前回は「西郷隆盛の個性と精神育んだ郷中教育〜圧倒的個性を持っていた西郷・才能とは何か・寺子屋との大きな違い・郷中教育と現代日本の教育の違い・ディスカッションの重要性〜」の話でした。
日本海軍の希望の星・山口多聞:日本人の理想像の一つ「楠木正成」
今回は第二次世界大戦における日本海軍軍人(将軍) 山口多聞をご紹介します。
山口多聞の珍しい「多聞」(たもん)という名前。
ピンときた方がいらっしゃるかもしれません。
この名前は楠木正成の幼名「多聞丸」にちなんだ名前です。
大楠公のように
優れた人物になって欲しい・・・
「大楠公=楠木正成のような武将になって欲しい」という親の気持ちが込められています。
よしっ!
大楠公のようになってみせる!
南北朝時代に智略のかぎりを尽くして、足利尊氏の大軍と戦い、最後は敗北・自刃した楠木正成。
楠木正成は神のように敬われており、現在もその雰囲気が残っています。
そこで、最初の字をとり、敬称である大と公をつけて「大楠公」と称することがあります。
極めて優れた武将であり、その高潔な精神は極めて高く評価されています。
そして、皇居にも大きな銅像が建っている楠木正成。
この「多聞丸にあやかれ」という名前の山口多聞。
実際に、その名前に恥じず、極めて優れた将軍となりました。
大日本帝国(日本)海軍といえば、まずは山本五十六連合艦隊司令長官です。
山本の「やって見せ・・・」という言葉を、上記リンクでご紹介しています。
歴史好きの間で「好きな・優れた海軍軍人」で投票を行えば、山口は「ベスト3」に入るでしょう。
陸海軍で投票しても、ベスト3に入る可能性が高い存在です。
筆者も山口多聞(少将・中将)は、非常に高く評価しています。
「戦略・戦術的才能」は、山本五十六(大将・元帥)を上回った人物でしょう。
猛将の若き日々と超優等生の肖像:海軍兵学校と陸軍士官学校と帝大
小さな頃から頭脳明晰だった山口多聞。
海軍軍人養成学校=海軍兵学校に入学し、海兵40期を次席卒業します。
当時も東大などの帝国大学がありましたが、文字通り「お国に尽くす」陸軍・海軍の兵学校・士官学校。
設置年 | 大学名 |
1868年 | 陸軍士官学校(前身の兵学校) |
1869年 | 海軍兵学校(前身の海軍操練所) |
1877年 | 東京帝国大学 |
1897年 | 京都帝国大学 |
1907年 | 東北帝国大学 |
1911年 | 九州帝国大学 |
1918年 | 北海道帝国大学 |
1924年 | 京城帝国大学(韓国、のちに廃止) |
1928年 | 台北帝国大学(台湾、のちに廃止) |
1931年 | 大阪帝国大学 |
1939年 | 名古屋帝国大学 |
帝大よりも早い時期に設置されたのが、陸軍士官学校・海軍兵学校でした。
当時は、「頭脳を磨いたエリート」よりも「優れた軍人」の方が遥かに優先順位が高かったのです。
日本全国からエリートが集まりる海兵は、入学するのは「東大と同等」か「東大より難関」でした。
場合によっては、「東大よりも難しかった」とも言えるでしょう。
写真では優しそうな山口多聞ですが、非常な熱血漢でした。
勉強も運動も
頑張ってみせる!
さらに海軍大学校に進み、ここも次席卒業します。
とにかく、一生懸命
猛烈に勉強するのだ!
エリート街道まっしぐらの山口多聞は、早い時期に航空母艦による「航空戦」の将来を予期します。
これからは、
航空戦・空母が海軍の運命を決するのではないか・・・
そして、航空戦を強力に推進する山本五十六とは「同志」とも言える存在となりました。
米英との軍縮条約協議なども同行し、大活躍しました。
開成中学・高校の永遠に輝く星:質実剛健な開成の教育
実は、山口多聞は開成中学卒業です。
「開学以来の優れた頭脳」と開成で呼ばれた山口多聞。
開成→海軍兵学校→海軍大学校を、全て抜群の成績で通します。
「学校での成績が良い」ことは、必ずしも「能力が高い」ことではありません。
「言われた事・学んだ事を理解する能力に長けている」事を示すに過ぎないかもしれません。
山口は「理解力に非常に長けている」だけではなく、日本海軍で「山口独自の才能」を開花させました。
「山口多聞を、開成の方はご存知かな?」と思い、開成卒の親友に聞いてみました。
歴史に非常に詳しい彼は、「山口多聞は知っているが、開成卒とは知らなかった」とのことでした。
「開成では優れた卒業生の一人として教えているのかも」と思いましたが、そうではありませんでした。
筆者(武蔵卒)は開成が羨ましい。
麻布・武蔵などの出身者にも、優れた軍人はいるかもしれません。
山口多聞と比較しては、たいていの方は「遥かに見劣りがする存在」となります。
開成出身は、質実剛健で、良い意味で「真面目」な方が多いです。
筆者は、そういう開成出身者には、好感を持っています。
開成は、昔から運動会が有名です。
「棒倒し」で熾烈な争いをすることを、僕は中高生の頃に聞いていました。
普通の学校の体育祭・運動会はそこまで燃えませんから、
いやはや、
すごいな・・・
こう思っていました。
「頭脳だけではなく、身体がともなってこそ」という開成の幅広い教育理念が込められています。
「優しそうな表情」の山口は、大変な大食漢で行動力も際立っていました。
まさに「開成の良いところを全て集めた」かのような山口多聞。
「開成の教育理念の鏡」であり、「開成の永遠に輝く星」と言って良いでしょう。
開成卒の方には、ぜひこの機会に「開成卒の山口多聞」を知って頂き、誇りに思って欲しいです。
そして、読者の中に、開成中学志望の中学受験生の君。
ぜひ、山口に関する記事をご覧いただき、
僕には、非常に優れた
山口多聞がついている・・・
こう考えて頂くと良いでしょう。
次回は、山口の若き日々から考えてゆきます。
次回は上記リンクです。