前回は「図や絵を描いて問題を解くコツ〜「初見の問題」を上手く考える・分割する図形の数・「逆の視点」など「スマートな解法」を意識〜」の話でした。
対称性がある図形問題を解くコツ:「正〜角形」の時は対称軸に着目
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今回は、上の図形問題を考えてみましょう。
この問題は、1984年に武蔵中学校で出題された問題です。
正三角形が二つあり、シンプル過ぎる問題で、ある意味で「美しい問題」です。
難易度に関しては様々な意見があると思いますが、筆者は難問と考えます。
ぜひ、全ての中学受験生に考えてほしい問題です。
二つの正三角形がある時、
辺の長さがa倍の時は・・・
高さもa倍になるので、
面積は(a x a)倍になります・・・
「相似比が1 : a」の時は「面積比は1 : a x a」という事実を、明記してくれています。
これは現在の中学受験では「常識」かもしれませんが、しっかり理解しておきましょう。
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早速、考えてゆきましょう。
この問題は、「正三角形が二つ」という「強い特徴がある」図形です。
さらに、それらの「正三角形の中心が一致している」ので、「極めて強い特徴がある」図形です。
よしっ、解こう!
面積が36cm2と25cm2だから・・・
図形問題を見たら、すぐに「条件を図形に描きこむ」ことが大事です。
多くの図形問題で「まず、条件を図形に描きこむ」ですが、特徴が強い図形問題では、
この図形の特徴は
なんだろう・・・
最初に「図形の特徴を考える」ようにしましょう。
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二つの正三角形の「対称軸と中心が一致」しているので、上の図のような直線に対して、
この直線に対して、
折り返しても同じ(対称)だね!
他にも「折り返しても同じ」直線が
ありそうだけど・・・
「折り返しても同じ=対称性がある」図形を見たら、「対称となる直線(軸)」を探してみましょう。
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もう一本の「折り返しても同じ直線=対称軸」がありました。
さらに、もう一本の「折り返しても同じ直線=対称軸」がありました。
三本も「折り返しても同じ」直線が
あると、色々な事が分かりそうだね!
三本の「折り返しても同じ直線=対称軸」によって、問題文の「正三角形ア」が、他に二つ見つかりました。
さらに、少し小さな「正三角形ウ」が、三つ見つかりました。
図形を見た時には、
同じ図形が多そう、と思ったけど・・・
「折り返しても同じ直線=対称軸」を
考えると、きちんと同じことが分かるね!
ここからは、問題文に従って考えると、二つの面積は、それぞれ「36=6×6」「25=5×5」なので、
面積比から、
辺の比が分かるね!
二つの正三角形の辺の比が「6 : 5」である事が分かりました。
「思い込み」で問題を解かない:条件を整理して着実に
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具体的な辺の長さが不明なので、①を使って、具体的に辺の長さを置いてみましょう。
アとウが隣り合っていて、「同じ正三角形」なので相似形です。
さらに、一つの辺が平行なので、「アとウの相似比が鍵」になりそうです。
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ここで、
アとウの正三角形は、
「6 : 5」の正三角形の一部で、対称だから・・・
アとウの正三角形の相似比も
「6 : 5」だと思う!
このように「アとウの相似比=6 : 5」と考える方がいらっしゃると思います。
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ところが、この「アとウの相似比=6 : 5」は誤りです。
えっ、
違うの?
私も、ひょっとしたら
そうかな、とちょっと思ったけど・・・
この図形問題は、「折り返して同じ=対称軸」と「アとウの正三角形」までは、多くの方が分かります。
ここで、「ドンドン分かる」と「思い込みが強くなってしまう」傾向があります。
そっか、違うんだ・・・
ちゃんと少しずつ考えた方が良さそうだね・・・
こういう「分かりやすい図形」が登場するときは、条件を整理して着実に解きましょう。
「アとウの正三角形」に着目するのは良さそうなので、辺の長さを考えてみましょう。
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この問題では、「面積が条件」で「面積を求める」問題です。
そして、前段で「面積比と辺の比」を説明しているので、「辺の比」を考えると良さそうです。
「アとウの正三角形」の辺の長さが
わかれば良さそうだけど・・・
それじゃ、「アとウの正三角形」の辺の長さを
求めるように考えよう!
「アとウの正三角形」の辺の長さと、大きな正三角形の辺の長さに関係性が見つかりました。
これで、「アとウの正三角形」の辺の長さが
分かりそう!
答えだけならば、「解く鍵」が見つかったら、問題用紙の余白に立式して解いてゆきます。
今回は「記述式」を意識して、「解く鍵」が分かったら、きちんと書いてみましょう。
算数の記述のコツ:未知数や方針を明記
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まずは、問題文の説明に従って、二つの大きな正三角形の辺の長さを未知数として置くことを表現します。
算数の記述で「未知数を設定」して解く時は、
僕は、これを未知数〜として
考えます!
このように「どのように考えるか」の方針を明記すると、
なるほど・・・
こう考えてゆくんだね・・・
採点者に伝わりやすいので、最初に「方針」や「方向性」を明記すると良いでしょう。
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先ほど考えたことから、「アとウの正三角形の辺の長さ」に関して立式できます。
記述では、これらの式の横に「考えている図形」を描くのも良いでしょう。
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「アとウの正三角形の辺の長さの合計」が求まりました。
ここから、「a,b,cの条件を使って、アとウぞれぞれの辺の長さ」を求めました。
このプロセスは書いても良いですが、大筋が明記されているので、書かなくても良いでしょう。
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「アの正三角形の辺の長さ」が求ったので、アの面積が求まりました。
続いて、(2)のイの面積を求めましょう。
イはちょっと複雑な
形をしているね・・・
複雑な形の時は、
分けたら良さそうだね!
ここでは、上の図で「イ=ア+エ」として、エの面積を求めましょう。
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「エの面積」は、「大きな正三角形から三つのアを取った」部分の1/6です。
エの面積が求まったので、イの面積はもう少しです。
以上のように、イの面積が求まりました。
この問題は、「図形がシンプルなので答えもシンプル」です。
大事なことは「折り返しても同じ=対称性」を考えて、「思い込みで解かない」ことです。
・「折り返しても同じ」ことから、辺・面積や図形の合同や相似に着目
・「思い込み」で相似比を考えず、着実に辺の比を考えてゆく
次回は上記リンクです。