前回は「呆然とする山口多聞〜飛龍の閉ざされた未来・「飛龍と運命を共に」の加来止男飛龍艦長の訓示・交錯する提督たちの思い・反撃目論む連合艦隊司令部・山本長官と南雲長官の思惑〜」の話でした。
山口多聞の悲痛な思い:この世から消える飛龍を前に
もはや総員退去することになった空母飛龍。
さらに、
飛龍を・・・・・
飛龍を、
自沈処分せよ・・・
まだ「浮かんでいて、修理可能かもしれない」飛龍。
「内地(日本本土)への曳航は不可能」という判断によって、自沈処分が決定しました。
総員退去前に加来艦長と山口司令官が将兵たちに訓示を行いました。
諸子(将兵)は本当に
よくやってくれた!
責任は
艦長の私が取る!
私は飛龍と
運命を共にする!
「飛龍を運命を共にする」加来艦長に続き、山口司令官が将兵に訓示をします。
我が二航戦
(にこうせん、第二航空戦隊)は・・・
ここで、少し言葉が詰まる山口司令官。
我が二航戦は、
様々な海戦で、大きな戦果を挙げてきた・・・
諸子(将兵)の
猛烈なる奮闘に対し・・・
司令官は心から深く、
深く感謝する。
皆、
本当に・・・・・
ここで目を瞑って、天を仰ぐ山口司令官。
本当に
よくやってくれた。
ううう・・・
すすり泣く将兵たち。
1937年に進水(完成)し、5年ほどの間、太平洋からインド洋に至る広大な海で戦い続けた飛龍。
真珠湾奇襲攻撃では大戦果を上げ、数々の戦いで武勲を上げてきました。
しかし、飛龍の運命もこれまでです。
・・・・・
山口司令の訓示に続いて、
西の皇居を
遥拝!
国の象徴であり、そしてまた大元帥でもある昭和天皇。
将兵にとっては「神のような、最高の存在」です。
万歳三唱!
バンザーイ!
バンザーイ!
バンザーイ!
そして、飛龍から少将旗・軍艦旗が降ろされました。
この瞬間「非戦闘艦船」と表明することになり、「軍艦としての飛龍」は、この世から消えました。
そして、まもなく飛龍の存在自体もまた、この世から消えようとしているのです。
米海軍への反撃を断念した山本長官
アリューシャン方面へ派遣していた空母部隊などに対し、「ミッドウェーへ急行」を命じた山本長官。
周辺の艦船を集め、
米軍に反撃する!
まだ、負けは
確定していない!
アリューシャンへ向かわせている
空母たちにも合流を命じる!
ははっ!
すぐに命じます!
ミッドウェー方面へ
急げ!
かなり時間がかかる
模様です!
うむ・・・
なんとか米軍に打撃を与えるのだ!
大和以下の戦艦部隊を
向かわせましょう!
そして、ミッドウェー島を
砲撃しましょう!
敵航空隊が多数いる中、戦艦や巡洋艦で
戦えるのか?
ミッドウェー島を戦艦で
砲撃して叩くのは、こちらの被害が大きいだろう。
ならば、夜戦で
敵艦隊に砲撃を加えましょう!
「絶対勝つ」と確信していた連合艦隊司令部の幕僚たち。
「想定のかけら」すらしていなかった「思わぬ大敗北」に恐慌状態となりました。
このまま、やられっぱなし、
という訳には絶対いきません!
・・・・・
戦艦・巡洋艦などで、敵空母・ミッドウェー島を攻撃することは出来ます。
しかし、敵空母・ミッドウェー島の航空隊から大きな反撃を受ける可能性があります。
戦争である以上、
危険は承知です。
もう
やるしかないか!
大和の巨砲で
敵を叩き潰すべきです!
長官!
ご決断を!
熟慮した山本長官。
ミッドウェー作戦は・・・
・・・・・
そして、苦渋の決断を下します。
ミッドウェー作戦の
中止を命ずる。
作戦中止を命じました。
若者たちとの約束と確固たる決意:形見の帽子
米海軍に必死の反撃をして、空母二隻(実際は一隻)に大打撃を与えた山口司令官率いる第二航空戦隊。
後方の戦艦大和ほかの艦船が、米軍へのさらなる反撃を試みる中、
私は
艦に残る!
沈みゆく飛龍と共に海に沈んでゆくことを表明する加来艦長。
加来艦長が「飛龍と運命を共にする」のは、
加来艦長は
残るだろう・・・
飛龍の幕僚・将兵皆が「分かっていたこと」でした。
ところが、
私も
飛龍に残る!!
山口司令官もまた「飛龍と運命を共にする」ことを言い出します。
「責任を取る」のは多くの場合は艦長であり、司令官は対象となりません。
!!!
「よもや・・・」と思っていた加来艦長でしたが、
私だけで
十分ですよ。
山口司令。
あなたは将来、我が連合艦隊司令長官となるお方。
ここは
生き延びてください!
必死で山口司令官を止めます。
しかし、山口司令官は、
いや・・・
もう決めたんだ。
山口司令官は、頑なに首を振ります。
大勢の若い連中とも
約束した・・・
必ず・・・・・
「必ず後からゆく」
と・・・・・
山口司令官の脳裏には、大勢の将兵の顔が思い浮かびます。
昨日まで一緒に過ごしていたのに、すでにこの世にいないであろう大勢の若者たち。
山口より20歳ほど若い、大勢の若者たちが散ってゆきました。
私は
約束したのだ・・・
私との約束を信じて、
若者たちは・・・
必死に死地へ向かい、
身を挺して米軍を攻撃したのだ・・・
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 第一航空艦隊司令長官 |
40 | 山口 多聞 | 第二航空戦隊司令官 |
41 | 草鹿 龍之介 | 第一航空艦隊参謀長 |
42 | 加来 止男 | 飛龍艦長 |
52 | 源田 実 | 第一航空参謀 |
52 | 淵田 美津雄 | 第一航空艦隊飛行長 |
59 | 友永 丈一 | 第二航空戦隊飛行長 |
62 | 小林 道雄 | 飛龍飛行中隊長 |
他の幕僚たちも翻意を促します。
山口司令。
一緒に退艦してください!
山口司令。
我々と一緒に!
しかし、絶対に決意を変えない山口司令官。
私は
艦に残る!
そして、先に行った
若者たちと・・・・・
先に散った若者たちに
会いに行くのだ・・・
山口司令官の意を決した瞳を、じっと見つめる加来艦長。
・・・・・
ついに加来艦長は諦めます。
やむを・・・
やむを
得ませんな・・・
若い幕僚たちが数人がかりで「力ずくで連れ帰る」ことも考えられます。
しかしながら、それは、
山口司令!
おさらばです!
山口の性格をよく理解していた幕僚たちは、
自分に
死に所を得させてくれ・・・
山口司令官の意思を尊重しました。
山口司令・・・
何か形見を下さい・・・
ああ・・・
そうか・・・
ならば、
これを・・・
そして、自らかぶっていた軍帽を幕僚に渡す山口司令官。
みんな、
達者でな・・・
大日本帝国
海軍を・・・
大日本帝国海軍を
頼む!
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