子どもの創造力を伸ばす教育〜「自ら学び自ら考える」学び・海軍兵学校教育の「自学自習」教育の大失敗〜|個性と能力と教育1

前回は「多様な子どもの個性と成績〜「飲み込みが悪かった」アインシュタイン・「鋭すぎる感受性」と本質を見抜く眼力・日本に対する慧眼〜」の話でした。

目次

子どもの創造力を伸ばす教育:「自ら学び自ら考える」学び

新教育紀行
空と雲(新教育紀行)

今回は、小学生から高校生までの教育に関する話です。

大学生以降は、学びは「自らの姿勢によるべき」と考えます。

本人の性格にもよりますが、高校生までは「比較的受け身の教育」です。

日本人A

日本の教育や受験は
ペーパーテストの比重が強すぎる!

日本人A

ペーパーテストで測る学力判断には
限界があるので、是正すべきだ!

日本の教育を考える時、どうしても受験の話を避けて通ることは出来ません。

日本と似た面がある国もありますが、日本では「受験界が教育界に与える影響」はかなり強いです。

この「ペーパー試験重視」に対して、日本政府や文科省も対策を練り続け、

文科省

大学受験の共通テストに
記述式を導入することを検討します・・・

大学受験生のほとんどが受験する「マーク式」の共通テスト。

筆者が大学受験生の頃は「センター試験」と呼ばれ、さらに昔は「共通一次試験」と呼ばれました。

いずれの名称にしても、「画一的な試験によって学力を測る」のが目的です。

筆者は、ペーパーテストは「記述式を重視するのが良い」と考えています。

文科省の「共通テストの一部を記述化」は「歓迎すべき改革」でしたが、

日本人B

共通テストは多数の採点者が
採点する・・・

日本人B

採点基準は統一化しなければ、
共通テストとして、問題があるのでは・・・

大勢の受験生が受ける共通テストでは、「採点基準の統一化」が重視されます。

そして、長年の検討の結果、

文科省

大学受験の共通テストに
記述式導入を断念します・・・

文科省は「共通テストの記述式導入を断念」を表明しました。

そもそも、「画一的な試験」である共通テストに「採点基準が変わりうる」記述導入は不可能です。

記述は、学校側・採点者の独自の判断によって、

採点者

この答えに対しては、
このくらいの点数かな・・・

「ある程度の裁量権がある」ことが大事です。

その「裁量権」において、学校側の校風やカラーが関係するのでしょう。

文科省

我が国の子どもたちの創造力を
伸ばす教育とは何か・・・

文科省は考え続けていますが、その答えの一つは「自ら学び自ら考える」学びです。

この「自ら学び自ら考える」は、筆者の出身である武蔵中学高校が最も重視する教育理念です。

文科省

「自ら学び自ら考える」ことを
奨励する教育とは?

ただし、この「自ら学び自ら考える」学び、「自ら学び自ら考える」教育は困難でもあります。

とても分かりやすい「自ら学び自ら考える」教育によって、

男子小学生

僕は、このことは
こう考えるんだけど・・・

女子小学生

私は、このテーマに関しては
調べたりして、こんな風に思うけど・・・

子どもたちが「自ら考える人物」に成長することは、日本に限らずどの国でも「大歓迎」なはずです。

特に「事実上、資源がない」日本にとっては、「創造力が高い」人物を育てたいです。

そのための一つの答えが、「自ら学び自ら考える」教育の重視です。

海軍兵学校教育の「自学自習」教育の大失敗

New Educational Voyage
左上から時計回りにハーバード大学、イエール大学、京都大学、東京大学(Wikipedia)

日本の教育界、特に中学高校の教育界においては、「大学進学実績」が極めて重い存在です。

本来ならば、「自ら学び自ら考える」教育で「大学進学実績も良い」のが望ましいです。

筆者が在学していた頃の武蔵中高が、当時はこの典型例であったため、大変な人気がありました。

ところが、「自ら学び自ら考える」教育で実績を上げることは極めて難しいのが実情です。

新教育紀行
左上から時計回りに、東條英機 総理大臣兼陸軍大臣、阿南惟幾 陸軍大臣、永野修身 軍令部総長、山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、Wikipedia)

今回は、旧日本海軍の将校育成機関であった海軍兵学校を例に考えてみましょう。

海軍兵学校の採用年齢は、当時「16歳〜19歳」だったため、高校〜大学相当になります。

旧日本海軍も当時の米海軍も、指揮官・将校は「ほぼ全員が海軍兵学校」卒業生でした。

山本五十六

私は海兵(かいへい・海軍兵学校)
32期を11位で卒業した!

優等生の雰囲気が強い山本五十六は、11位で卒業しました。

新教育紀行
海軍兵学校生徒館(現 海上自衛隊幹部候補生学校)(Wikipedia)

当時も東京大学など帝国大学がありましたが、海兵・陸士(りくし・陸軍士官学校)は東大と同等でした。

海兵も陸士が、帝国大学と根本的に異なるのは「軍人を目指す道」であることでした。

「国家のために生命を投げ出して、国家国民を守る」陸海軍人になるべきコースでした。

全く異なる分野なので一概に比較は難しいですが、海兵・陸士は東大より難しかった時期がありました。

そして、4年という短期間で「指揮官の候補生」を育成した海兵は「超スパルタ教育」でした。

新教育紀行
永野修身 海軍兵学校長(Wikipedia)
永野修身

こんな丸暗記中心の
スパルタ式ではダメだ!

海兵28期を次席(2位)卒業し、ハーバード大学にも留学した永野修身は、海軍兵学校長に就任しました。

かなりの優等生であった永野は、

永野修身

私は、海軍大臣・軍令部総長・連合艦隊司令長官
全てになったんだ!

「海軍三顕職」と言われる、海軍大臣・軍令部総長・連合艦隊司令長官の全てに就任しました。

永野修身

「海軍三顕職」全ては、
大日本帝国海軍で「唯一人」です!

リベラルな発想だった永野は、

永野修身

教育改革を
断行するぞ!

永野修身

私の権限で
全てを変える!

とにかく「膨大なことを丸暗記」しなければならなかった海兵の教育に対して、

永野修身

自学自習を中心とする
ダルトン(ドルトン)式を導入する!

兵学校長の職権で大改革を断行しました。

永野修身

積極性、創造性を重視して、
自主性を重んじる!

まさに「教育の王道」を突っ走るような教育を、「軍人教育機関」で断行した永野。

海軍省幹部A

ちょっと永野さん、
それは大改革すぎでは?

海軍省幹部A

少しずつ変えて
行けば良いのでは?

海軍省や軍令部(海軍司令部)から「かなりの反対」がありましたが、「我が道をゆく」永野は、

永野修身

うるさい!
黙っておれ!

政治力も高い永野は、周囲の反対を押し切り、うまく根回しをしながら改革を断行しました。

海軍兵学校生S

最近の海兵の教育は
ずいぶん変わったみたいだぞ・・・

海軍兵学校生T

永野さんが
ダルトン式っていう教育を導入したらしい・・・

当時、16歳から19歳が受験した海軍兵学校。

現代の高校生が受験するので、海兵の教育レベルは「大学相当」でした。

初々しい海軍兵学校の生徒たちは、「自学自習」で伸び伸び成長して、

海軍兵学校生S

自分で勉強して、
自ら調べよう!

「学力をメキメキ」アップさせる計画でした。

ところが、この「自学自習」は、事実上大失敗に終わりました。

教育においては「完全失敗」ということはなく、

海軍省幹部B

「自学自習」はリベラルな
雰囲気で、良い面もあった・・・

「評価する声もあった」のが実情です。

いずれにしても「概ね大失敗」となった、海兵の「自学自習」への方向転換。

次回は、その理由などを考えてみます。

新教育紀行

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