前回は「日本の国土を考える問題・記述・自分の意見〜島国日本の周辺国の正式名称・文章内に理由のヒントを探す・日本の島々の面積・大きな面積を持つ北方の島〜」の話でした。
日本の国土と諸外国との関係・記述と自分の意見
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島国と言われる我が国・日本は、多数の島から成り立っています。
島から成り立っている日本は、海に囲まれている環境です。昔から、日本と諸外国は海を隔てて関係を築いてきました。
現代において、海を隔てた向こうの様々な外国には太平洋の向こうにアメリカ合衆国やカナダなどの国があり、比較的近くのアジア圏にも多数の国々があります。(地図1)
日本の島の数は、近年まで1987年に海上保安庁が発表していた6,852島でしたが、2023年に大きく増加し、14,125島と倍以上に増加しました。
国土交通省は「地図に描画された陸地のうち自然に形成されたと判断した周囲長0.1km以上の陸地」を島と考えています。
下記の問いに答えて下さい。
(1)地図1のA,B,C,Dの国の正式名称を漢字で答えて下さい。
(2)島の数が倍以上になった理由を簡潔に説明してください。
この14,125もの島々には、人が住んでいない無人島も多数含まれます。
実際に、日本という国を形作る様々な島々を考えてみましょう。
日本の国土面積は、約37.8万平方キロメートルです。これらの島々には、外国と係争および係争の可能性がある島も含みます。
表1に、国内の大きな面積の島を1位から10位まで記載しました。
(3)表1のE,F,Gの島の名称を答えてください。難しい漢字の場合は、ひらがなで書いても良いです。
(4)日本の島々のうち、外国と係争および係争の可能性がある島、および相手方の国家名称を一組答えてください。
(5)上の(4)で答えた「係争および係争の可能性がある島」に関して、主権を主張する相手国に対して、どのような姿勢で臨むべきかを、知っていることやあなたの意見をもとに簡潔に答えてください。
日本周辺国との外交関係と領土
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A:中華人民共和国
B:朝鮮民主主義人民共和国
C:大韓民国
D:ロシア連邦
島国日本の面積は約37.8万平方キロメートルで、約38万平方キロメートルと覚えておきましょう。
日本の国土の面積は世界61位で大きくはありませんが、日本より国土面積が小さな国は沢山あります。
欧州諸国は日本より小さな国が多く、英国本土・オランダ・イタリア・スイスなどは日本より小さいです。
E:北海道
F:択捉島(えとろふ島もOK)
G:国後島
「北方領土」と呼ばれる択捉島・国後島の二つの島は、沖縄よりも大きな面積を持っています。
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それぞれの島の特徴があり、気候や風土の違いは大きいです。
面積を比較すると、「択捉島は沖縄島の2.5倍以上の面積」を持つことは知っておきましょう。
(4)に進んで、この問題は大きくは3組の答えがあります。
多くの方は、北方領土を挙げるでしょう。
・係争中(の可能性がある)島々:北方領土(択捉島・国後島・色丹島・歯舞諸島)
・相手国:ロシア連邦
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中国との関係で、尖閣諸島で度々衝突が起きていることをご存知の方もいるでしょう。
・係争中(の可能性がある)島々:尖閣諸島(魚釣島など)
・相手国:中華人民共和国
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少数派ですが、韓国との間で竹島領有権の問題があることをご存知の方もいるかも知れません。
・係争中(の可能性がある)島々:竹島(独島)
・相手国:大韓民国
領土と島に対する日本政府の姿勢:国境が全て海上にある日本
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世界各国が「領土問題を抱えている」と言っても良いのが実情です。
その中、日本は比較的大きな問題を抱え続けています。
それは戦前と戦後で日本という国家体制が大きく変わり、日本が一種の混乱期にあったことも理由です。
戦前と戦後で全く異なる憲法を規範とすることになった日本。
国家の名称は、大日本帝国から日本国に変わりました。
中国の国家体制・支配体制も戦後に大きく変わり、国民党から共産党に変わりました。
さらに、大日本帝国領であった朝鮮では戦後に朝鮮戦争が勃発して、国家が分裂しました。
朝鮮戦争によって、朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国が誕生し、未だに正式な終戦に至っていません。
現在、両国は「停戦」の状況です。
これらの「北東アジアにおける戦後の大混乱」が領土問題に拍車をかけています。
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朝鮮戦争勃発後に、韓国は突然、
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竹島は
韓国の領土だ!
こう言い出して、竹島を独島(ドクト・韓国語)と名付けて、実効支配しました。
それは今も続いており、一方的に灯台を建築して韓国の沿岸警備隊が常駐している状況です。
これは日本側としては、到底認められないことです。
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戦前、尖閣諸島には大勢の日本人が住んで、漁業などを営んでいました。
ところが、第二次世界大戦の大混乱期に住民たちは住めなくなって、引き上げました。
その後、日本人によって管理されていましたが、戦後に尖閣諸島周辺でガス田などが見つかると、
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尖閣諸島は
中華人民共和国のものだ!
中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めました。
日本国・日本人にとっては「国境が全て海上にある」ため、陸上続きの国境はありません。
そのため、「国境の境」を認識することが少ないことが、現実です。
対して、ロシア・中国・韓国などは「陸上の国境を持つ」国です。
こういう大問題に対して、いつも「棚上げ・先送り」が日本政府の路線です。
そして、日本人が「国境に対する認識が薄い」ことも根幹にあります。
(5)の「どのような姿勢で臨むべきかを、知っていることやあなたの意見をもとに」答えてみましょう。
竹島・尖閣諸島に関しては、「日本が領有権を主張する」のが比較的普通でしょう。
・尖閣諸島は戦前に日本人が居住しており、江戸時代から明治時代の時期から明確な日本固有の領土であることは明らかです。歴史的な証拠をもとに中国とは粘り強い交渉を続けるべきと考えます。
・尖閣諸島は昔から日本固有の領土でしたが、戦後になって中国が領有権を主張し始めました。ガス田や天然資源などの領有権もあり、中国との妥協点を探りながら交渉をするべきと考えます。
・竹島は戦前から日本固有の領土であることが確実であるのに、沿岸警備隊を派遣して実効支配している韓国の姿勢は問題があります。諸外国とも連携して、韓国と交渉すべきです。
基本的には「交渉をしっかりすべき」になりますが、「放棄すべき」も考え方の一つです。
・竹島は戦前から日本固有の領土であることが確実ですが、すでに韓国が沿岸警備隊を派遣し、灯台を築いて支配しているので、竹島は韓国に譲って代わりの権益を獲得すべく交渉すべきです。
この意見は「弱腰」かもしれませんが、考え方としては「一例」になります。
こういう「意見」で、書いてはいけないのは「異常な強行路線」です。
例えば、「戦争してでも取り戻すべき」のような強行路線を書くと、
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この志望者はちょっと
危険かな・・・
「危険な考えを持った人物」と考えられてしまい、入試では著しく不利になるでしょう。
そもそも、戦争は憲法で禁じられているので、日本は戦争ができません。
ただし、「防衛のみ」であれば自衛隊が出動できるので「領土の防衛」の認識なら武力行使が可能です。
「防衛のために武力を行使してでも」は「一つの意見」ではありますが、一線を超えています。
入試では、こういう「ある線を越えた主張」は書かない方が良いでしょう。
一方で「意見」に正解はありませんから「一線を超えない」範囲でしっかり答えるようにしましょう。
・「防衛のために武力を行使してでも」などの一線を超えた意見は書かない
・「正解はない」ので、自分の考えや意見を堂々としっかり書く
極めて複雑な北方領土
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北方領土に関しては、非常に多くの問題を含んでいて、本一冊以上になるほどです。
ここではごく簡単にご紹介しますが、そもそも江戸時代末期にロシアと折衝が始まりました。
日露和親条約・日露戦争などを経て、上のように樺太・千島列島の領土分布が変わりました。
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ところが、日ソ中立条約を締結していたのに、ソ連は連合国側と密約を結びました。
スターリンは、大日本帝国(日本)との「日ソ不可侵条約」を一方的に破棄し、
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Japanに攻め込んでも良いのだが、
条件がある・・・
日本に参戦する条件を出します。
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我がソビエト連邦は、
対日参戦にあたり、千島列島を頂きたい・・・
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あまりソビエトの力が
強くなるのは望まないが・・・
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まあ、Japanの
領土だからいいか・・・
このロシアと米英の密約を持って、ソ連は終戦末期の1945年8月8日に、
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日ソ不可侵条約
破棄!
一方的に日本に攻め込んできて、日本軍と民間人を大殺戮して、領土を奪ってゆきました。
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樺太は返してもらう!
ついでに千島列島ももらう!
このように、日本は敗戦の大混乱期に択捉島などの千島列島を一気に失いました。
その後、サンフランシスコ平和条約で日本は「千島列島の権利」を放棄しました。
サンフランシスコ平和条約は、ソ連・ロシアは批准していないので「無関係」です。
ところが、この「千島列島とはどこからどこまでを指すか?」が問題にもなっています。
このように複雑極まりない北方領土問題は「解決の糸口」すら見つかっていません。
・戦前まで日本固有の領土であることが明らかである択捉島・国後島・色丹島・歯舞諸島(北方領土)はロシアが実効支配しているが、日本は全島引き渡し(返還)に向けて、粘り強い外交努力を行うべきです。
・戦前まで日本固有の領土であることであった択捉島・国後島・色丹島・歯舞諸島(北方領土)はロシアが実効支配が長く続いており、諸外国と提携して一部だけでも返還を求めて折衝を続けるべきです。
上記のような「意見」が一例となるでしょう。
次回は上記リンクです。