女性も理学・工学の専門家を目指そう〜「普通」の大学環境目指して・京都大学「特色入試」で「女性枠」誕生・非常に少ない理学部工学部の女性・世界のトップ大学と異なる環境〜|中高の学びと未来

前回は「女性も専門家目指す姿勢〜世界各国の女性の社会進出・世界と日本の大きなギャップ・尋常ならざる低レベル国家の日本・非常に低い東大の女子の割合・世界の名門大学との比較・具体的目標を中学高校で持つ大事さ〜」の話でした。

目次

京都大学「特色入試」で「女性枠」誕生

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京都大学(Wikipedia)

京都大学の入学試験で、大きな動きがありました。

2026年度入学試験の「特色入試」において、「女性枠」が新設されることが発表されました。

特色入試は、私立大学のAO入試と同様に「ペーパーテストによらない」試験方法です。

京都大学の特色入試

理学部:総合型選抜(調査書、学びの報告書、試験、面接など)

工学部:学校推薦型選抜(調査書、学びの設計書、活動実績報告書など)

いずれも、大学入学共通テストの成績は考慮されます。

理学部と工学部で、だいぶ選考方法が異なります。

両学部あわせて
98人の定員に対して・・・

39人の「女子枠」を
設置します!

98名の「特色入試募集枠」において、「女性でなければ応募できない」のが「女性募集枠」です。

「女性募集枠」と「一般募集枠」の併願は出来ませんが、女性でももちろん「一般募集枠」へ出願可能です。

このことから、「98名の募集枠で女性の合格者が40名〜50名ほど」が見込まれると考えられます。

学部1学年の人数女性の割合女性の人数
理学部約350名8.6%約30名
工学部約1040名9.8%約100名
京都大学理学部・工学部の学部(京都大学)

京都大学では理学部・工学部において、女性の割合が10%以下であり、概ね8〜10%です。

理学部・工学部の1学年約1390名において、女性の学生は約130名います。

この「少な過ぎる女性の学生」に対して、

京都大学は、理学部・工学部の
女性の学生を増やします!

と京都大学はハッキリと決定しました。

非常に少ない理学部工学部の女性:世界のトップ大学と異なる環境

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ハーバード大学(Wikipedia)

これは世界の大学と比較すると異常な事態で、ハーバード大学などは男女比は約半々です。

プリンストン大学、イエール大学など米国の著名な大学は、ほぼ全ての大学において同様です。

理学部・工学部は女性が多少少ないかもしれませんが、概ね30〜40%程度は女性と考えられます。

対して、日本のトップ校である東大・京大の理学部・工学部は、ずっと8〜10%程度でした。

そもそも、人間は男女「ほぼ半々」であることを考えると、女性が非常に少ないことは「異常」です。

これは非常に不健全な状況であり、東大や京大は懸命に広報を続けて、

女性の方も
理学部・工学部へ!

と盛んに宣伝していました。

ぜひ、女性の研究者や
専門家が育って欲しい!

そして、東大や京大などの特色入試においては、「やや女性の合格率が高い」状況にしていました。

ペーパー試験の一般入試と比較して、面接などの点数がある特色入試では点数にある程度自由度があります。

そのため、

女性の学生を増やすために、
多少女性の点数を上げて、合格者を増やそう・・・

と考えていたのが現実でしょう。

これは「男性の差別」につながる可能性があり、女性にとっても「逆差別」になりかねない状況です。

一方で、東京大学理科1類出身で「女性が極めて少ない環境」を実感している筆者は、

考え方によるけど、
これは良いのではないか・・・

と感じます。

おそらく、京都大学側としては、この「女性を少し有利にしていた特色入試」において、

多少は女性の学生が増えているが、
もっともっと増やして「普通」にしたい!

と考えて、一気に「女性枠設置」に踏み切ったのでしょう。

さらに「内情として女性に少し甘い点数づけをしている」ことは、試験としては問題があります。

そのため、

公然と「女性に甘い試験」をするよりも、
はっきり「女性有利」な試験の方が公平ではないか・・・

と考えるのは「筋が通っている」と考えます。

ここで、女性を一気に増やしたいと考えた京都大学は、

もはや「女性に有利」ではなく
「女性でなければ応募できない」が明確だ!

と考えたと思われ、「ある意味で合理的」とも言える発想です。

世界中で多様性が求められている中、「男性ばかり」の環境が異常であることは一目瞭然です。

実際「女性枠」という「男性は応募できない枠」を設置することに対して、

「女性枠」設置は
リスクもある・・・

だが、それによるデメリットよりも、
女性が増えるメリットの方が大きい!

と京都大学は計算した上で、この「物議を醸し出す」女性枠設置を決定したと思われます。

女性も理学・工学の専門家を目指そう:「普通」の大学環境目指して

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シャボン玉(新教育紀行)

この「女性枠」によって、理学部・工学部に「どの程度の変化が発生するか」が大事です。

本来、一般入試でも特色入試でも「男女比は、ほぼ変わらない」はずです。

入試の試験内容によって、多少の性差はあるかもしれませんが、同様と考えて良いでしょう。

理学部と工学部では状況が異なりますが、まとめて考えます。

学部1学年の人数女性の人数女性の割合
現状約1390名約130名9.4%
京都大学理学部・工学部の学部(現状)
学部1学年の人数女性の人数女性の割合
一般入試約1290名約120名9.4%
特色入試98名50名51.0%
合計約1390名約170名12.2%
京都大学理学部・工学部の学部(2026年以降)

少子化のため、全体の合格者数を減らす可能性があるので、女性の割合は13%程度になりそうです。

現状と比較すると「女性の割合が約1.5倍」になる目算が立ちます。

この少し異例であり、世界の視線から見れば、

「女性枠」だって?!
なにそれ?

女性しか応募できないって、
おかしくない?

ですが、これくらい異例なことをしなければ「変わらない」と考えた京都大学。

そして「普通」の大学環境づくりを目指していますが、それでも「女性が10人に1人」程度です。

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宇宙飛行士 山崎直子(Wikipedia)

東大へ入学したときに、
女子が少ないことに驚いた・・・

1980年代末に東大に入学した山崎直子は、「女子が少な過ぎる」実態に驚きました。

「女子が少な過ぎる」状況に驚くのは、女子ばかりではありません。

男子は、

あれ?
ここは共学なの?

なんで・・・
なぜ、こんなに女の子が少ないの・・・

特に男子校出身者が大多数を占める東大・京大の入学者にとっては、

大学入ったら、
女の子がいて・・・

久しぶりの
共学で、楽しみだ!

と思ったら、「全然違う」状況であるのが、理学部・工学部です。

僕の出身である建築学科は東大・京大ともに「抜群に女性が多い」学科ですが、それでも20〜25%ほどです。

当時、大多数が大学院に進む東大・京大の理学部・工学部ですが、大学院では、

良いよな、
建築学科は楽しそうで・・・

うちの学科なんか、
女子は3人しかいないんだぜ・・・

という声が聞こえてきたこともあります。

現在は「少し状況が良くなった」程度で、大して変わらない状況です。

日本においては、女性の「理学・工学の専門家」は「ちょっと特殊」な雰囲気があるかもしれません。

この「日本ならではの視線」こそが異例であり、若い方々には世界目指して欲しい。

「女性の理学・工学の専門家」は、女性のみならず日本の未来がかかっています。

数学や物理・化学が好きな女性の中学生・高校生は、

地球環境の
研究者になってみたいな・・・

材料って
面白そう!

ぜひ、理学部・工学部目指してみましょう。

そして、日本の大学の理学部・工学部で女性が増えて、活性化することを切に願います。

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