前回は「記述問題への対策とコツ・勉強法〜「考えたこと」「感じたこと」を書く・「しっかり書いて・描いて」理解力強化・「理解している日本語」なのに難しい記述〜」の話でした。
記述の多い学校対策:苦手意識克服と書き方
今回は「記述の多い学校」を志望している方向けに、具体的に「どうのように考えるか」の話です。
麻布中や武蔵中のように「記述の分量が多い」学校は、比較的少数です。
hs08JG21mt女子学院中の社会の問題を具体的に考えましたが、このように「簡潔に文章で答える」問題もあります。
上記問題の考え方・答えに関しては、下記リンクをご覧ください。
「自分で書く」というのは意外と難しいですが、「まずは考えて何かを書いてみる」と良いでしょう。
その「何か」を書いてみた結果、解答例と異なっていたら、解答例の考え方を学びましょう。
武蔵中で、
教育格差の例を一つ挙げ、
どのような対策が取られているか知っていることを書きなさい。
このような出題がありました。
これは、いかにも武蔵中らしい問題です。
このように「ある対象に対して、例を一つ挙げ、対策は?」をいう問題。
まず、例を知らないと
始まらないのかな。
「知っているか。知らないのか。」を聞きたいなら、選択式問題でも良いのです。
あえて記述問題にしているのは、受験生の「考える力」や指向性を知りたいからです。
「知らなければ、考える」は、
分かるけど、どう考えれば良いの?
こういう問題を解くために、役立つ一つの具体的な方法をご紹介しましょう。
それは、問題になっている事柄の「当事者になったつもりになる」ことです。
ここでは、家庭の経済力による「教育格差」が問題になっています。
そもそも、中学受験をする皆さんは「経済力による教育格差」を感じにくい立場なのです。
それは
なぜ?
塾へ行ったりたくさんの参考書を買ったりするためには、実は「ある程度の経済力」が必要です。
そして、国立は公立と同程度ですが、私立中高の場合は学費が公立よりはるかに高いのです。
そっか、
そうなんだ・・・
こういうことは、中学受験生である小学生には、なかなか実感できないでしょう。
それはまた、当然のことと考えます。
受験生の皆さんは、志望している中学校・高校に「合格したい」から勉強しています。
「合格すること」が目標で学んでいますが、実は「合格して学費を支払う経済力」が前提となります。
「経済力」がなければ、合格しても「登校できない」のです。
具体的に「自分が〜だったら」と想像:客観ではなく主観
この問題では、「教育が家庭の経済力で左右される」ということを考えます。
ならば、具体的に「格差」を考えてみましょう。
ある家庭とある家庭で、経済力の格差があるとします。
この時、「どうなるんだろう?」と考えます。
この「どうなるんだろう?」という視点は「第三者の視点で考える」ことになります。
ある意味、「客観的視点」であります。
「客観的視点」は大事な視点ですが、記述問題では「客観的視点」はやめましょう。
そして、「主観的視点=自分の立場で考える」をやってみましょう。
そして、対象とする事柄の「不利な場合」に自分があった時を考えてみましょう。
この場合は「自分が経済力が弱い家庭にいたら、どうなるだろう?」と考えるのです。
「自分が、こっちの
家庭だったら」ということだね。
その場合、どうなるでしょう。
受験生の皆さんにとって、塾へ行く機会や模試を受ける機会も減ります。
それは、
とても不利だね・・・
すると、「家庭の経済力によって、学習の平等が損なわれている」ことが想像できます。
知らなくても、考えたら
分かるね!
「答え」を知らなければ考えて書く:解答例以外にないか?を考える
これら経済格差による「教育・学習の不平等の懸念」に対する対策を考えましょう。
これは、
分かったよ。
解答例では、「奨学金」と「公立中高一貫」を挙げました。
「経済力の格差」を埋めるには、やはり「経済力で補填」するのが効果的です。
そこで、「経済力→お金→奨学金」という流れで、想像できます。
これは知ってたけど、
そう考えると分かるかも。
他にはないか、考えてみましょう。
・家庭の経済力によって、進学の機会・チャンスの平等が損なわれている(A)
・能力があっても、家庭の経済力によって進学できない状況がある(B)
・その対策として、国・自治体・大学などが奨学金を出して経済的支援を行っている(C)
出題した武蔵中でも他の学校でも、奨学金を書けば大体良い点が付くでしょう。
ここで(C)「公立中高一貫」まで、書ける方は少ないでしょう。
出題者・採点者の「想定する解答」は、大体(A)と(B)の二つです。
ここで、「他にないか?」を考える必要はないのですが考えてみましょう。
このように、「解答例以外にないか?」を考えることは、非常に良い勉強の姿勢です。
経済格差を埋めるのは経済力ですが、少し想像してみましょう。
自分が「経済力の劣る家庭」なら、どうなるでしょう。
僕がやっている
この問題集も買えないのかな・・・
この分厚い参考書も
結構お金がかかるよね・・・
皆さんが「好き」な参考書や問題集もあるかもしれません。
最初は分厚い参考書や問題集を見たら、大抵の方は、
えっ?
これ全部やるの?
こう感じる方が多いでしょう。
受験生なら、誰でも知っている分厚い参考書があります。
非常に細かなことが記載されていて、しかも結構重いです。
分厚くて、フルカラーの本は相応に値段が高いです。
この参考書、
やるの大変だったけど・・・
これがなかったら、
僕、困っていたかも・・・
例えば、中学・高校・・・と進んでいった時に、経済力で「教育の機会が制限される可能性」があります。
「教育の機会」は学校・塾などの「学びの場」だけではなく、本なども大事です。
この場合、どのようなことが考えられますか?
この参考書を
無料でくれたら嬉しい!
無料でもらえたら
一生懸命頑張る!
そのように考えた時、「経済力の劣る家庭に、無償で参考書・問題集等を配布する」も考えられます。
それは
やってるの?
これは出版社によっては、やっているかもしれませんが、分かりません。
「絶対ない」とは、言えないことではあります。
「絶対ない」とは言えないものの、実際問題としては「非常に難しい」問題です。
それは
なぜ?
この「無償提供」をするとなると、「経済力の格差のボーダーラインはどこか?」の設定が難しいのです。
そして、「経済力の証明は?」となると、大変なことになってしまいます。
確かに
難しいかもね・・・
じゃ、こういう対策は
「ない」から答えにならないんじゃない?
このように「教育格差をなくすために、ある参考書・問題集を無償配布」は良いことだと思います。
一方で、上記のような「ボーダーライン」の問題点があります。
さらに、無償配布が「ある出版社の独断」であれば良いかもしれません。
ところが、そこに公金が入ると「どの出版社の参考書を無償配布?」となってしまいます。
「無償配布」といっても、公金が入る場合は「公金によって出版社から買い取る」ことになるので、
なぜ、無償配布の対象の参考書が
X出版の本なのだ?
どうして、
うちの出版社は対象外なのだ?
このようにトラブルになる可能性があります。
公金や助成金配布など政治的判断が発生すると「難しい問題が多い」のが現実です。
じゃ、やっぱり「ない」から
「答えにならない」でしょ。
この「経済格差による教育不平等をなくす」ために「書籍の無償配布」はなさそうです。
ところが、何かに対して「絶対にない」と言い切るのは、大変なことなのです。
算数では「計算上ない」がありますが、世の中で「絶対にない」は、なかなかないのです。
それは
確かにそうだとおもう!
もし、「なさそうだけど、あるかも」の対策を
書いたら、採点はどうなるの?
この「どう点数がつくか」は、採点者の判断であり、独断でしょう。
・参考書や問題集などの無償配布、または塾・模試などの諸費用の減免や無料化が行われ、経済力が劣る家庭の子たちに対して、「入試における平等性」が意図されている。(D)
出題の意図とは少しずれますが、「あったら良い対策」が答案に書かれていたら✖️にはしないでしょう。
この「対策」は
なさそうだけど・・・
発想は
面白いかもな・・・
・・・・・
これは、ちょっと点を
あげようかな・・・
こういうこともあるでしょう。
他の学校は分かりませんが、武蔵中の発想ならありそうです。
武蔵中などを志望とする方は「分からないから白紙」ではなく、考えて書いてみましょう。
白紙なら、
何も書いていないから、
✖️で0点。
採点者は「0点しかつけようがない」のです。
とにかく、記述は「知らなくても、考えたことを書く」姿勢が最善でしょう。
次回は下記リンクです。