前回は「日本の進むべき道〜資源を南に求めた日本陸海軍・資源なき日本・米国に完全依存していた軍需物資の未来・暴走する山本長官・禁じ手「長官辞任」をチラつかせた強行姿勢〜」の話でした。
異常に逸る山本長官:日米の格の違いを最も認識していた男
今、
今しかないのだ!
この、我が日本海軍が勢いに
乗っている今こそ!
米海軍を叩きのめす、
最大のチャンス!
軍令部としては、絶対に
認められません!
軍需物資がなければ、
戦争は続けられません!
この伊藤次長の意見は、至極真っ当であり「王道」というよりも「当たり前」の意見でした。
長官もご存知の通り、
特に原油がなければ、艦隊は動かせなくなります!
そんなことは、
分かっておる!
優等生肌の山本には、そんなことは「全て把握していること」でした。
そもそも、山本や駐米時代に、
米国の油田地帯を
見て回るのだ!
生活費を切り詰めてでも米国全土を駆け回り、莫大な油田を視察した山本。
米国には
勝てん!
「米国には勝てない」が山本の信念であり、
今は日本海軍が連戦連勝だが、
日本と米国では格が違うのだ・・・
だからこそ、
「ミッドウェー」なのだ!
「米国には勝てないから、ミッドウェーで早期決着」でした。
ところが、こちらも優等生肌の伊藤次長は、
なんど仰っても、
ミッドウェー作戦は裁可できません!
ならば、私は
連合艦隊司令長官を辞任します。
またか・・・
またその手ですか・・・
はぁ・・・
困った・・・
皆が「海軍兵学校の卒業生」で「先輩と後輩」の中だった日本海軍。
山本長官ならぬ「山本先輩」の横暴に困り果てていたのが、伊藤軍令部次長でした。
海軍兵学校の先輩と後輩の影響
海軍の将官は、ほぼ全員が海軍兵学校卒業生です。
つまり、組織内ほぼ全員が「同じ卒業生」なのです。
ということは、「先輩・後輩」が一生涯ずっと影響します。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 役職 |
28 | 永野 修身 | 軍令部総長 |
32 | 山本 五十六 | 連合艦隊司令長官 |
32 | 嶋田 繁太郎 | 海軍大臣 |
39 | 伊藤 整一 | 軍令部次長 |
40 | 山口 多聞 | 第二航空戦隊司令官 |
「海軍三顕職」と言われる大幹部であった軍令部総長・海軍大臣・連合艦隊司令長官。
その三役職は、28期〜32期に集中していました。
そして、「若手」は伊藤次長や山口司令官。
大幹部の方々よりも10期ほど下となり「明確な後輩」です。
私は、
大先輩なんだぞ。
山本先輩は、
私の言うことを聞かない・・・
先輩・後輩と、
作戦計画は別では・・・
先輩の山本長官を「抑えられる人物」は、自分達の先輩の永野総長・嶋田海軍大臣しかいません。
嶋田大臣は、山本長官と同期で、気心知れています。
しかも、嶋田大臣より山本長官の方が卒業時の成績が良いため「先任」になります。
嶋田君のことは
よく知っている・・・
そのため、嶋田大臣では山本長官を「屈服させる」ことは不可能でした。
そもそも、なかなか同期では反対しにくいのが実情であったため、嶋田大臣は当てになりません。
残るは「山本長官の先輩」の永野総長だけとなりました。
ところが、山本長官の「4つ先輩」の永野総長ですら、逸る山本長官を抑えることが出来ませんでした。
山本は、
なかなか強情でな・・・
山本は、思い込んだら、
なかなか他人の言うことを聞かない・・・
実際、山本長官は強い信念を持ち続け、意見を変えそうにありませんでした。
大きな懸念を持つ山口司令官:先輩後輩の関係と意思決定
読者の方が社会人以上であれば、
うんうん。
分かる。
「分かる」と言うご意見が多いでしょう。
小学生・中学生・高校生では、この「先輩・後輩」という感覚は、
なんとなく
分かるよ。
上の方には、なかなか
反抗できないよね・・・
分かる面・分からない面があるでしょう。
中高一貫校で先輩のお兄さん・お姉さんから受ける刺激の話を、上記リンクでご紹介しています。
最近はコロナのこともあって、様々な同窓会・OB/OG会の開催が少なくなりました。
以前は、よく武蔵高校のOB会の集まりに出かけていました。
僕は70期卒業ですが、初対面で年齢が近そうな方と話し始めると、
〜ですね。
〜ですよね。
お互い、敬語で話が始まります。
ところで、
何期卒業ですか?
私は、
69期卒業です。
卒業期が近いと、急に親近感が湧きます。
1期の違いですが、70期卒業の僕の先輩です。
僕は70期です。
部活の先輩にTさんがいて・・・
ああ、Tな。
あいつ、すごく数学できたな。
そういえば、部活の後輩の
Uがいたけど・・・
ああ、Uですね。
水泳が得意でしたね。
こうなると、もう完全に「上下関係」が出来てしまいます。
それに応じて、言葉遣いまで変わってきます。
〜だよな・・・
〜ですね・・・
たかが「一期の違い」であっても「先輩は先輩」となってしまいます。
これが、「五期以上、上の先輩」となると、もはやこちらは「完全に下」の扱いとなります。
こういう「先輩・後輩」の関係は、「在学時に無関係」であっても、影響が出ます。
それはそれで仕方ないのです。
ただし、この「上下関係」が「軍・仕事の領域に影響」することは、決して健全ではありません。
これで、
こんなことで大丈夫か?
懸念する山口司令官でした。
次回は上記リンクです。