の割合」を具体的に評価してみましょう。
「女性が多い方が健全性が高い」と考え、「女性が50%が本来の姿」と考えます。
そこで、女性の割合を2倍して100点満点で各大学の「健全度」を評価してみましょう。
ここで、女性の割合が「50%を超える」のは「著しく良い」かどうかは状況にもよるので「最大100点」とします。
世界ランキング | 大学名 | 国名 | 健全度 |
1 | オックスフォード大 | 英国 | 98 |
2 | スタンフォード大 | 米国 | 94 |
3 | マサチューセッツ工科大 | 米国 | 82 |
4 | ハーバード大 | 米国 | 102→100 |
5 | ケンブリッジ大 | 英国 | 96 |
6 | プリンストン大 | 米国 | 94 |
10 | イエール大 | 米国 | 102→100 |
11 | チューリッヒ工科大 | スイス | 66 |
13 | シカゴ大 | 米国 | 94 |
15 | ジョンズ・ホプキンス大 | 米国 | 114→100 |
19 | シンガポール大 | シンガポール | 98 |
21 | トロント大 | カナダ | 112→100 |
29 | 東大 | 日本 | 40 |
30 | ミュンヘン大 | ドイツ | 74 |
35 | 香港大 | 香港(中国) | 110→100 |
37 | メルボルン大 | オーストラリア | 116→100 |
40 | パリ大 | フランス | 102→100 |
女性の割合を「健全度」として評価すると、上記の世界トップ大学では「東大のみ赤点」となります。
上のトップ校において、健全度の平均点は90.4点です。
つまり、東大は「平均90点のテストで40点」であり、「超劣等生」という評価になります。
世界の視点から見ると、いかに東大や京大の状況が「異常極まりない状況」である事がよく分かります。
東京大学の「健全度」偏差値:衝撃の理科I類の偏差値
これだけでも、東大の環境の歪さは十分分かりますが、異なる視点で考えてみましょう。
日本の受験界とは「切っても切れない存在」の偏差値を考えてみます。
筆者は「偏差値は母体次第であり、曖昧な数字」と考えています。
上記の「健全度」のコンセプトの偏差値を考えるときは、母体を広く取るべきかもしれません。
今回は、上記のトップ校のみを母体と考えて、暫定的に偏差値を考えます。
エクセルで偏差値を出そうとすると「一気に計算」は出来ず、平均・標準偏差を別に計算します。
おそらく、エクセル発祥の地である米国では「偏差値はあまり使わない」のでしょう。
「平均90点のテスト」ということは、「非常に高い偏差値が出ない」ことを示唆しています。
世界ランキング | 大学名 | 国名 | 健全度の偏差値 |
1 | オックスフォード大 | 英国 | 55 |
2 | スタンフォード大 | 米国 | 52 |
3 | マサチューセッツ工科大 | 米国 | 45 |
4 | ハーバード大 | 米国 | 56 |
5 | ケンブリッジ大 | 英国 | 54 |
6 | プリンストン大 | 米国 | 52 |
10 | イエール大 | 米国 | 56 |
11 | チューリッヒ工科大 | スイス | 35 |
13 | シカゴ大 | 米国 | 52 |
15 | ジョンズ・ホプキンス大 | 米国 | 56 |
19 | シンガポール大 | シンガポール | 55 |
21 | トロント大 | カナダ | 56 |
29 | 東大 | 日本 | 18 |
30 | ミュンヘン大 | ドイツ | 40 |
35 | 香港大 | 香港(中国) | 56 |
37 | メルボルン大 | オーストラリア | 56 |
40 | パリ大 | フランス | 56 |
最高偏差値は56となり、多くの大学が偏差値50を超えています。
健全度ランキングで、偏差値50を下回るのは、トップ校17校のうち4校です。
マサチューセッツ工科大、チューリッヒ工科大、東大、ミュンヘン大の4つの大学が平均以下です。
マサチューセッツ工科大、チューリッヒ工科大など「工科大は女性が少ない」のは世界共通のようです。
ところが、東大は「工科大学ではない」のです。
それにも関わらず、東大の「健全度偏差値18」という事態。
この健全度を偏差値にしたら
東大は30下回るだろうな・・・
と思いながら計算してみましたが、まさか「20を下回る」とは思いもしませんでした。
東大の各科類も「小さな大学」と考えられますので、同様に「健全度」を算出してみましょう。
科類 | 2024年女性の割合(%) | 健全度 |
文科I類 | 28.4 | 57 |
文科II類 | 17.7 | 35 |
文科III類 | 38.2 | 76 |
理科I類 | 8.4 | 17 |
理科II類 | 20.1 | 40 |
理科III類 | 21.4 | 43 |
全体 | 20.2 | 40 |
健全度は上記同様に「女性の割合を2倍」して、少数以下を四捨五入しました。
これらの各科類を「世界と比較する」ことには、適切かどうかの議論がありそうです。
ここでは上記のトップ校のデータをもとに、東大の各科類の健全度の偏差値を計算してみましょう。
科類 | 健全度 | 偏差値 |
文科I類 | 57 | 29 |
文科II類 | 35 | 15 |
文科III類 | 76 | 41 |
理科I類 | 17 | 4 |
理科II類 | 40 | 18 |
理科III類 | 43 | 20 |
全体 | 40 | 18 |
衝撃の結果となりました。
理I出身の筆者としては、
世界と比較したら、
理Iは偏差値10くらいか・・・
こんな風に考えていましたが、結果は「理Iの偏差値=4」となりました。
「一桁の偏差値」は「数字としての意味」があるのかすら分からないほど「衝撃の低さ」です。
日本の科学技術の根幹を握っている存在の東大理I。
この「低レベル」を超えて「際立って歪すぎる異常な環境」を変えるには、女子中高生の意識が変わって欲しい。
私、数学とか大好きだけど、
女子だから理工系は変かな?
薬学部とか医学部なら
女性でも「変」じゃないけど・・・
理工系の女子って
敬遠されるのかな・・・
理工系の女子は「敬遠される存在」ではなく、とても貴重で「大事にされる存在」です。
もっともっと
女性を増やすのだ!
いかに東大・京大が「大学入試」の現場で奮闘しようと、大きくは変わらないでしょう。
東大も「女性枠」
つくるべきか?
東大は、こんなことも考えているかもしれません。
ぜひ、女子中高や共学中高の先生方は、
数学や物理が得意な子は
理工系目指してみようか!
と女子生徒に語りかけてしい。
理工系は現代世界の根幹だから、
とっても夢があるよ!
思春期の女子中高生に「夢を持つ」ことを伝えて欲しい。
私、数学大好きだから
理学部目指そうかな!
もっともっと理工系を目指す女子中高生が、どんどん増えて欲しいと切に願います。
資源が「少ない」というより「ない」と表現するのが適切な日本。
米国のように、石油でも天然ガスでも食べ物でもなんでも「うなるほどある」国とは全然違います。
1970〜80年代には科学技術で大躍進しましたが、それも昔の話です。
科学技術で世界と勝負するのが、「強国として生き残るための数少ない選択肢の一つ」の日本。
工学部に
行ってみようかな!
ぜひ、女子中高生の方々には、理工系に夢を持って勉強して進学して欲しいと思います。
数学や物理が得意な女子中高生は、ぜひ、東大理Iや京大理学部・工学部を目指してみましょう。