前回は「暗記のおすすめ勉強法〜暗記は無理に覚えようとしない・歴史の流れを理解して暗記・歴史上の人物を自分で想像してイメージ・「なぜだろう?」の姿勢と効果的記述対策〜」の話でした。
「徳川けいき」とは誰か?:「高貴さが漂う存在」だった華族
今回は「徳川けいき」の話をご紹介します。
日本の歴史上存在した「徳川けいき」は、かなり有名な方ですが、ピンとくる方は少ないと思います。
徳川けいき?
聞いたことないけど・・・
徳川ってことは、
徳川幕府の将軍、御三家などの方かな・・・
けいきって、ケーキみたいだけど
関係ないのかな?
「けいき」という読み方の名前は、現代でもそれほど多くなさそうです。
そして、どことなく「高貴な香り」がする読み方です。
「徳川けいき」という読み方・音からは、「やんごとなき身分」の方のように感じられます。
「徳川」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、徳川家康です。
現代日本では、天皇を中心とする皇族は別格として、徳川家・島津家などの名家が残っています。
明治維新の際には、旧大名などが一斉に「華族」となり、特権階級となりました。
華族に連なる方々は、公爵・男爵・子爵などの名誉が与えられ、特別な存在となりました。
「華のある一族」を意味する「華族」は、その名称からして「高貴さが漂う存在」でした。
この「華族誕生」のきっかけは廃藩置県でした。
幕末当時、300ほどの藩が存在し、それぞれが「ある程度は独立国」のような存在でした。
徳川幕府が統括していましたが、欧州のような「絶対王権」とはほど遠い統治機構だった江戸時代。
その「300の国」が「一気に、一斉に消えた」のが廃藩置県でした。
世界が驚愕した「おとなしい大革命」廃藩置県
日本史において、廃藩置県は比較的あっさりと説明されます。
実は、廃藩置県こそが「明治維新最大の革命」でした。
文字通り「藩を廃し、県を設置」が廃藩置県であり、日本の国家像がガラリと変わりました。
なぜ、Japanでは、主君たちが
こんなにあっさり領土と領民を手放すのだ?
いくらEmeperor(天皇)の
権威が絶大とは言え、考えられないが・・・
同じことを、Europe(欧州)で
やろうとしたら、数年は大規模な内戦になるだろう・・・
欧州であれば「戦争が勃発するはず」だった「廃藩置県」は、比較的すんなり行きました。
この廃藩置県において、「旧藩主たちの反乱を防ぐ」ために、御親兵が編成されました。
反乱を起こす者が
出たら、この西郷が相手するごわす!
当時、日本で唯一人の陸軍大将(一時は元帥)であり「軍の頂点」であった西郷隆盛。
この「西郷隆盛と御親兵の睨み」によって、廃藩置県は「速やかに何事もなく進行した」のが通説です。
実態・実情は少し異なります。
実際、藩主たちの中には、
こんな馬鹿げたことを
すんなり認められるか!
おのれ・・・
周囲の藩と共に反乱起こすか・・・
こう具体的に「反乱を起こすこと」を考えた方もいたはずでした。
そこで、明治新政府は、
藩主・大名だったみなさんには、
華族という特権階級をご用意しています!
と、かなりの身分と相応の収入が約束されている「特権階級・華族」を作りました。
この「アメ」こそが、廃藩置県が「穏便に成功した」最大の秘密でした。
華族か・・・
まあ、藩主の時も借金だらけで大変だったが・・・
華族とやらになって、
楽しく、ゆっくり暮らすのも悪くなさそうだな・・・
この「華族」という「アメ」と、御親兵という「ムチ」を用意した明治政府の政策は際立っていました。
我らは、徳川将軍の家臣ではなく、
天皇陛下の臣民となったのだ・・・
日本の歴史上、征夷大将軍や絶対的権力者が存在しても、常に「天皇(陛下)は上」でした。
「徳川家に従ってきた存在」から「雲の上の天皇直属の民」であり、その中で別格の華族。
新たな時代となり、明治天皇の
臣下の中の別格の華族なら、まあいいか・・・
そして、ほぼ全ての旧藩主・大名たちは、
まあ、確かに、
特別な立場であれば、良いだろう・・・
と考え、「まあ、いいか」と誰も反乱を起こさず「おとなしい大革命」廃藩置県は進行しました。
そして、華族は1947年の日本国憲法施行まで続きました。
憲法に関する話を、上記リンクでご紹介しています。
「徳川けいき」さんは、明治〜昭和に存在した「華族の方のような雰囲気」を名前から感じます。
「教科書通り」ではない歴史の側面を楽しむ姿勢
実は「徳川けいき」は、徳川慶喜です。
え?なんで?
確かに「けいき」とも読めるけど、違うでしょ!
徳川慶喜の読み方は、
「よしのぶ」でしょ!
確かに、一般的には徳川慶喜は「とくがわよしのぶ」と習います。
一方で、徳川慶喜は確かに「徳川けいき」と呼ばれ、自らも、
余は
徳川けいき、なのだ!
こう名乗っていたこともあります。
私たちの世代は、徳川慶喜を
「徳川けいき」と呼ぶことが多いですね・・・
司馬遼太郎もまた「徳川けいき」の呼び方に「なんとなく共感」を持っていたようです。
でもさ、テストで「徳川よしのぶ」と
答えたら◯の問題で、「徳川けいき」でいいの?
「徳川けいき」って答えたら、
×になりそうだけど・・・
テスト・入試において、「徳川慶喜」と答えるべき問題があると思われます。
この「慶喜」という漢字は、それほど難しくありませんが「パッと書けるか」と言われると、
「徳川慶喜」って
ちゃんと書けるかな?
という方も多いでしょう。
「漢字で答えなさい」という問題ならば、「徳川慶喜」が正しい答えです。
「漢字で」という規定がなければ、「徳川よしのぶ」と答える方もいるはずです。
ここで、「徳川けいき」という回答に対して、「採点者がどのように対応するか」は分かれそうです。
「歴史学」の面から考えれば「徳川けいき」は◯であり、
「徳川けいき」と慶喜自身が
名乗っていることも知っているのかな?
色々なことを
知っていて、とても良い!
このように「むしろ評価されて然るべき」と考えます。
このように人物の読み方は「教科書通り」ではないこともあり、歴史には様々な側面があります。
「歴史の側面」を楽しむ姿勢を持つと歴史に興味が出て、自然と暗記も増えるでしょう。
次回は上記リンクです。