前回は「唇を噛む山口多聞〜禁じ手の「兵装転換」へ・米航空隊の反撃:零戦の大活躍・逡巡する赤城司令部・事実上No.1だった草鹿参謀長の甘い思考〜」の話でした。
届かぬ山口多聞の悲痛な意見具申:原理原則と柔軟性
小さな島で、島というより環礁に近い大きさのミッドウェー島を空襲した連合艦隊。
猛烈な勢いでミッドウェー島を爆撃していたのは、友永隊長率いる航空隊でした。
ミッドウェー島の
防御体制が万全すぎるが・・・
我らの任務は
ミッドウェー島を完膚なきまで叩くこと!
みんな、
やるぞ!
はいっ!
猛烈な対空砲火をくぐり抜けながら、懸命にミッドウェー島を空襲し続けていた友永隊。
ちっ!
Japanの連中は強い・・・
かなり万全なはずだが、
石油タンクが爆撃されてしまった・・・
こうした中、
各空母へ!
雷撃隊は、
(陸用)爆弾へ兵装転換せよ!
「戦闘中の兵装転換」という禁じ手を発令した赤城司令部の草鹿参謀長。
ちょ、ちょっと
待てっ!
戦っている
最中だぞ!
根本的な作戦変更して
どうする!
猛烈に抗議する山口司令官。
作戦は
臨機応変が大事だ!
原理原則を無視して、
臨機応変も何もあるか!
何事も
基本が大事だ!
兵装転換は
厳禁のはずだ!
実際この直前の戦いで、機動部隊は兵装転換をして、非常に危うい状況に陥りました。
その時は、敵の失策で日本の損失は軽微であり「結果的に杞憂に終わった」のです。
そのこともあり、事前に「兵装転換は厳禁」と約束していたはずでした。
とにかく
再考してくれ!
それでもなお、赤城司令部は山口司令官の意見を却下します。
山口司令官の悲痛なまでの意見具申は、赤城司令部には届きませんでした。
司令部の命令は絶対です。
・・・・・
絶対に
敵空母はいる!
大混乱の飛行整備場:重労働の兵装転換作業
司令部の「兵装転換」の命令に従って、急遽作戦を変える必要が出ました。
待機している雷撃機の魚雷を外し、爆弾に付け替える作業が進みます。
一言に「付け替える」と言っても、大変な作業です。
魚雷は数百キロあり、陸用爆弾は800キロあります。
この重たい爆弾・魚雷を台車に乗せて移動させて、数人がかりで付け替える作業を進めます。
急げ!
うかうかしていると、
敵が来るぞ!
はやく魚雷を
つけよう!
外した爆弾は、
その辺りにおいて・・・
よし!
装着完了!
次の
飛行機だな!
各空母の飛行整備場は、戦場のような騒ぎとなりました。
おいっ!
早くしろ!
はいっ!
魚雷を急ぎ持って参ります!
大混乱となった飛行整備場ですが、作業員たちは懸命に作業を進めました。
闘志を燃やす山口多聞:想定外の事態勃発
「兵装転換」の指令から30分ほど経過ののち、
10隻程の敵艦隊、
発見!
「敵艦隊発見」一報が入ります。
しかしながら、「どのような艦船か?」の大事な報告がありません。
思っていた
通りだ!
誤報かも
しれん・・・
誤報
ではない!
艦船の種類を
報告せよ!
敵艦隊がいるということは、
必ず米空母は出てきている!
様々な思いが錯綜する中、電信が入ります。
先に
発見せる敵は・・・
後方に
空母二隻を伴う!
米空母発見の連絡です。
しかも二隻。(実際は三隻)
!!!!!!!!!!!!!
ば、
馬鹿な!!!!!!!!
事態を「完全に読み違えた」草鹿参謀長。
ど、
どうするのだ!!!!!!!
「心臓がとまる思い」とは、こういう時のことをいうのでしょう。
やはり!
米空母は
出てきたか!
体制を
立て直すぞ!
我が二航戦(第二航空戦隊)が、
米空母を倒して見せよう!
愕然とする草鹿参謀長に対して、闘志を燃やす山口多聞でした。
これは一体・・・
どうするべきかっ!
このまま
兵装転換を進めるか・・・
あるいは、
兵装転換を中止するか・・・
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 第一航空艦隊司令長官 |
40 | 山口 多聞 | 第二航空戦隊司令官 |
41 | 草鹿 龍之介 | 第一航空艦隊参謀長 |
52 | 源田 実 | 第一航空参謀 |
52 | 淵田 美津雄 | 前任・第一航空艦隊飛行長 |
59 | 友永 丈一 | 新任・第一航空艦隊飛行長 |
山口司令官の後輩であり「後任」であるはずだった草鹿参謀長。
海兵を14位で卒業した優等生の草鹿ですが、山口は2位で卒業しており山口の方が優秀です。
学生時代の成績が、必ずしも仕事現場の成績に直結するとは限りません。
ここは、すぐに
頭を切り替えるべきなのだ!
とにかく「成績重視」であり、それが軍令承行令として名文化されていた組織が大日本帝国海軍でした。
年上で「成績抜群の山口司令官」の意見を、「成績が山口より劣る後輩の草鹿参謀長」が却下した事態。
草鹿よ!
早く決断するのだ!
年功序列と海兵の成績重視だった「軍令承行令」の矛盾が、思わぬ時に表面化した瞬間でした。
次回は上記リンクです。