前回は「年号並び替えの問題 2〜版籍奉還から廃藩置県の流れ・「丸暗記」「語呂合わせ」より流れを理解・圧倒的な薩摩・歴史の状況を「身近な例」でイメージ・明治維新の原動力:士族たちと西南戦争〜|中学受験・社会」の話でした。
年号並び替えの問題 1(再掲載):版籍奉還から廃藩置県の流れ
流れを理解して年号は「出来るだけ覚える」
前回は「年代順」の問題を、年号丸暗記ではなく「流れから考える」話をご紹介しました。
「年号丸暗記」で、歴史の問題を攻略しようとすると限界があります。
全部、年号
覚えるの?
語呂合わせで、ある程度
暗記したけど、どこまで覚えればいいの?
「年号丸暗記」では(1)は出来ますが、(2)のような問題が出ると、
版籍奉還って、
結局何だっけ・・・
具体的内容が分からないと、解けない問題もあります。
版籍奉還と廃藩置県は、全く違う出来事ですが、両方とも「は」から始まり「似た語感」があります。
志望校の出題傾向にもよりますが、「年代丸暗記」は、ほどほどにしましょう。
これも、あれも
覚えなきゃ!
「年代丸暗記」だと、
試験当日までに、
全部覚えられるのかな?
そもそも「全部」って、
どこまでなの?
「丸暗記」は、限界が見えません。
前回の廃刀令は大事なことですが、歴史の大きな流れからすると重要度はやや下がります。
そのため、廃刀令などの「やや重要度が低い」ことは、
廃刀令は知っている
けど・・・
あれ・・・
いつだっけ・・・
過去問や様々な問題集などをやっていて、
あっ!
この年号覚えてなかった!
この場合は出来るだけその年代を頭に入れつつ、しっかりと流れを理解しましょう。
・問題を解きながら、出来るだけ年号を頭に入れる
・出来事の具体的内容と前後関係を確認
流れを理解すれば、「年代順」の問題も「AとBの違いの説明」の問題も出来るようになります。
すると、歴史の問題は「ほぼ全部できるようになる」でしょう。
版籍奉還:江戸から明治へ
版:版図・領土。各藩・国が有する土地。
籍:戸籍・民衆。各藩・国内の領民。
「版籍奉還と廃藩置県の違い」に関して、まずはそれぞれを復習しましょう。
明治維新・御一新となり、新しい世の中を目指した木戸・大久保達。(上記リンク)
一気に藩を無くして、
新しい世へ!
「すぐに大改革」とは、なかなか行きませんでした。
上士出身の木戸ですが、藩主・大名たちとは「格が違う」のです。
さらに、薩摩下級藩士出身の西郷隆盛・大久保利通たち。
「失うものはない」西郷・大久保、そして「失うものは少し」の木戸たち。
それに対して、「藩をなくす」ことは「失うものが莫大であり、人生が変わってしまう」藩主たち。
藩をなくしたら、
私はどうなってしまうのだ?
大体、下級藩士だった連中が
何を偉そうにしているのだ?
現在の視点から考えると、江戸時代と明治時代では「全く違う」時代です。
江戸時代は、各藩の藩主が「王様のような存在」であり、「何でも命令できた」のでした。
軍事力・経済力を自在に操り、藩士たちの人事権どころか、生死まで決定する強権を有していた藩主。
新たに「天皇陛下中心の世界」になった
のは分かった・・・
それで、なぜ藩をなくす必要があるのだ?
そのまま、藩があっても良いだろう?
猛反発する藩主達もいたのです。
中でも反対の急先鋒であり、非常に厄介な人物がいました。
藩を
廃止だと?
何を
言っているんだ?
この
馬鹿者めが!
名君だった前藩主で兄の島津斉彬と比較して、軽く扱われがちな島津久光。
それは、「西郷隆盛との敵対関係・確執」によって、久光が「悪く評価されている」面が強いです。
ハッキリとした個性で薩摩藩をまとめてきた久光は、「名君かどうか」は評価が分かれます。
少なくとも「一定以上の優れた人物であった」ことは間違いないでしょう。
おい、
一蔵(大久保)!
子どもっぽいところもあるものの、一貫した姿勢で薩摩を率いたのが島津久光でした。
そして、島津久光の家臣だったのが西郷隆盛と大久保利通(かつては一蔵)でした。
はっ・・・
お前は薩摩藩の、私の
家臣だろう!
・・・・・
幕末の「つい最近」までは、
久光様!
私にお任せを!
ひたすら「久光の家臣」であり続けた大久保。
「明治維新・御一新」で突然「立場が変わった」ものの、
お前は私の家臣であった、
そして、今も変わらん!
主人であった島津久光に対しては、大久保は「遠慮せざるを得ない」立場でした。
反乱が起きては、
困る・・・
困った新政府は、明治維新翌年の1869年には、
とりあえず、藩主から
版籍(土地と領民)を返してもらおう・・・
段階を
踏むしかないだろう・・・
こうして、版籍奉還を実行しました。
そして、旧藩主は新たに知藩事に任命し、知藩事は非世襲としました。
知藩事?
それは何だ?
名前が変わったのか?
現在、各自治体のトップである「知事」は「知藩事」から「藩を削除」した名称です。
少しの前進に
留まったが・・・
「世襲の藩主」から「非世襲の知藩事」だけでも、大きな改革でした。
廃藩置県:大名から華族へ
・形式上は「版籍」を天皇陛下に返還
・「世襲の藩主」から「非世襲の知藩事」
版籍奉還して、「非世襲の知藩事」となった旧大名たち。
新たな時代になり、藩主から知藩事に
なったのか?
私は我が領土・藩士たちに、
まだ命令出来るのだな!
大きな改革でしたが、実質は江戸時代と大して変わりませんでした。
これでは、
徳川時代と同じ・・・
そして、2年ほどの時が流れるのを待って、「新しい時代」への移行を断行します。
もう良い頃合い
だろう・・・
廃藩置県!
1871年実施の廃藩置県は、文字通り「藩を廃止して、県を設置する」大改革です。
ちょ、ちょっと待て・・・
本気か!
薩摩国父であった島津久光は、猛烈に怒り狂いますが、もう後の祭りでした。
お、
おのれ・・・
西郷はもともと大嫌いだが、
一蔵(大久保)まで裏切りおった・・・
1871年に廃藩置県を断行して、まずは藩を無くして、名前を変えます。
「薩摩藩から薩摩県」では、変化した印象が薄いです。
名前を
変えなければ!
その後、統廃合があり、1872年時点では下記のようになります。
薩摩は鹿児島県に、長州は山口県に、土佐は高知県に、佐賀は長崎県・佐賀県などになります。
現在では、なくなった名称の県もたくさんあります。
そして、「廃藩置県時の東京」は「現在の東京」よりも、はるかに小さな地域でした。
版籍奉還によって知藩事となっていた旧大名は失職し、東京へ移住を命じられました。
そして、「華族」という「名誉な立場」が与えられました。
領土のボスでは
なくなってしまった・・・
まあ、名誉はあるし、
大借金がなくなり、肩の荷が降りた・・・
そして、新たに各県には中央政府によって、現在の知事に当たる県令が任命されました。
国のあり方を根底から変える、大改革だったのです。
版籍奉還と廃藩置県の違い:自分の言葉で簡潔に
これらのことを、しっかり頭に入れた上で、「違いを説明」しましょう。
こういう問題は「〜字以内で」と記載ある場合と、武蔵中のように「空欄に自由に」の形式があります。
それぞれの形式に対して、自分でしっかり書いて、慣れておきましょう。
・元の藩がそのままである版籍奉還に対して、藩の領域・名前が変化した廃藩置県
・旧大名が知藩事となった版籍奉還に対して、旧大名が失職して新たに県令を任命した廃藩置県
この二点が最も大きな違いです。
廃藩置県では、藩の借金である藩債を中央政府が肩代わりしました。
ここまでは書かなくて良いでしょう。
「〜字以内」とある時は、「大事なこと」を書く必要があります。
上記のように、大事なポイントを頭で整理するか、メモしましょう。
解答例としては、
版籍奉還は元の藩の領域・名称が同じままだったが、廃藩置県では領域・名称が大きく変化した。
旧大名は知藩事となり、実質は江戸時代と大きく変わらなかった版籍奉還に対して、
廃藩置県では、旧大名ではない新たな県令が任命され、旧大名と旧藩の結びつきがなくなった。
もう少し簡潔に書いても良いでしょう。
参考書・過去問などの解答例は、読むだけではなく、自分で手で書きましょう。
そして、出来れば、解答例とは少し違う文章で、自分で書いてみると良いでしょう。
自分で書くのって、
難しい。
最初は「丸写し」でも良いでしょう。
確かに、「書いてみる」と
「読んだだけ」と、ちょっと違う・・・
あまり難しく考えず、少し言葉遣いを変えるだけでも良いでしょう。
試験は時間制限がありますが、一つ一つ「考えながら書いてみる」ようにしましょう。
次回は下記リンクです。