米陸軍の最高意思決定者スティムソン長官〜米国の明確な権限と責任・「曖昧極まりない」不思議な日本の組織・国家元首と最高意思決定者・「全てがヒトラー次第」のドイツ・超個性的なルーズベルト大統領〜|ヘンリー・スティムソン8・人物像・エピソード

前回は「「天皇=大元帥」という大日本帝国の姿〜大日本帝国の天皇・戦前の天皇制・東條総理の陸相兼務〜」の話でした。

ヘンリー・スティムソン陸軍長官(Wikipedia)
目次

「曖昧極まりない」不思議な日本の組織:国家元首と最高意思決定者

フランクリン・ルーズベルト米大統領(Wikipedia)

米国や英国は情報・諜報をを非常に重視しています。

米国では、CIAやFBIなどの諜報組織・警察が有名です。

超大国米国にはCIA以外にもNSA、DIAなど様々な諜報組織が存在し、世界中を、そして宇宙を監視し続けています。

英国は、ジェームズ・ボンドで有名なMI6(SIS)があります。

この「情報・諜報を超重視する」米英の姿勢は、第二次世界大戦中も同じでした。

米英は、他国の動きや「国家元首の考えを読む」ことに全力を挙げていました。

左上から時計回りにスターリン・ソ連最高指導者、ルーズベルト米大統領、ムッソリーニ・伊首相、ヒトラー独総統(Wikipedia)

ヒトラーは今、
何を考えているんだ?

あるいは、イタリアのムッソリーニは
何を求めているんだ?

どうやら、ムッソリーニは
こういう動きをしていそうです!

それでは、スターリンは、
何をしようとしている?

「相手の考えていること」や「相手の出方」を各国の暗号を解読して、推測します。

どうやら、スターリンは
こう考えていそうです!

とにかく「情報を元に、相手の考えを事前に読む」ことを極めて重視していました。

Japanは、
誰が意思決定をしているんだ?

それは総理大臣ですが、
Japanは天皇制で・・・

そんなことは
分かっているのだが・・・

結局、誰が
最高意思決定者なのだ?

金閣寺(新教育紀行)

Kyotoという街は、
雰囲気も街並も非常に美しい・・・

京都を日本人と同等、あるいはそれ以上に愛していた「超親日派」のスティムソン長官。

新教育紀行
満州国(Wikipedia)

そして、日本が満州事変を引き起こした時には国務長官であり、長年日本を見てきたスティムソン。

いわば、「超親日派にして超知日派」という極めて稀な人物でした。

日本が天皇制であることは、米英の政府首脳は全員知っていましたが、英国も王室があります。

UK(英国)は王室が
あるが、チャーチルが実権を握っているだろう・・・

そう考えると、Japanも
総理大臣が実権を握っているのか?

そうともいえず、JapanはUKとは
全く異なる政治体制です・・・

まあ、とにかくJapanの
最高意思決定のプロセスはよく分からんな・・・

会話では、Yes.かNo.で始まることが多い二元論の欧米からすると、

Japanと戦うからには、
意思決定のプロセスの判断は大事だが・・・

あの国は、満州の時も軍部が暴走したり、
よく分からんのだ・・・

どうやら「統帥権」なるものが
あって、幅を利かせている・・・

「曖昧極まりない」不思議な日本の組織です。

そういえば、最近、
Japanの総理大臣が変わったな。

近衛文麿 前内閣総理大臣(Wikipedia)

ついこの間まで、
Konoeが総理大臣だったが・・・

今は、
誰だったかな?

今は、
陸軍のボスのTojoです。

ああ、ドイツと仲良しの
日本陸軍のボスか・・・

こんな大変な時期に、
Japanは総理大臣が代わるんだな・・・

実際、真珠湾奇襲攻撃直前に近衛文麿内閣は内閣総辞職しました。

真珠湾奇襲攻撃が1941年12月8日、近衛内閣総辞職が10月18日でした。

つまり、近衛内閣総辞職から2ヶ月経たないうちに、真珠湾奇襲攻撃が決行されたことになります。

この時点では「それより前」の歴史ですが、日米関係が緊迫し事実上破綻している状況で、

なぜ、Japanはこんな超大事な時に
内閣総理大臣が変わるのだ?

Tojoが新たな
総理大臣か・・・

Tojo・・・
まあ、また変わるかもしれんから、誰でも良いか・・・

で、最高意思決定者は
Tojoなのか、エンペラー(天皇)なのか?

エンペラーが、陣頭指揮を
取っているようにも見えません。

ならば、
Tojoか?

一体、Tojoは
どういう権限を持っているのだ?

どうも、Tojoの権限も
限定的なようです・・・

Japanは、どうやって
国を動かしているんだ?

「玉虫色」の日本の政治。

それは、戦時中も同様でした。

新教育紀行
大日本帝国憲法(Wikipedia)

憲法上は天皇が国家元首であった当時の大日本帝国。

一方で、「天皇は国家元首だが、全ての指揮を執っている状況ではない」のが現実でした。

大日本帝国憲法日本国憲法
公布1889年(戦前・明治時代)1946年(戦後・昭和時代)
主権天皇国民
天皇神聖不可侵の元首日本国民統合の象徴
戦争天皇が陸海軍を率いる戦争を放棄
軍隊国民に兵役義務交戦権否定
日本国憲法と大日本帝国憲法の大きな違い

Japanという国は、
よく分からんな・・・

米陸軍の最高意思決定者スティムソン長官:米国の明確な権限と責任

日米開戦時の米政府・陸海軍主要ポスト(図説 日米開戦への道 平塚敏克著 河出書房新社)

対して、米国は権限と責任が明確でした。

戦時中であることもあり、「最高司令官」である大統領が全ての権限を持ちます。

俺が米軍の最高司令長官
なのだ!

そして、陸軍は基本的にはスティムソン長官次第で、意思決定がなされます。

私が、
陸軍を仕切っているのだ!

最高司令長官である大統領が自ら出て指揮することもありますが、それは限定的でした。

例えば、陸軍内部で「揉めている」雰囲気があれば、

ここは
こうしろ!

と大統領が指示をすることがありますが、基本的には「陸軍は陸軍長官の所管」でした。

このように、政府幹部の「担当エリア」が明確に色分けされていたのが米国でした。

そして、それは現在も同様です。

米軍の最高指揮官は大統領だが、
陸軍は、私が全て統括する!

陸軍に関しては、
全ての最終意思決定権は私にある!

対して、何もかもが曖昧な日本の政治体制でした。

「全てがヒトラー次第」のドイツ:超個性的なルーズベルト大統領

アドルフ・ヒトラー独総統(Wikipedia)

ヒトラーやスターリンのような、強烈な個性・カラーを持つ指導者が大勢いた当時。

「独裁者の王道」をゆくヒトラー。

日本が「曖昧すぎる」政治体制ならば、ドイツは、

ドイツのことは、政治から軍に至るまで
全て私次第だ!

「全てがヒトラー次第」という明確すぎる政治体制でした。

この「曖昧すぎる」国と「明確すぎる」国が手を結んだこと自体も不思議なことでした。

科学者 アルバート・アインシュタイン(Wikipedia)

1800年代中頃から急速に成長し、「世界の科学技術のメッカ」でもあったドイツ。

アインシュタインはもともとドイツ生まれであり、科学を非常に重視していました。

明確なドイツ人には「科学との相性が極めて良かった」のでしょう。

何もかもが「ヒトラー中心」で決定する当時のドイツは、ヒトラーが、

これは
Aで決定!

と言えば「Aで決定で終了」であり、

これは
Bだ!

と言えば、「Bで決定で即終了」でした。

とにかく、明確すぎる政治体制であった当時のナチス率いるドイツ帝国。

ヒトラーは、最前線の戦車部隊の戦闘指揮まで口を出します。

前進!
突き進め!

ちょっと待て。
ここで待機!

前線指揮にまで、
口を出されては困る・・・

前線司令官は困ってしまうものの、「逆らうことは絶対できない」存在です。

総統に逆らったら、
大変なことになる・・・

絶対的独裁者であったヒトラーに逆らったら、「即クビ」です。

下手をしたら「クビ」では済まない状況でした。

「クビ」というニュアンスではなく、本当に「首から上が胴体から離れる」可能性があります。

いかにも個性的なヒトラー達に比べると、

私が米国の
大統領だ!

ルックスが良いものの「普通の顔つき」に見えるルーズベルト大統領。

ところが、彼は非常に個性が強い存在でした。

最高指揮官は
俺!

この非常に強い個性のルーズベルトに「仕える立場」のスティムソン陸軍長官。

欧州戦線で、
ヒトラーを退治する!

それが
最優先だ!

我が米陸軍は
敵を倒すために全力を尽くす!

スティムソン陸軍長官もまた、強い個性を持っていました。

次回は上記リンクです。

新教育紀行

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