入水して自殺しようとした西郷隆盛〜死への願望から一転・薩摩への逃避行・完全に外れた西郷の思惑・斉彬後の薩摩の大変化・奄美大島へ島流し〜｜西郷隆盛20・人物像・性格

前回は「「まさかの事態」が勃発した西郷〜強権振るう大老井伊直弼・勅許と米国との条約・急転直下の島津斉彬急死・「生きる軸」を見失った西郷・吹き荒れる「安政の大獄」の大暴風〜」の話でした。

死への願望から一転：薩摩への逃避行

主人であり師であった島津斉彬の「暗殺を想起させる急死」に未来を見失った西郷。

さらに、

安政の大獄の中、かなり「活動的な志士」であった西郷にも幕府の追っ手が忍び寄ります。

「生きる軸」を見失った西郷。

並の精神であれば、ここで「ジ・エンド」ですが、

島津家と親しい近衛家とつながる熱血漢・月照に諭されて、

ここで、西郷自身の身も危険ですが、徳川幕府から危険分子と見做されていた月照。

幕府に捕まったら、月照はおそらく死罪となります。

ここで、月照と親しくしていた名家近衛家から、

月照の身の安全を依頼された西郷。

こうして、京から薩摩まで月照と共に逃げる西郷。

自動車も飛行機もない当時、ほぼ歩いて薩摩までなんとか月照を連れて行った西郷。

自分の立場は、薩摩藩に入れば大丈夫そうです。

そして、当然ながら「島津家と親しい近衛家」が頼んできた人物である月照の安全も問題ないはずです。

完全に外れた西郷の思惑：斉彬後の薩摩の大変化

ところが、島津斉彬が急死し、前の藩主である島津斉興が実権を握った薩摩。

薩摩藩の政治状況は、再び非常に保守的になっていました。

こうして、

「薩摩藩が月照を救ってくれる」という西郷の思惑は、大きく外れました。

当時の薩摩藩は、独立性が非常に強く、徳川幕府の密偵すらも潜入が、ほぼ不可能でした。

各藩に密偵を放ち、様々な情報を得て諸大名を管理していた徳川幕府。

薩摩藩に潜入した密偵は、幕府の元には戻ってこなかったのです。

言葉も全く違うため、潜入する密偵は、

密偵たちは薩摩藩士に見破られ、牢獄に入れられるか「消された」のでした。

薩摩が「江戸から遠い南の端」という地理的状況と、このような独特の「秘匿性」から

このように西郷が考えたのは、当然だったのです。

ところが、

愕然とする西郷ですが、自分一人の力では、藩論を変えることは出来ません。

悔やむ西郷ですが、どうにもなりません。

入水して自殺しようとした西郷隆盛：奄美大島へ島流し

自分の身がどうなるかを薄々気づいている月照でした。

秘かに、死ぬことを決意した西郷。

そして、

薩摩藩から西郷に命令が降りました。

「日向送り」とは、薩摩藩から日向（宮崎県）に移送し、「その藩境で処刑せよ」ということです。

月照の従者として薩摩に一緒にきていた、筑前福岡藩士の平野国臣。

絶望した西郷は、錦江湾で月照らと船に乗り、

西郷は月照と共に入水します。

月照と同意の上か、西郷が強引に小柄な月照を引き連れて入水したのか、は諸説あります。

平野たちが懸命に西郷を救助しました。

大男であった西郷を、水の中から救助することは非常に大変なことです。

この当時のことも諸説ありますが、

「死を決していた」西郷は、助けられて一月ほどの療養生活の後、なんとか復活します。

薩摩藩士ではない月照が死んだものの、薩摩藩士である西郷の扱いに困った薩摩藩。

「困って途方に暮れてしまった」元の藩主 島津斉興。

それでも、代々家臣を大事にしていた薩摩島津家としては、

こうして、奄美大島へ島流しとなった西郷。

薩摩藩士にとって「江戸へゆく」ことは、現代の「日本から欧州へゆく」ようなイメージだった当時。

日本の中心地・江戸で縦横無尽に活躍してきた西郷。

今度は、「日本の端」の奄美大島でしばらく過ごす事になりました。

新たな人生が始まろうとしていました。

次回は上記リンクです。