有能な優等生提督・山口多聞の航空戦への強い思い〜軍令違反と猛将の矜持・一気に壊滅した赤城・加賀・蒼龍・悪夢から反撃へ・航空戦の真髄・初めての空母航空隊司令長官へ〜|山口多聞39・ミッドウェー・能力

前回は「運命の瞬間〜空母に襲い掛かる米軍急降下爆撃隊・飛龍の独自行動・加来止男艦長の戦場で磨き上げた勘・逃げ惑っていた空母機動部隊の反撃〜|山口多聞38・ミッドウェー・能力」の話でした。

山口多聞 司令官(Wikipedia)
目次

一気に壊滅した赤城・加賀・蒼龍:悪夢から反撃へ

米SBDドーントレス爆撃機(歴史群像2002年2月号 学研)

「あと五分で発艦」という時、十数機の米軍の急降下爆撃機が日本の空母に襲い掛かります。

山口多聞

まずいっ!!!

空母 飛龍

面舵一杯!

空母 赤城

取舵一杯!

必死に操艦する、各空母の艦長たち。

米SBDドーントレス爆撃機(歴史群像2002年2月号 学研)

米軍のSBDドーントレス爆撃機から、爆弾が落とされました。

そして、空母赤城・加賀・蒼龍の飛行甲板に直撃しました。

ドカ〜ン!ドカ〜ン!猛烈な凄まじい爆音が鳴り響きます。

95式魚雷(Wikipedia)

ちょうど、空母には発艦間際の燃料満タンの航空機、交換したばかりの魚雷・爆弾がありました。

それらの燃料・魚雷・爆弾が次々と誘爆しました。

そして、空母赤城・加賀・蒼龍でドーンと猛烈な炎が燃え上がりました。

第一航空艦隊 旗艦 空母赤城

とても大きな火柱が、立ち上りました。

そして、大勢の将兵の絶叫が響き渡ります。

まさに「一瞬の出来事」でした。

山口多聞

うっ・・・・・

山口多聞

まさか・・・

山口多聞

これは・・・

絶句する山口司令官。

空母赤城・加賀・蒼龍は一気に壊滅状態に陥りました。

米軍機の攻撃を回避する空母飛龍(Wikipedia)

幸い、空母飛龍のみは周囲の空母と距離をとっていたので、被弾を免れました。

しかしながら、空母赤城・加賀・蒼龍は大炎上し、もはや戦闘不能であることは明白な事態です。

そして、この数分間で大勢の戦友たちが「この世から消えている」現実に直面した山口司令官。

新教育紀行
ミッドウェー作戦の日本空母(歴史街道 2022年8月号 PHP研究所)

米海軍を圧倒する威容を持っていた第一航空艦隊の四隻の空母のうち、三隻が大炎上しました。

山口多聞

くそっ!

軍人といえども、並の神経では卒倒してしまうような事態です。

芯が強い将軍でも、思考停止となってしまう事態でしょう。

ここで、持ち前の闘志をもって、山口司令官は戦うことを即決断します。

山口多聞

反撃だ!

山口多聞

米空母を
倒すぞ!

有能な優等生提督・山口多聞の航空戦への強い思い:軍令違反と猛将の矜持

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

もはや、赤城司令部の南雲長官・草鹿参謀長は作戦指揮ができません。

この状況では、「次席指揮官」が「臨時の司令長官」となります。

No.2とも言える第二航空戦隊司令官だった山口司令官ですが、次席ではありませんでした。

実は、次席指揮官は別にいました。

山口司令官より海兵卒業期が上の阿部司令官でした。

海軍兵学校卒業期名前役職
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
39阿部 弘毅第八戦隊司令官
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
52源田 実第一航空参謀
52淵田 美津雄第一航空艦隊飛行長
59友永 丈一新任・第一航空艦隊飛行長
連合艦隊幹部の海軍兵学校卒業期(ミッドウェー作戦)

主に年功序列による、日本海軍の軍令承行令によります。

「航空隊が主力」であり「第航空戦隊のボスである司令官」であるのに、「No.2ではなかった」山口司令官。

全ては年功序列の軍令承行令による、悪しき組織のシステムが問題でした。

本来、この時点からは阿部司令(長)官の指揮下に山口司令官は入ります。

これまで大きな軍令違反は一度も犯したことのない、優等生の山口司令官。

山口多聞

軍令によると、
阿部さんが指揮官となるが・・・

ここで、この絶体絶命の中、山口司令官は決断します。

山口多聞

航空戦は、私でなければ、
ダメなのだ!

山口多聞

おい、私が指揮官となることを
全部隊に知らせよ!

飛龍将兵A

ははっ!

人生初めて「大きな軍令違反を犯した」有能な優等生提督の闘将・山口司令官。

山口多聞

みんな
私に続け!

飛龍将兵A

ははっ!

長きに渡り航空戦を指揮してきた歴戦の闘将であった山口の「航空戦への強い思い」で米海軍に挑みます。

航空戦の真髄:初めての空母航空隊司令長官へ

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)
飛龍

我、これより
航空戦の指揮を執る。

飛龍から各艦隊へ、山口司令官が指揮を執る事を発信しました。

そして、自ら進んで艦隊指揮官となった山口司令官。

山口多聞

見ていろ!

山口多聞

米空母を
叩き潰してみせる!

日本海軍の中で非常に大きな期待を寄せられていた、山口司令官。

ついに、初めて「事実上の司令長官」として航空戦の指揮を執ります。

指揮下の空母は、わずかに飛龍のみ一隻。

そして、絶体絶命の中、溢れんばかりの闘志をもって米軍へと立ち向かう山口司令官。

山口多聞

我が航空戦の真髄を
見せてやる!

49歳のこれまで、年功序列のために司令長官にはなれなかった山口多聞。

ようやく、生まれて初めての空母航空艦隊司令長官となりました。

それは、山口司令官の「悲願であった」と言って良いでしょう。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

そして、この戦いが山口司令官の「最後の戦い」となります。

次回は上記リンクです。

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